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海辺だけではなくて、宇宙にも「渚(なぎさ)」があるそうだ。連休中の日曜日にNHKが放送した国際宇宙ステーション(ISS)からの生中継で知った▼地上数十キロから数百キロの高さ。青空が漆黒の闇へと溶け込む高度域を番組では「宇宙の渚」と呼んでいた。そこでは、オーロラや放電閃光(せんこう)など地球と宇宙がさまざまな物理現象を交わしている。ISS滞在中の宇宙飛行士古川聡さんが撮影した超高感度カメラの映像は見応えがあった▼宇宙から見て「渚の底」にある夜の日本列島は、地図の形そのままにまばゆい光で縁取られていた。やはり宇宙に長期滞在した宇宙飛行士若田光一さんは、地球の夜景から「いかに人間が大量の電気エネルギーを使っているかが分かる」と語っていた▼英国人作家ネビル・シュートのSF小説「渚にて」(1957年)は核戦争でわずかに生き残った原子力潜水艦の乗組員の苦悩を描く。冷戦は終わっても、地上にはなお大量の核兵器が残り、原発事故におびえる日々がある。海中ではなく、宇宙にいる間に故郷を喪失する宇宙飛行士の物語も絵空事とは言い切れないだろう▼月曜日に作家大江健三郎さんらの呼びかけで開かれた脱原発集会は、約6万人(主催者発表)の参加者が東京・明治公園を埋めた▼上空ヘリが撮した人の波は、「渚の底」の暮らしを変えていく大きなうねりのように見える。2011・9・21
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/319840.html
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