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福島原発事故は津波が来る前に、「想定内」の地震によって始まっていた
http://news.livedoor.com/article/detail/6044569/
2011年11月20日01時06分 渡辺パコ
(by paco)3.11の大地震の後、福島第一原発の運転中だった1号機、2号機、3号機が事故を起こし、炉心が損傷する大災害となった。
この福島原発事故を分析する。大きく分けて、以下の3点ある。
(1)福島原発事故は津波が来る前に、「想定内」の地震によって始まっていた。
(2)福島原発事故は「想定すべき規模」の津波に備えずに、悪化した。
(3)日本では人為的ミスによる事故が多数起きている。
今回は(1)。
■原発事故は津波以前に起きていた
事故直後から、原発事故の原因は「想定外の大きな津波」だとされてきた。確かに、津波が押し寄せたことで、電源が喪失し、事故の決定打になったのは間違いないようだ。しかし、津波が来る以前に、原発はすでに地震で壊れていた可能性が高い。
まず、地震による破損の可能性を見る。
地震は3月11日14時46分に、宮城県沖で起きている。原発に津波が押し寄せたのは地震から50分後だ。
■1号機は直後に破損していた。
この50分の間に、実は原発では原子炉の破損とみられるデータが出ている。
「格納容器の温度データを記録したグラフでは、3月11日の地震直後に1号機の格納容器で温度と圧力が瞬間的に急上昇していたことが見て取れる。1号機では温度上昇の直後に、格納容器を冷却するシステム2系統が起動し、格納容器内に大量の水が注がれた。
データを分析した元原発設計技師の田中三彦氏は「圧力容器か容器につながる配管の一部が破損し、格納容器に高温の蒸気が漏れたようだ」と語った。」
用語を確認しておこう。核燃料は、鋼鉄製の「圧力容器」の中に収められ、この圧力容器は「ジャンボジェットが突っ込んでも壊れない」ほど強固に設計されている。圧力容器は、「格納容器」に入れられている。このふたつの鋼鉄製の容器が原子炉内の放射性物質を外に出さないように守っている。
「圧力容器」が内側で、「格納容器」が外側と覚えておこう。
原発は、内部に核燃料を持ち、核分裂によってエネルギーを取り出している。核分裂が進むと分裂の結果、セシウム137などさまざまな放射性の生成物が生まれる。核燃料も、燃焼の結果出てくる生成物も人体に危険な核物質である。
圧力容器と、その外側の格納容器は、危険な核物質を外に出さないように守っており、この内部にある限り、事故が起きても、最悪の事態は避けられた、ということになる。
さて、上記の記事を見ると、地震直後に圧力容器が破損し、格納容器に蒸気が漏れていたことになる。つまり内側の容器は地震で破損していたのだ。破損していたのは、圧力容器そのものか、圧力容器につながる配管だという。
圧力容器は、原子炉で作った上記を外に取り出すための蒸気配管を始め、いくつのも配管が取り付けられている。容器そのものは強固でも、取り付け配管の継ぎ手(接続部)は脆弱で、地震で全体が揺すられた結果、配管のどこかが破損して、圧力容器から外側の格納容器に蒸気が漏れだしたわけだ。
原発は津波以前に、地震で壊れていたのだ。
とはいえ、この1号機では、圧力容器の密閉は壊れたものの、この時点では格納容器は無事だったと考えられ、この時点ですでに「大事故」であるとはいえ、二つ目の容器の「守り」は機能していたようだ。
「ようだ」と書いたが、実際にどのような状態かは、現在わかっていない。原子炉内部は漏れ出した放射性物質で激しく汚染されているため、近づくことはできない。スリーマイル島の事故の例を見ても、福島で原子炉の状況を目視で確認できるのは10年近い年月がかかるだろう。
※放射性物質は次第に核分裂して、放射線が少ない物質に変っていく。10年程度立つと、防護服を着れば近づける程度に線量が下がる。現在は防護服を着ても防げないほど線量が高い。
■2号機は格納容器も破損していた
地震の翌日、3月12日、2号機で爆発音があり、これは格納容器下部にある「サプレッションチェンバ」からのものと推定された。
格納容器内に漏れだした水素が、格納容器内の酸素と反応して爆発したとみられている。しかし本来格納容器には酸素はない(爆発しないよう、窒素でみたされている)。格納容器の一部であるサプレッションチャンバで爆発が起きたということは、格納容器(外側の容器)のどこかに破損が起きて、大気中の酸素が入ったことを意味している。つまり、2号機の格納容器は、破損している、ということだ。
格納容器は非常に頑丈なので、津波で水が押し寄せたぐらいで破損することはない。となると、地震で破損していた可能性が高い、ということになる。格納用容器は頑丈だと言うが、しかし、そこにつながる継ぎ手や配管までが同じ強度とは限らない。強度の弱いところに力が集中する結果、格納容器の密閉が崩れたのだ。
つまり2号機も津波ではなく、地震の段階で壊れていたと考えられる。
http://hiroakikoide.wordpress.com/2011/09/18/timeline-sep15/
(↑1分30秒過ぎ)
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65764059.html
文字興し
■揺れは想定基準値内だった
では福島原発を襲った地震の揺れはどの程度だったのか。「同原発の2台の地震計で記録された今回の地震の最大加速度は、448ガルと431ガル。東電は同原発で予想される揺れの最大値を600ガルと想定していた。しかし、東電関係者の証言によると、この揺れによって、送電線を支える原発西側の鉄塔が倒れた」その結果、外部からの電力供給が止まり、原発は冷却機能を失った。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110319-OYT1T00154.htm
ここで重要な点は、地震の揺れそのものは、そもそも設計の想定内であり、壊れるはずではなかったことだ。
ではなぜ壊れたのか。
原子炉建屋内の調査が十分できていない現在では、正確なことはわからないが(調査ができるようになるまでに10年程度かかる)、老朽化は原因の一つと考えられる。福島原発1号機〜3号機はそれぞれ、1971年、1974年、1976年に運転開始している。1号機はすでに40年を経過し、当初の耐用年数30年を過ぎて運転していた。耐用年数の延長は、国の政策と許可のもとに行われたが、実質的には「動いているからだいじょうぶ」という結果追認だった。この運転の経年変化によって、配管の継ぎ手などが弱っていて、想定内の揺れでも破損した可能性が高い。
津波が押し寄せなければ、事故の規模はずっと小さなもので済んだはずだが、地震には耐えた、という説明は間違っている。格納容器の損傷は、重大な問題だ。
また、福島原発事故では、原子炉そのものの損傷に加えて、原発に電力を送る電線を支える鉄柱が地震で倒れている。原発そのものが地震に持ちこたえても、鉄柱が倒れて外部電源を失えば、今回のような大事故につながる。耐震性能を原子炉本体のみに限定して設計しているとすると、容易に「想定外」の事態に陥る可能性がある。原発は巨大なシステムであり、こういったシステムは、外部電源の鉄柱のような、直接安全に関わらないようなところの脆弱性に引っ張られるようにして、事故が起きる。巨大システムは危険を指摘することは容易だが、安全を確実にするのは容易ではないのだ。
想定内であっても、事故が起きた福島原発1号機2号機だが、想定を越える揺れが原発を襲ったことがある。
2007年7月16日に新潟県でおきた中越沖地震では、近接する東京電力柏崎刈羽原発で「3号機タービン建屋1階で2058ガル(想定834gal)、地下3階で581ガル(想定239gal)、3号機原子炉建屋基礎で384ガル(想定193gal)を観測したとの発表もなされた。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%8F%E5%B4%8E%E5%88%88%E7%BE%BD%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80
この地震による揺れで原発は発電設備の火災を含む危機的な事故になり、現在(2011/11/14)も2、3、4号機が地震後、稼働できていない。
原発は、地震の揺れに堪える、という説明は、単なる神話(希望的な説明)であることが明らかになっている。現在、各原発では福島事故から学び、津波対策(堤防をつくったり、非常用発電設備を高台に移動させたり)を行っている。しかし、耐震性そのものが不十分であることを含めて考えれば、今の対策はまったく不十分であることがわかる。
津波に目を奪われることなく、事実をよく見れば、日本の原発の耐震性そのものが疑わしいといえるのだ。
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