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先週、亡くなったノーベル平和賞受賞者のマータイさんが世界に広めた日本語は「モッタイナイ」だが、原発事故を経験して、もうひとつ再認識したい言葉ができた。「足るを知る」だ▼中国の老子にあるから「もったいない」とは出自が違う。「Just enough」と英語でも言える。金沢工業大学で教える米国人デザイナーのアズビー・ブラウンさんは、これを原題に日本人の生活を紹介する本を書いた▼ただし彼の研究対象は江戸時代の日本。訳書は「江戸に学ぶエコ生活術」(阪急コミュニケーションズ)と改題、出版は大震災直前だった。狭いが効率的な家屋、ふん尿も利用する農業…自作イラスト満載で楽しい▼「森林破壊は止まり、農地は改良され…、国民全体の生活水準は高まり、人々の健康も増進した」「世界中どこを探しても、匹敵する例はない」と書かれると、いささか褒められすぎではという気もするが▼成長路線が破綻し日本が江戸時代に戻るという近未来小説が前世紀の末にあった。(「2050年は江戸時代」石川英輔、講談社文庫)。大量に作っては廃棄し、なお満たされない「東京時代」の話を老人から聞き、主人公は不思議がる▼人権や衛生状態など江戸時代は理想郷ではないし、戻れるはずもない。しかし、「足るを知る」人々に別の豊かさがあったことは、しっかり学ばなければ。2011・10・2
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/322341.html
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