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放射性物質 港湾業界が高線量車“規制” 国動かず自己防衛 経産省「風評被害呼ぶ」
東京新聞 2011.10.14 こちら特報部
港湾荷役業界が、規制値超えの放射線量が検出された中古車などの取り扱いを拒否している。労働者を被ばくから守るのが目的だ。「国は何もしてくれないので自己防衛に踏み切った」と関係者は主張する。福島第一原発の事故から約7カ月。放射能汚染は拡散し、労働中の被ばくの危険は原発作業員にとどまらなくなった。働く現場で見えない敵との闘いが始まった。 (佐藤圭、中山洋子)
独自基準で放射線検査
13日午後、東京都内の東京港。中古自動車が埠頭の駐車場に入ってくると、民間の検査会社が放射線量を次々と測定していく。担当者は「放射線がたまりやすいワイパーとフロントグリル(先端部分を覆っている部品)、タイヤが測定ポイント。早ければ5分、問題があれば30分程度かけて入念に調べる」と説明する。
港湾業界が独自に設定した規制値の毎時0・3マイクロシーベルト未満であれば、フロントガラスに「検査済み」のシールなどが貼られる。ここでようやく港湾作業員が登場。安全が保証された車に乗り込み、船積みに取り掛かる。
0・3マイクロシーベルト以上の車は即、中古車業者に突き返される。東京港では、業界が自主検査を開始した8月18日から9月30日までの間、89台が規制値を上回った。港湾作業員は、決して汚染車に触れることはなく、健康は守られるというわけだ。
港湾業界が放射能汚染問題と向き合うきっかけは、6月29日、川崎港の輸出用中古車から毎時60マイクロシーベルトを超す高線量が船会社の自主検査で検知されたことだった。全国港湾労働組合連合会の渡辺三郎書記長は「一つの港の問題にとどまらず、全国に散らばっていく話だ。港湾労働者の安全確保が急務となった」と振り返る。
港湾業界では過去、作業中にアスベスト(石綿)を吸引した労働者の健康被害が社会問題化したことがある。「第二のアスベスト被災」への危機感が高まった。
国土交通省は福島事故後、港湾での輸出コンテナの放射線測定ガイドラインを定めたが、中古車の基準はなかった。組合側に尻をたたかれた日本港運協会は7月15日、港湾労働者の安全対策を国交省や経済産業省に求めた。しかし、行政は動こうとしなかった。
同協会の堀江和幸労務部長は「使用者としても見過ごすことはできない状況になった。荷主の責任で安全を確認してから港に搬入してほしいと申し入れたが、経産省の担当者は『日本の中古車はダメという風評被害が海外に広がる』と後ろ向きだった」とあきれる。
「もはや自己防衛しかない」(堀江氏)。労使は8月17日、荷主の費用負担による中古車と中古建設機械の検査実施で合意した。当初、中古車業者からは「うちの会社をつぶす気か」「なぜ検査費用を払わなければならないのか」と不満が噴き出したが、徐々に変化しているという。堀江氏は「本来は、中古車のオークション会場で検査すべきものだ。中古車業界も輸出量が減っている。われわれに協力的な声も出始めている」と明かす。
今後は廃材来る可能性
渡辺氏は「今後廃材が港に持ち込まれる可能性がある。そうなれば労働者の健康が脅かされる。やはり国がしっかりとした指針を出すべきだ」と強調する。
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放射性物質 「被ばく労働」拡散 清掃、食肉、水道、輸送… 「一刻も早く指針示せ」
東京新聞 2011.10.14 こちら特報部
被ばくリスクは、さまざまな労働現場に広がっている。とりわけ、ごみの焼却灰の高濃度汚染が問題となっている清掃作業現場の不安は大きい。
検診結果は30年保存を
都内では6月に江戸川清掃工場で、国の埋め立て基準(1キロあたり8000ベクレル)を超える9740ベクレルの放射性セシウムが検出された。東京清掃労働組合では「もともと放射性物質を扱う職場ではないので、心配する声は多い。
工場だけではなく、ごみ収集現場の安全も気にかかる。今後どうなるかも分からないので、健康診断の結果は少なくとも30年間保存してもらう必要がある」と危機感を募らせる。
こうした声を受け、今月11日、工場を運営する東京23区清掃一部事務組合は、独自の放射線障害防止指針をまとめた。
担当者は「近隣では例を聞かないが、うちは20工場が稼働しているので、工場ごとに安全対策がバラバラでは困る」と説明する。
もともと被ばくを想定していない作業のため、指針では年間の被ばく限度を公衆被ばく限度と同じ1ミリシーベルト以下と明記。現場の空間線量を確認するほか、焼却灰の搬出方法などの細かいルールを取り決めた。
空間線量が毎時2・5マイクロシーベルトを超えるリスクの高い現場では作業時間を制限し、被ばく線量も測定する。
6月以降、実際には防護服の着用や線量測定なども始まっており、これまで2・5マイクロシーベルトを超える工場はないという。だが、8月には有明工場で最大1・0マイクロシーベルトを計測しており、無策のまま放置できる職場ではないのは確かだ。
汚染わらを食べた肉牛が流通していた問題でも、都庁職員労働組合が、食肉市場作業員の被ばく不安を指摘した。
東京都中央卸売市場食肉市場では、解体処理場の空間線量を測定したほか、今月初旬、作業にあたる職員ら約250人の健康診断も開始している。
どこも手探りの対策でしのぐしかないのが実情だ。それもこれも国の基準がないため。
被ばく労働のルールとして、労働安全衛生法に基づく電離放射線障害防止規則(電離則)がある。だが、これは原発労働者や医師など放射線管理区域で働く人々を想定した規則。
福島第一原発事故が、放射性物質を広範囲にまき散らした現状の労働現場に対応できてはいない。
前出の23区の清掃工場担当者も「電離則が即適用される施設とは考えてはいないが、現実に被ばくの心配がある。何を基準にしていいか分からずに独自の指針を決めてきた面もある。近隣自治体とは対応が違うので、出入りの業者の混乱を招くことも考えられる」と漏らす。
作業員から相談相次ぐ
一方で、国もようやく、原発事故後の新たな被ばく労働を管理する「第二電離則のようなもの」の検討を始めている。
小宮山洋子・厚生労働相は今月7日の会見で、来年1月1日までに制定すると表明。主に除染作業を念頭に、被ばく防止や汚染拡大防止などの措置を盛り込んだ規則になるという。
「事業者にとっても労働者にとっても初めての事態。現場任せには限界がある」と強調するのは、東京労働安全衛生センターの飯田勝泰事務局長。
同センターにも、福島第一原発の事故後、さまざまな労働現場から「被ばくは大丈夫か」という相談が相次いでいる。
前出の港湾労働者はもとより、汚泥処理の作業にあたる下水道や上水道処理の作業員からの相談も目立つという。
飯田氏は「汚染された地域からの輸送業務も今後、問題になってくる。国や自治体が一刻も早く安全対策の明確なガイドラインを示すべきだ」と話した。
デスクメモ
良心の研究者、小出裕章氏の話を思い出す。「福島第一の事故で、世界は変わったと覚悟しなければいけない」。放射能は多かれ少なかれ、私たちの周りに存在する。よりよい付き合い方の選択こそ大切である、と。被害を小さく見せることばかりに腐心する政府は、いまだにその覚悟ができていない。(充)
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