http://www.asyura2.com/11/genpatu18/msg/857.html
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東電が2日に公表した「福島原子力事故調査報告書(中間報告書)」関連で、事故調査検証委員会が中間報告に付した意見も公表されている。
「東京電力梶u福島原子力事故調査報告書(中間報告書)」に対する原子力安全・品質保証会議事故調査検証委員会の意見」(9頁ほどの文書)
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111202e.pdf
【検証委員会の構成(カツコ内は委員の専門領域)】
委員長: 矢川 元基 東京大学名誉教才受(原子力)
委 員: 犬伏 由利子 消費科学連合会副会長(消費科学)
河野 武司 慶鷹義塾大学法学部教授(政治)
首藤 伸夫 東北大学名誉教授(津波)
高倉 吉久 東北放射線科学センター理事(原子力)
中込 秀樹 弁護士(法律)
向殿 政男 明治大学理工学部教授(安全)
検証委員会が付した意見の締めくくりは、“ものづくりは日本が世界一流との自負が「安全神話」を生んだ”とか、「誰が指揮,作業していようがほぼ同じ状況になっていたに違いないとの強い感触を得た」といった文言になっている。
あげく、「特に,福島第一原子力発電所長をはじめとする東電ならびに関連会社等の,まさに文字通りの今日に至るまでの献身的な働きや判断がなかったとしたら,事態はより悪い方向に向かったかも知れないのである。そのことには本当に頭が下がる思いである」と、東電などへの賞賛と感謝の言葉までが盛り込まれている。
まず、今回の意見を紡ぐような人々が“検証委員会”という名称を使うのはおふざけがすぎ、せいぜい、“感想文作成委員会”という名称にすべきだったと指摘させていただく。
「安全神話」に関しては、原発推進インサイダーからも事故後口にされているように、システムや設備が原理的に抱える事故リスクと原発の過酷事故が引き起こす広範囲で長期的な放射能汚染の深刻さをわかっていながら、原発を維持・増設するために、政府と一体になって安全と言い募るしかなく、安全と言っている手前深刻な事故に備える論議さえ公にできなくなるなかで生まれたものである。
「安全神話」は、日本の科学技術水準とはまったく無関係で、原発推進派自身が創作した神話なのである。
逆に、高い科学技術水準を持つ人であれば、どんなに慎重かつ堅牢につくられたシステムでも瓦解するリスクがあることを認識している。
さらに言えば、今回事故を起こした福島第一原発の1号機はまるまる米国GE社の技術によって建設されたものであり、その事実を知っていれば、“ものづくりは日本が世界一流との自負が「安全神話」を生んだ”というような、自分たちの愚かさやデタラメさを棚に上げ、日本全体が培ってきた高い技術レベルを言い訳に使うような卑劣な文言は浮かんでこなかったはずだ。
「誰が指揮,作業していようがほぼ同じ状況になっていたに違いないとの強い感触を得た」という感想も、百万歩譲ってそれを認めるとしても、“想定内の震度で6系統もあった外部電源が全滅し、事故後10日間も電源復旧ができないほどのデタラメな電気設備”なら、誰がやってもああならざるをえない面もあるというものでしかない。
(他にも、違う人たちがやっていれば違った状況になったと考えられることはあるが、2号機に関しては、圧力的に可能であった格納容器に対する注水を早くやっていれば、あの時点<3.15>での圧力抑制室の損壊はなかった)
検証委員と名乗る人々が、「誰が指揮,作業していようがほぼ同じ状況になっていた」の根拠として、「全電源喪失下の停電,暗闇,ほぼ全滅状態の計測系統,がれきの山,通信手段の喪失,余震や死に対する恐怖といった混沌のなか」であったことを持ち出していることには愕然とさせられる。
まず、周辺住民のみならず日本国民全体そして世界の人々を放射能の恐怖に陥れた事故を引き起こした原発の運営主体である東電などが、“余震や死に対する恐怖といった混沌のなか”で事故対応をするのは当然の責務である。
わざわざこのテーマで感謝や賞賛を言うとしたら、中央政府部門はともかく、直接的な責務を負わない全国の消防署員や警察そして自衛隊が過酷な事故現場で奮闘したことであり、「東電ならびに関連会社等」ではないことにさえ思い至らない人々が東電“お抱え”の検証委員なのである。
最低限の“常識”を持ち合わせていれば、現場と接触もあることから秘める敬意の念はあるとしても、今回の意見で、「福島第一原子力発電所長をはじめとする東電ならびに関連会社等の,まさに文字通りの今日に至るまでの献身的な働きや判断がなかったとしたら,事態はより悪い方向に向かったかも知れないのである。そのことには本当に頭が下がる」と 、“文章”にする愚は犯さなかっただろう。
さらに、中小企業が内々にしか害を及ぼさない事故を起こしたのならそうかもねと言えるが、東電さらに日本政府が総力を挙げて取り組んでいた事故で、“暗闇”や“通信手段の喪失”が短時間はともかく翌朝まで続いていたこと自体が大問題という認識さえできないのだ。
わざわざ大変な事態であることを強調して書いているのに、バッテリー型の携行照明装置や通信装置などがいつ入手できたのか、なぜ、そんな時間になってしまったのかを検証した跡はまったくない。
(計測機器も、地震や津波さらに事故の進展で故障しない限り、バッテリーがあれば作動する)
NHKテレビなどが福島第一原発で事故が発生したことを当日午後9時半頃まで秘匿したことから推測できるのは、“できることなら、隠したまま解決したい。発表するなら解決してから”という歪んだ政府&東電の考え方である。
だから、緊急に手配した数多くの電源車も、パトカーに先導されることなく渋滞に巻き込まれたため午後9時半過ぎにようやく最初の電源車が到着したのである。
周辺住民の避難にしても、最初に避難が指示されたときにはすでにメルトダウンが始まっていたというひどさだ。
意見の結びの冒頭で、「今回,これだけの大事故を振り返って,東電は真撃に反省するべきであることは言うまでもない。特に,事故とその影響拡大の要因が初動対応に時間を要したことにある,との各方面からの指摘も多いが,それも事実の一端を捉えていると考える」と書いている。
問題があったのか、問題はなかったかさえわからない、“事実の一端”という意味不明な表現を使っているが、初期対応について真摯に反省した跡は、東電の中間報告本編でもこの意見書でも見られない。
肝心な福島第一原発の事故原因についても、「今回の事故を発生させた直接の原因は未曽有の津波である。しかし,事故を発生させ,また事故を拡大に至らしめたのは,今回起きた事故に鑑みれば,アクシデントマネジメントを含むハード面,ソフト面での事前の安全対策が十分でなかったことによる,と我々は結論する」と、東電の主張をそのまま受け入れ、体裁のいい口先の反省を書いているだけである。
原発からの撤退が必要だが、廃炉に至る過程でも、事故原因を津波にしている限り、リスク軽減策でさえまともに行われないままになる。
(津波原因説に対する批判は次に示す関連投稿をご参照ください)
気力を失わずに過ごせたら、東電の「事故調査中間報告」や「意見」の他の部分に対する批判をしたいと考えているが、東電と一体になって恥ずべき意見を世間に公表した検証委員の知性と心性を疑わざるをえない。
※ 関連投稿
「2号機の“爆発”は「計器故障」とうそぶく東電:2号機のS/C損壊まで否定する腐敗臭漂う東電中間報告書」
http://www.asyura2.com/11/genpatu18/msg/836.html
「1号機は津波ではなく地震による損傷でメルトダウン:再循環パイプの破損で津波前から毎時25トンの冷却水漏れ」
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/584.html
「[外部電源喪失のウソ]津波でディーゼル発電機が水没しても「全交流電源喪失」を回避できたはずの福島第一」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/577.html
「[外部電源喪失のウソ]外部電源が維持されていたら今の福島第一は?:03. さんのコメントに応えて」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/586.html
「わずか9カ月前に地震も津波もないまま「常用電源喪失」に陥った2号機:今回と強く結び付く事故を法令違反でうやむやに処理」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/592.html
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