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九州電力が、作業手順のミスで停止していた玄海原発(佐賀県玄海町)4号機を再稼働させた。
再稼働にあたって、九電は地元玄海町に再発防止策のチラシを配っただけだ。
周辺住民の意見を聞かず、十分な説明もしないまま、再稼働を強行した九電の姿勢には誠意がまったく感じられない。
しかも4号機は12月に定期検査入りする予定で、再稼働しても数週間後には停止することになる。
電力需給が逼迫(ひっぱく)する時期でもなく、再稼働を急ぐ理由は見当たらない。むしろ時間をかけて、地元の理解を得るために手を尽くすのが誠実な態度だろう。
これでは、定期検査で停止中の原発の再稼働に向けた実績づくりと疑われても仕方ない。
まして、九電は玄海原発2、3号機の再稼働をめぐる「やらせメール」問題で批判を浴びているさなかである。佐賀県の古川康知事の関与疑惑や、経営陣の進退問題も決着していない。
4号機で起きたトラブルは作業手順書の不備に起因するものだという。九電は原因を徹底的に究明した上で、再発防止策を地元のみならず、国民にも丁寧に説明すべきだ。
電力各社は火力発電の比重を高め、原発の停止による電力不足を補っている。
燃料費の負担増が重荷となっているのは確かだが、これを節約するのが再稼働の理由だとしたら、地元の信頼より短期の業績を優先させたことになる。
政府の対応も不可解だ。経済産業省原子力安全・保安院は4号機の再稼働について、定期検査を経た原発とは異なり、ストレステストの1次評価の対象外とした。
テストの目的が原発の安全確保であるなら、トラブルを起こした原子炉を除外するのはおかしい。再稼働に一貫して好意的な古川知事ですら、この判断に疑問を呈している。
やらせメール問題で九電を厳しく非難した枝野幸男経産相は、今回の再稼働について、九電が地元と協議した上で自主的に判断する問題との考えを示した。
一方、古川知事は、政府が九電の対策を妥当と判断したことを再稼働容認の理由に挙げた。
政府、自治体のいずれも責任ある判断を回避するのであれば、原発を稼働させたがる電力会社への歯止めはなくなる。
地元の理解を軽視する電力会社の姿勢、「再稼働ありき」の意図が透けて見える政府の対応。この状態が続く限り、他の原発の再稼働に対する国民の理解は得られまい。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/329594.html
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