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食品「生涯100ミリシーベルト」の問題点 (東京新聞)
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11月2日 東京新聞「こちら特報部」:日々坦々
原爆調査参考は疑問
福島第一原発事故から八カ月近く経て、ようやく食品に含まれる放射性物質の量が高い暫定規制値が見直される。先月二十七日、内閣府の食品安全委員会は生涯の内部被ばくを「一〇〇ミリシーベルトに抑える」とし、それを基に厚生労働省は新しい規制値を五分の一程度に引き下げる方針だ。これに対し「十分の一ともっと厳しくすべきだ」と主張するのが、九州大学大学院医学研究院の長山淳哉准教授だ。放射線規制値の問題点などを聞いた。 (鈴木泰彦、小国智宏)
放射線の健康への影響の可能性は「生涯で一〇〇ミリシーベルト以上」とした食品安全委の評価書。その根拠に挙げたのが、原爆被爆者の疫学調査だ。
広島と長崎で被爆者を追跡調査した財団法人放射線影響研究所(広島市)の調査は広く知られ活用もされているが、「調査そのものに怪しい点があり、人への影響やリスクの評価への疑いが、他の研究者によっても指摘されている」と長山氏は言う。
放影研の調査は、国際放射線防護委員会(ICRP)の被ばく基準ともなっている。何が問題なのか−。「放影研が被爆者の追跡調査を始めたのは一九五〇年から。調査対象になったのは、原爆が落とされてから少なくとも五年以上、生き延びていた人たちだ」と続ける。
「つまり、調査開始までに死亡した人は含まれておらず、実際の被ばくによるリスクは放影研の研究結果よりも高い可能性がある。第一、広島・長崎での評価対象はほとんどが外部被ばくであり、内部被ばくに直面している私たちが重視すべきデータではない」
5年生存者、外部被ばくで研究
食品安全委が「一〇〇ミリシーベルトはおおよその値であって、(それを下回ると障害が起こらない)閾(いき)値ではない」とわざわざ断りつつも、「一〇〇ミリシーベルト未満の健康影響について言及することは現在得られている知見からは困難」と説明している点にも疑問を挟む。
「遺伝子はDNA二重らせん構造からなり、たとえ一ミリシーベルトでも、DNAの切断が起こるという研究データがある。何らかの基準を示さないと国民が納得しないから、被爆者の調査結果を援用したのではないか。原発を推進したいがための政府の方便だろう」
チェルノブイリ原発事故によってベラルーシ共和国モギリョフ州では、年五ミリシーベルト以下の被ばくだったにもかかわらず、遺伝子の突然変異が確認されているという。
長山氏は、現在の規制値を十分の一にするべきだと訴える。「事故の被ばくのリスクをゼロにできない以上、どこかに妥協点を見いださないといけない。受容せよとしているICRPより十倍厳しい基準が、これまでの科学的知見にも矛盾しない最低レベルの値。一般人なら年〇・一ミリシーベルトとなるが、これくらいなら許容範囲と言える」 食品安全委はこれまで、専門家によるワーキンググループによる会合を計九回重ねてきた。七月末に、案を提示してパブリックコメントも募集。その結果が、今回厚労省に答申した内容だ。
ちなみに、パブリックコメントには三千通を超える意見が寄せられたが、「評価結果自体に影響を及ぼすような御意見・情報は確認できなかった」のだそうだ。
規制値を10分の1に
当初、七月末の案では、一〇〇ミリシーベルトとは内部被ばくと外部被ばくの合算だった。それが答申では、外部被ばくの分が外され、緩くなった。
被ばくはそれだけではない。私たちはふだんの生活を送るだけで自然からの放射線を浴びている。長山氏の計算では、宇宙線や大地からのカリウム、ラドンによって日本人が一年間に被ばくする線量は一・五六ミリシーベルト。
五十年続けば七八ミリシーベルトになり、これは十万人当たり百六十人から千六百人が致死かそれに相当するがんを発症する確率に相当するという。
ただ、これは生きている限り仕方ない。しかし、そこに本来なくてもよかった人為的な被ばくが加われば、その分だけ発がんリスクは高まる。
「たばこや肝炎ウイルスなど、明らかなリスク要因がないのにがんが発症した場合、そこには活性酸素や自然放射線が関与している。たとえ年間被ばく線量が一ミリシーベルトと少なくても、長年継続する場合には無視できない影響が及ぶ」
1ミリシーベルトでもDNA損傷
さらに、放射線は免疫システムにも悪影響を及ぼす。その結果、相互作用によって恒常性を維持している内分泌システムや神経システムにも変化が生じることになる。
「生活習慣病の発症にも大いにかかわってくる。被ばくによる健康影響はがんにとどまらずに広範囲に及ぶことになる。それだけのリスクを国民が許容するかどうか」
「許容できなければ、地震の多い国で原発を動かすべきではない。そもそもリスクを考えれば、原子力の平和利用なんてありえないのだから。原発にはこれだけのリスクがあると明示し、国民の判断を仰ぐべきだ」
長山氏が長年力を注いできたのは、カネミ油症事件。一九六八年、カネミ倉庫製造の米ぬか油にダイオキシン類が混入し、福岡や長崎を中心に摂取した約一万四千人が健康被害を訴えた大規模な食品公害だ。
「胎児や妊婦の健康考えよ」
原因などの調査・研究にあたりながら、被害者を支援してきた長山氏は、今回の原発事故をめぐる政府などの対応を見ていて「ある種の共通点を感じる」と言う。
それはなかなか真実を解明させようとしない点だ。カネミ油症は、七五年の時点ですでに発見、証明されていたにもかかわらず、原因がポリ塩化ビフェニール(PCB)ではなく、ダイオキシンだと認めたのは二〇〇一年になってからだった。
「福島原発事故でも、大事な情報が出てくるのは後になってから。企業と政治家とのつながりも然(しか)りで、過去に起きた不祥事といわれる出来事と同じ構図がまた、繰り返されているように思えてならない」
ながやま・じゅんや 1947年、高知県生まれ。九州大学大学院医学研究科博士課程修了。大学院時代、カネミ油症の原因物質がダイオキシンの一種、ダイベンゾフランであることを発見。2010年には胎児性油症の原因物質としても証明した。専門は環境分子疫学と環境遺伝毒性学。近著に「放射線規制値のウソ」(緑風出版)。
<食品安全委員会の評価書> 先月27日に小宮山洋子厚労相に答申した「放射性物質の食品健康影響評価」は、追加的な被ばく(内部被ばく)について「健康への影響が見いだされるのは生涯の累積でおおよそ100ミリシーベルト以上」。小児の期間は、感受性が成人よりも高い可能性があるとした。小宮山氏は、ICRPの見解を踏まえた緊急時の暫定規制値の見直しを決定。放射性セシウムの許容線量は、現在の年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトになる。年内に食品ごとの規制値を作り、来年4月から実施する。
<デスクメモ>「規制値以下で出荷再開」。野菜や新米の安全宣言記事が載る。でも、以下っていくら? セシウムが暫定五〇〇ベクレルに対して二〇〇それとも三〇? 表示はなく、結局○×産を買うのをやめる。いら立ちの矛先は生産者ではなく国や東電だ。新規制値が少し緩ければ同じ。放射線の我慢ごっこはご免だ。 (呂)
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