http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/298.html
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東京電力は、先日、3月15日に起きた2号機圧力抑制室(S/C)の損壊原因は「水素爆発」でない(可能性が高い)と発表した。
私は、以前から、2号機S/Cの損壊原因については「水なし状態での高圧蒸気の噴き込み」と主張してきた。
そしてそのような見方は私独自のものではなく、東電・政府も、2号機S/Cの損壊が「圧力破壊」が原因であることをとっくに承知しているはずとも書いた。
政府・東電は、福島第一2号機の圧力抑制室が損壊した原因がすぐにわかりながら、自分たちの“失態”(格納容器への注水忘れ)を隠すため、IAEAへの報告書を含め、ずるずるとウソとデタラメの「水素爆発説」を流布してきたのである。
今回の東電発表は、「水素爆発」でないことを以前から知っていたことや4号機問題を問わず語りで明らかにした極めて“重要なもの”と考えている。
福島第一の事故で最大量の放射能流出を大気中にもたらした重大な出来事である2号機S/C損壊原因が「水素爆発」ではないという“結論”(見方)を示したところでたいした意味はない。
要点は、福島第一原発事故において最大量の放射性物質を大気中にまき散らす事態に陥った2号機のS/C損壊がどういうことが原因で起きたのかということであり、それを防ぐことはできなかったのかという問題である。
東電自身が勝手に持ち出したデタラメな「水素爆発」説を、東電自身が否定してみせたところでなんの意味があるというのか。
政府・東電も水素爆発でないことはとっくに知っていたと書いたが、それがよくわかるのは、4号機建屋の損壊原因が今もって推測の域を超えていない(明確にしていない)のに、「第1原発敷地内に設置した太陽光による仮設の地震計が継続的に震動を計測していることが判明。分析の結果、爆発による震動は6時12分の1回だけで、発生源の場所などを解析し、4号機での爆発だった」(毎日新聞)という記事内容である。
ご存知のように、4号機建屋の損壊は、2ヶ月経った5月中旬まで「火災」説で説明されていた。
4号機で「水素爆発」説が浸透を始めたのは、5月15日の東電が「(参考)4号機水素爆発メカニズムの推定」(http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/images/handouts_110515_02-j.pdf)という記者発表を行ってからである。
東電の「水素爆発」推測発表の直前に行われた5月13日参議院予算委員会での立ちあがれ日本の藤井参議院議員の質疑に対する海江田経産相の答弁でも、「黒い煙が上がりましたので、それは油の重油かディーゼルかの油が燃えたのではないだろうか」と説明し、その答弁を受けた藤井議員は「多分プロパンガスだ、重油がたまっていた、水素爆発でないということだけは後ではっきりしてきた」と答弁の内容を確認している。
(※ 4号機の「水素爆発」問題は、ご紹介いただいた「週刊朝日」の記事をベースに別稿で触れたいと思っている)
4号機の問題をあれこれ言ったところで2号機とは関係ないと言いたい方もいるかもしれない。しかし、2号機のS/C損壊が「水素爆発」ではないとした根拠を考えれば、4号機建屋の損壊原因は大きく関わっていることがわかる。
少し上で引用した「爆発による震動は6時12分の1回だけで、発生源の場所などを解析し、4号機での爆発だった」という説明は、4号機建屋が“火災”で損壊したのなら意味をなさないものだ。
今回の発表で、政府・東電は、2号機の「水素爆発」説の否定だけでなく、5月中旬まで言い続けていた4号機の「火災」説もデタラメで、ずっと以前から4号機建屋で“爆発”が起きた(爆破した)ことを知っていたことまで“そっと”吐露したのである。
しかも、午前6時12分という確定的な時刻データを含めて。
3月15日の損壊後まもなく、2号機S/C損壊の原因は「水素爆発」ではないことをデータ的にも確認していたにも関わらず、政府・東電は、10月になるまで意図的にだらだらと「水素爆発」説を匂わせ続けてきた犯罪的組織なのである。
発表された時期や記事内容から、時間をかけた調査で2号機の圧力抑制室が損壊した原因が「水素爆発」ではないとようやくわかったような印象を人々に与えるかもしれないが、「水素爆発」を否定する根拠として使われた地震データは、3月11日の本震後も余震がうち続くなか、電源喪失状態に陥った原発設備内で地震を観測するために取り急ぎ設置されたものであり、爆発的事象が起きたあとすぐにデータは確認されているはずである。
「その後、第1原発敷地内に設置した太陽光による仮設の地震計が継続的に震動を計測していることが判明」(毎日新聞)というような“悠長な”確認作業が行われたわけではないだろう。
仮設地震計は、当該事象に関してだけではなく、1号機・3号機の水素爆発、4号機で3回は起きたとみられる爆発の詳細なデータもきちんと記録しているはずである。
「発生源の場所などを解析」(毎日新聞)とあるが、「原発敷地内に設置した複数の仮設地震計」(日経新聞)とも発表されていることから、方向や距離を知る機能がなくても、異なる設置場所で観測されたデータを解析すれば爆発的事象が起きた場所(方向)は特定できる。
4号機問題(緊急避難的意図的爆破)という背景があるからこそ、ようやく今になって、2号機の圧力抑制室破壊が水素爆発ではないとだけ説明したのであろう。
「水素爆発」に代わる2号機S/Cの損壊原因を説明しなければならないのに、東電は、それは押し隠したままというふざけた態度を見せている。(後藤さんも、後述するビデオでそれを強く主張している)
東電は、相も変わらず、原発事故に対してなんら責任意識も反省もないまま、ただただ自己保身とデタラメな説明に精を出すとんでもない破廉恥組織なのである。
東電がせめて“世間の常識”レベルのまっとうな組織なら、損壊原因の説明はともかく、仮設地震計のデータはきちんと生で公開するはずだ。
(今日のニュースで報じられた配管内の水素の抜き取りをやるという1号機問題も、格納容器につながる配管というだけで具体的な名称や場所を説明していない)
福島第一原発事故から半年以上が経過し、事故初期の出来事に関する記憶が薄れ曖昧になる一方で、政府・東電・メディアによる「事故の“再構築”」が進んでいくなか、事故に関する認識は、事実から離れ、“物語”があたかも事実のようになり始めているように思える。
そのような事故の“物語”化は、政府・国会・大手メディア・学者が微妙な立場の違いはありながらも、一体になって行っているように見える。
反原発派の専門家や学者までもが、その“物語”化キャンペーンに取り込まれてきたようにも思える。
その一例として、コメント欄に書いた2号機問題に関する小出さんの見方を批判したものを再掲載させていただく。
赤かぶさん投稿の「福島原発第一 2号機の水素爆発について 後藤政志が語る、福島原発事故と安全性」(http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/211.html)で紹介されている後藤さんの2号機S/C損壊に関する説明は、小出さんよりもまじめに考え「圧力損壊」にも触れているものだが、小出さんへの批判内容と重なる部分もあるので、S/Cの水がなくなった事実を失念していることを指摘するだけにとどめここでの論評を省略する。
「小出裕章が語る、原発事故の原因が津波か、2号機は地震でサプレッションチェンバーが破壊 神保哲生対談9/15(1/3) 」のコメント欄9より:
(http://www.asyura2.com/11/genpatu16/msg/611.html#c9)
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小出さんはまじめで良心的な学者だとは評価しているが、福島第一原発の事故分析については、「3号機燃料プール燃料棒の核暴走問題」や「再臨界(クロル38とナトリウム24)問題」でみられた発言からほとんど信頼を寄せていない。
原発を泊めて廃炉にしていくという方向性は共有できるし、小出さんの人柄や言動に心動かされてその価値観に共鳴するする人が増えることは、それはそれでいいことだと思っているので、今になってはあれこれ言う気はない。
ということで小出さんを別に貶める意図はないが、今回の「2号機は地震でサプレッションチェンバーが破壊」は、その疑いの当否を検討すべきだと思っているが、発言内容からそれがとても熟慮されたかたちの発言だとは思えないことを指摘したい。
【引用】
小出「例えば、2号機という原子炉で、ある時に、えー、サプレッションチェンバーというところで爆発が起きているのですが。それはどうして起きたかというと、まあ水素が酸素と結びついて爆発したのですね。しかし本来、サプレッションチェンバーの中には酸素は全くありませんので。そこで爆発が起きたということは、すでにサプレッションチェンバーの構造体が壊れていて、外部にある酸素と、ばく、内部にある水素がばく、結びついて爆発したということ、しか説明がつかないのです。」
【コメント】
「それはどうして起きたかというと、まあ水素が酸素と結びついて爆発したのですね」とあっさり言っているが、S/Cが損壊したという事実はあっても、それが水素爆発に起因するかどうかは確定的なものではない。
そうであるのに、「しか説明がつかない」という論理で、地震時に2号機のS/Cの構造体が壊れていたという説明を持ち出している。
しかし、この説明が妥当性を持つためにはいくつかの疑問をクリアしなければならない。
● 原子炉圧力容器に溜まっている水素は、主蒸気逃がし弁操作でどれほどの量が格納容器に漏れ出すのか?
原子炉でジルコニウム被膜管が酸化して水素が大量に発生したことは確かだが、水素はもっとも軽い物質なので頂部に溜まる。
水素が原子炉からS/Cを含む格納容器に流れ出る経路は、主蒸気逃がし弁操作によるが、それは発電時に高圧高温の蒸気を送る配管と同じもの(位置)だから、頂部に溜まっている水素までが流れ出るわけではない。
だからこそ、浜岡の「水素爆発事故」を受けて、福島第一でも、原子炉頂部にベント管を新たに取り付けて、放射線による水分解で発生する水素を主蒸気管に逃がすことにしたのである。
● S/C構造体のどの部分が壊れていたのか?
2号機のS/Cが3月11日の地震で壊れたと主張するのなら、翌12日明け方(5時ころ)S/Cプールから水をくみ上げ続けておよそ55時間もRCICが作動し続けた事実を説明しなければならない。
仮に、S/Cの水が溜まっている下部に損壊があるのなら水が漏出するから、間欠的な汲み上げだとしても、RCICは55時間も作動を続けないはずだ。
逆に、上部に損壊があったとしたら、主蒸気逃がし弁操作で原子炉から漏出した水素は、その損壊個所から外に漏れ出し、原子炉建屋の地下1階から建屋内を上へと上がっていったはずだ。
● 1号機や3号機はなぜS/Cで水素爆発が起きなかったのか?
2号機で小出さんのロジックでS/Cで水素爆発が起きたのなら、1号機や3号機では、S/Cで水素爆発が起きず、建屋上階で水素爆発が起きた理由を経緯的に説明しなければならないだろう。
● 炉心溶融後2号機格納容器の圧力が増加した事実
2号機の原子炉で炉心溶融が起きたあと主蒸気逃がし弁操作で2号機の格納容器は圧力が上昇している。すでにS/Cの構造体が損壊しているのなら、圧力の上昇は頭打ちになるはずだ。
(出先なので詳細データは持っていないが、消防ポンプで、原子炉のみならず格納容器(含むS/C)に注水できないほど圧力が上がったと記憶している)
格納容器が大気圧レベルであったときに、損傷個所を通じて外から酸素(空気)が入ってくることは考えられるが、格納容器の圧力が上昇してからはその可能性がなくなる。
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※ 参照記事
赤かぶさん転載:
「2号機、実は水素爆発なかった…東電報告案 (読売新聞)」(http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/134.html)
「福島第1原発:「2号機で水素爆発なし」 東電が報告書 (毎日新聞)」(http://www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/157.html)
「2号機、水素爆発でない可能性も=IAEA報告と異なる内容−東電」(時事通信)」
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011100200220
日経新聞10月3日朝刊P.39:「福島第1原発の水素爆発 2号機なかった可能性 東電」
「東京電力は2日、福島第1原子力発電所2号機で、これまで原子炉格納容器の破損原因としていた水素爆発が起きていなかった可能性があることを明らかにした」《中略》「政府が6月に国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書では、1号機と3号機が水素爆発した後の3月15日午前6時ごろ、2号機格納容器下部の圧力抑制室付近で「水素爆発によるものと思われる衝撃音が確認された」と説明。ほぼ同時に圧力計がゼロを示したことから、水素爆発で圧力抑制室が損傷したと判断していた。ただ、東電の調べによると同日早朝、原発敷地内に設置した複数の仮設地震計で、地震と異なる揺れが観測されたのは1回だけだった。4号機で起きた水素爆発による衝撃とみられ、2号機で水素爆発が起きていなかった可能性があるという。」
※ 関連投稿
「事故を「レベル7」まで深刻化させた政府・東電の大罪:2号機圧力抑制室損壊は事故対策チームの極めて深刻な失態」
http://www.asyura2.com/11/genpatu9/msg/549.html
「[2号機圧力抑制室損壊問題]東電資料より:S/Cプールの水は隔離時冷却に使われ防護機能を喪失:圧力破壊の可能性が大」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/219.html
「田中三彦氏:米国で脆弱性から“噴き出す蒸気の勢いで圧力抑制室が損壊する”可能性が指摘されていた[週刊エコノミスト]」
http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/822.html
「2号機S/C損壊原因」についてコメントさせていただきます。
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/807.html
「Re: 「2号機圧力抑制室損壊原因」をめぐるtaked4700さんとのやりとり」
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/864.html
「[最後で最大の謎]意図的に“爆破”された4号機原子炉建屋:火災説や水素爆発説の流布で国民や世界を愚弄」
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/536.html
「4号機原子炉建屋“爆破”問題で火災説否定の補足」
http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/570.html
「“偶然”や“奇跡”じゃなく「意図的な爆破」:4号機の燃料プールと他の2つのプールの関係がよくわかる参考図を発見」
http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/176.html
「4号機「水素爆発」説を否定する決定的写真:4号機に水素を流れ込ませたとされる排気管は前日に起きた3号機の水素爆発で破断!」
http://www.asyura2.com/11/genpatu14/msg/820.html
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