http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/358.html
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さすが、大手原発メーカーの元部長さんの的確な事故状況分析! スルどすぎるぜ!
現状分析は、こうしなさい!という見本ですね。
ツイッターによれば、糸井重里さんも大変参考になったとか・・・・・
糸井ちゃん、お前もか!?
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https://sites.google.com/site/reportfujibayashi/ より転載(図表は引用元をご参考にしてください)
まとめ〜福島原発事故の現状分析(個人レベルの推測) 2011/04/01
藤林徹(元東芝原子炉設計部長)
2011/03/31 記
引き続き、福島原発について周囲から、放射能について質問をいただいています。多くは、放出した放射能の報道、その数値、さらに飛び交う悲観的な情報に心が落ち着かないという相談です。つまり、実際の状況を正確に知りたいという想いです。
具体的に原発は今、どのような状態にあってどのように進展するのか。そこから放出される放射能は今後増えるのか。さらに、その影響はどうなのか。それぞれ正しく把握したいということです。今回は最後の私見としまして、<原子炉の事故>という切り口で回答させていただきます。
長文になりますので、先に前書きとしてお願いをしておきます。
不安は、内容が分からないということで増長します。報道の内容が理解できれば、自分の知識として独自に判断することができます。実際、テレビで水素爆発の映像をみて、私も皆様と同様に驚愕をおぼえました。原発が<放射能をばら撒く悪魔>のように思えるかもしれません。でも問題は、悪魔と考えてそこから逃げようとすると、ますます不安に駆られるということです。そうなると、正しく理解しようとする気持ちが萎えてしまい、不安だけが残り、少しも安心に近付けません。どうか、疑心暗鬼にならないで、理解しようと一歩進んでください。
「行政の説明やテレビなどのニュース情報は信用できない、何か隠しているのではないか」という方もおられます。そのような声には次のように回答します。「行政や専門家の方は、不安にさせてはいけないという多少の配慮はあると思いますが、真実を隠し、嘘を言うことは絶対にありません。」
なぜ説明の歯切れが悪いかというと、まだ実態がわからないからです。だれも経験したことがない災害で、これにすべて当てはめられる文献も、資料もないからです。計測機器は壊れて情報はないし、現場は放射能が高く目視で確認することもできません。私たちもそのような立場になれば、無責任な説明はできないでしょう。どうか、このような状況を理解した上で、行政や専門家の説明を自分で取捨選択できるようにしてください。
私自身も原子炉が今どのようになっているのか、情報が手元にありません。実際の状態は判りませんがこれまでの流れを振り返り、少しでも皆様が判断できるよう推論で説明します。
1.事故発生直後の状況
2.燃料の溶融は軽微で酸化は進んでいる
3.放射性物質の放出挙動
4.燃料と放射性物質の種類と振る舞い
5.まとめ
<前例を知って、それに照らして今回どうであったか>と推察するのも一つの方法です。最近、福島原発事故はレベル6に引き上げられ、レベル7のチェルノブイリと、レベル5のスリーマイル島(以下TMI)の中間とされました。今回はこの2つを参考にしながら説明します。
1.事故発生直後の状況
福島原発と類似の原子炉であるTMIの2号機を例に、その事故を参考にしながら解説します。
※チェルノブイリの事故は炉心自体が爆発し、黒鉛が燃えて空高く放射性物質を巻き上げ放出した事故なので、福島原発の事故と比較することは意味がありません。
TMIの2号機は、<加圧水型原子炉(以下PWR)>といって、福島原発の<沸騰水型原子炉(以下BWR)>よりも原子炉の圧力が高く設計され、そのため圧力容器は小さめで原子炉はコンパクトに設計されています。
TMIの2号機における原子炉容器、および炉心の最終状態は下の図の通りです。
原子炉の炉心は溶融し、そのウランの一部は圧力容器の底に溜まり、その上部にデブリと称する、燃料や構造材の酸化物が混在したものが重なっています。原子炉の中央部は熱出力が周囲や上下より高いため、熱が篭り高熱になって溶けたものと考えられます。その上部には固まっていないデブリが重なり、下部と周囲の一部の燃料は形状を保ちつつ、周囲の圧力容器に接する構造物も形状を留めています。
それではこのTMIの2号炉と福島原発とを比較してみます。
福島原発の1号機、2号機、3号機は、全出力で運転しているとき、電気出力は、それぞれ460MW、780MW、780MWです。地震発生後直ちに自動停止しましたが、その後の津波被害によって冷却ができなくなりました。
一方、事故を起こしたTMIの2号機は電気出力が960MWで、運転中に冷却できなくなり、8秒後に停止しました。すなわち、福島原発は停止後冷却不全に陥り、TMIは冷却不全になってから停止したので、原子炉の停止と冷却不全の順番が逆です。
どちらも冷却不全による炉心燃料の損傷が事故の源ですが、そこには違いがあります。
冷却しなければならない熱(炉心の発熱量)はすなわち、原子炉の運転中に燃料の中で生成して蓄積した核分裂生成物が発生する崩壊熱です。この崩壊熱は時間とともに減少しますが、全出力を100%としたとき、その量の時間変化は、ほぼ次のとおりです。
10秒後;5%、1分後;4%、10分後; 2.4%、30分後;2%、1時間後;1.7%、1日後;0.5%、1週間後;0.3%、1月後;0.2%
TMIでは、冷却不全になったときの発生熱は、1時間あたり約2800MW、10秒後の原子炉停止直後は144MWであり、冷却が回復したのはさらに2時間20分後なので、それまで1時間あたり140MW程度の熱が2時間20分続きました。
一方、福島原発では、3号機を例にとると、地震発生後30分で冷却不能になったと仮定すると、そのときの熱は1時間あたり47MWでした。炉心注水が開始されるまでの約30時間、1時間あたり約40MWの発熱が続きました。
2つの例でもう一つ違う条件は、体積1リットルあたりの発熱量(出力密度)の違いです。同じ発熱量でも密に発熱するか疎に発熱するかによって、熱の篭り方に違いがでてきます。PWRが約100kWに対してBWRは50kWと半分です。すなわち、TMIは福島第一の3号機に比べて、熱が篭りやすい状態で発熱したことになります。
さて、除熱について考えてみましょう。
水のない状態で燃料の発熱は圧力容器の壁を通し外部に放熱されます。放熱量は面積に比例するので、両者を比べると、TMIの圧力容器は内径4m×高さ12m程度なので、面積はほぼ140平方メートルですが、福島第一3号機のそれは、内径6m×高さ22m程度なので、面積は約400平方メートルでほぼ3倍、熱除去の効率が同じとすると3倍放熱しやすいことになります。
まとめると次のとおりです。
TMIが冷却不全になったときの発生熱は、1時間あたり約2800MWで停止直後の発熱量は144MWと高い。福島原発は停止後に冷却不全となったので、その直後の発熱量は、1時間あたり47MWと低い。
福島原発の出力密度はTMIのそれの半分なので、熱が篭りにくい。
福島原発の圧力容器の表面積はTMIのそれに比べて3倍広いので放熱しやすい。
以上から、福島原発の事故後の原子炉の中を推測すると、TMIに比べ冷却不全直後の発熱量は少ない。また放熱しやすいので、TMIの事故後の状態よりも損傷の程度は軽いと考えられる。
2. 燃料の溶融は軽微で酸化は進んでいる
前述のとおり、TMIは冷却不全が生じたときの発熱量、1時間あたり140MW程度の熱が2時間20分続きました。一方、福島原発は1時間あたり約40MWの熱が30時間続きました。結果、短時間ですが高熱になったTMIでは炉心のかなりの部分が溶融したものの、その後冷却できたので、状態が保持されました。
福島原発は、TMIほど高熱になっていないため溶融部分はあっても、わずかであると考えられます。しかしながら、その後、30時間という長い間、冷却不全の状態が続いたので、燃料と構造材の高温酸化が進行したと考えられます。
燃料棒の構造材、ジルカロイ合金の溶融温度は1850℃です。この被覆管は直径約1cm、長さ約400cm、厚さ0.7oの円筒形です。その中に融点約2750℃のウランペレットが入っています。燃料棒の運転中の出力を最大12Kw/ftとすると、炉停止後の余熱はその直後で2%程度、すなわち長さ30cmあたり240ワットと家庭用のヒーター並みです。
原子炉の炉心内に水があるとき、一部が水面上に露出しても、被覆管の熱伝導、蒸気や水滴による冷却で、被覆管が溶融する温度に達するとは考えられません。
燃料棒の周りから完全に水がなくなった、いわゆる空焚きの状態を想定しても、高温になると、輻射熱が放出されて、溶融温度までには至りません。また、その内側にあるペレットは、発熱量が定常運転時の数%であるため、被覆管温度よりもせいぜい数100℃程度高いだけなので、とても融点である約2750℃にはなりません。
しかしながら、被覆管のジルカロイ合金とペレットの二酸化ウランは、空気や水蒸気がある環境では腐食(酸化)します。すなわち、ジルカロイ合金は酸化ジルコニウムに、二酸化ウランは三酸化ウランなどになり、結晶構造が変わります。そのような反応は温度が高いほど進行しますが、それが進むと、被覆管は穴があいて内部の放射性物質を保持できなくなり、またペレット内の放射性物質は外に放出しやすくなります。
3. 放射性物質の放出挙動
放射性物質は原子炉の運転中にペレット内で生成して自ら変化しながら、固体状の放射性物質はペレット内に留まり、希ガスの多くがペレットと被覆管との隙間に蓄積、そしてよう素や臭素の揮発性の放射性物質は一部が隙間に放出して蓄積します。
これまで何度も書きましたが、原子炉が停止した後は、放射性物質はそれ以上生成しません。すでにある放射性物質が燃料棒からどうやって外部へ放出されるのか、それぞれのパターンを説明します。
a 被覆管の破損による放出 被覆管が破損した際、まずペレットと被覆管との隙間に蓄積していた希ガスが放出します。次に、蓄積していた揮発性のよう素や臭素が放出します。したがって、被覆管の腐食を抑えるために、温度が高くならないようにすることが重要です。
b 破損燃料からの放出 破損した燃料棒の温度や圧力が変化すると、破損燃料棒の隙間にある放射性物質が放出されます。したがって、周囲をできるだけ安定させることが重要です。
c ペレットの酸化による固体状の放射性物質の放出 ペレットが水と反応して酸化すると、結晶構造が変化します。そこへ蓄積していたストロンチウムやプルトニウムなど、固体状の放射性物質が放出されることがあります。したがって、ペレットと水との反応(腐食)を抑えるため温度を低く保つことが重要です。
4 燃料と放射性物質の種類と振る舞い
福島原発の事故により、空気中の放射能や野菜、牛乳、水などで放射性物質が検出されています。これらはキセノン、クリプトン、よう素、セシウムなどと呼ばれていますが、これらの害を知るにはそれぞれの振る舞いを理解しておかねばなりません。「3号機ではプルトニウムを混ぜたMOX燃料が使われているため、これが災害に影響を与えるのか?」といった質問もあります。
A ウラン燃料とMOX燃料
天然ウランには、ウラン235とウラン238が0.7%と98%の割合で含まれています。このうち、ウラン235を最大5%(平均3%程度)まで濃縮して福島の原子炉で使います。したがって、残る97%はウラン238ですが、これはウラン235が核分裂して生成する中性子を吸収してプルトニウムに変化します。すなわち、ウラン235が核反応を起こしながらプルトニウムが生成されるのです。
このプルトニウムを使用済燃料から取り出してウラン235の代わりに使った燃料がMOX燃料です。
したがって、MOX燃料の大半はウラン238のままで、混ぜるプルトニウムの量もウラン235の量よりやや多いですが、ほぼ同じと考えて差し支えありません。しかも、福島などの計画では、全部の燃料をMOXにするのではなく、せいぜい3割程度です。このようなことから、MOX燃料を使っても、燃料や炉心の物理的な現象はほとんど同じです。
ウランとプルトニウムは違う物質なので、その特性は違いますが、違いはほんのわずかでほとんど同じです。「3号機の燃料が過熱しやすく、溶融しやすくまた放射性ガスを放出しやすい」などの情報は僅かな差を、誇大に表現したものです。
また、事故時の挙動ですが、ウラン燃料だけの炉心でも、前述のとおりプルトニウムが生成しているので、始めからプルトニウム使うMOX燃料を用いた炉心と同じです。ウランから生成する放射性物質とプルトニウムから生成する放射性物質は同じで、その生成する割合もほぼ同じですから、事故時に放出される放射性物質の種類も同じで、割合にも有意な違いはありません。
B 放射性物質の種類と振る舞い
<放射性物質>とは天然にあるウランと核反応で生成する核分裂生成物やウラン、プルトニウムなどの総称です。
核分裂生成物の特性として、時間とともに他の物質に変化し、いずれ放射能を出さない物質になりますが、この物理的な特性とともに、化学的な特性を理解しておいてください。
放射性物質は、不活性のもの、揮発性のもの、それに常温で固体のもの3つに大きく分かれます。
キセノンやクリプトンは不活性放射性物質の代表的なもので、そのままの状態でガス体として存在します。したがって、何とも反応せず、人体に留まることはありません。空中にあるキセノンなどからの放射線による影響は、外部被ばくだけが問題になります。それでも、一般人には厳しい結果は生じません。
次に、よう素やセシウムが揮発性の放射性物質の代表的なもので、揮発性ですから、水に溶けやすい。したがって、これらは大気中に放出されたあと化合物の形態で雨粒に混ざり、降雨で地上に降ってきます。水に溶けやすいので、野菜は水で洗えばよう素もセシウムも取り除くことができます。
そして3つ目。固体の放射性物質の代表的なものがストロンチウムですが、それ以外にもネプチニウムやテクネチウムなどもあります。核分裂生成物ではないのですが、ウランやプルトニウムも固体の放射性物質です。これらは、化学的には酸素や他の物質と化合し、酸化物などの形態で存在するので、揮発性は低く、水に溶けにくく、放射能は出すが化学的には安定しています。
チェルノブイリの事故のように、固体の放射性物質を含む炉心(燃料)が爆発や火災で飛散する場合は遠くまで運ばれますが、福島原発の事故の場合は、事故現場に留まり遠くへ拡散することはまずありません。
C 放射能を押さえ込むこと
放射性物質はすでに生成されていますが、核反応はしていないので、これ以上増えることはありません。今ある放射性物質を放出しないようにすることが現在の緊急課題です。そのために、施設の破損がこれ以上進展しないようにすることが第一です。
また、揮発性のよう素などが安定するように温度を下げることも重要です。そのため原子炉や燃料プールに注水、また放水する努力がなされていますが、これを長期間続けられるように、そのための設備を復旧させることが重要です。
長くなって恐縮ですが、あと二つだけ付け加えます。
臨界になる可能性はありません。
その根拠は、もともと核反応を起こすウラン235が低濃縮であり、それが燃焼したものは、さらに反応を起こしにくくなります。TMIの2号機は、ウランの溶融物が圧力容器の底に溜まったとの報告ですが、臨界は問題になっていません。福島原発の炉心(燃料)の損傷は前述のとおり酸化が主体で、その生成物は酸化物です。酸化物は密度が低く、ウランやプルトニウムのような核分裂性物質は薄められます。念のため、中性子を吸収するホウ酸も注入されています。
臨界にならないので余談になりますが、万が一の<仮定>で臨界になったとしても、このような環境条件では、局部的に臨界が起こって水蒸気が発生し、結果、反応度が低くなってすぐに臨界以下の条件になります。そのような現象が、局部的に繰り返されるだけです。すなわち、臨界による爆発はありません。
もう一つは、汚染された水、牛乳、野菜、魚介類についてです。これらの放射性物質の「暫定基準値」は、国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告などを基に算出しています。
例えば、放射性ヨウ素は年間約33ミリシーベルト、他の放射性物質は年間5ミリシーベルトまでなら、摂取しても安全と判断し、その上で、日本人の平均的な食生活のデータを取り入れ、国が定めたものです。水など1日の摂取量が多いものほど、基準を厳しくする必要があり、野菜類や肉類などに比べ、飲料水の基準値が厳しく設定されています。
したがって、この暫定基準を外れたものは、行政がしっかり管理している限り、市場に出回らないのです。市場で販売されているものは暫定基準以下ですから、心配は要りません。
5 まとめ
・福島原発で事故を起こした原子炉は、地震後直ちに停止してその後冷却不全になったため、発熱量はTMIの2号炉よりも低く、また熱除去の条件はよいので、炉心(燃料)の損傷は溶融よりは酸化によるところが大きい。
・原子炉は停止しているので、これまで燃料棒内に蓄積した放射性物質量以上に増えることはない。
・燃料棒に蓄積した放射性物質は、被覆管とウランの酸化により放出され、その主なものは希ガスとヨウ素、セシウムなどの揮発性物質である。
・固体状の放射性物質は事故現場に留まり、遠くへ拡散することはまずない。
・臨界になることはないし、臨界を仮定したとしても爆発はしない。
・国の放射能汚染管理を信用すること。
現在、冷却設備などを復旧させるための努力が引き続き、東京電力、緒機関および関連会社により続けられています。不安に苛まれながら、使命感から寝るのも惜しんで努力しておられる関係者の無事と原子炉の安定を祈るばかりです。
また、世界各国からの専門家が集結し、いろいろな知恵を出し合って作業を進める体制が整いつつあります。このように多数の国が協力して事故対策の措置をとる仕組みは、<福島モデル>として、今後の模範になることと思います。
今後は、より多くの情報が私たちに伝わるでしょうし、行政もより適切な判断をされると思います。
略歴
1962年、横浜国大工学部卒、日本原子力事業鰍ノ入社、その後合併により鞄月ナに入社
1996年、鞄月ナを退社し日本原子力開発鰍経て、
1998年、現東芝原子力エンジニアリングサービスに入社し、2002年に退社
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