02. 2011年9月17日 12:27:31: FzPlEDLlDA
東電も東電、東電に丸投げした政府(=行政機構=官僚組織)も政府ですな。 http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2011/09/post-b25d.html 黒塗りの下には 福島原発事故については東京電力も菅直人前首相も精一杯のことをしたではないかとも思うので、この意見は控えておくべきかとも悩んだが、事故調査に当たっている衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会が東京電力に過酷事故時の対処マニュアルの提出を求めたところ、50行中48行を黒塗りした文書を提出したとの報道を聞き、さすがに呆れたので、こういう見方もあるということにすぎないが、簡単に記しておきたい。 報道の確認から。NHK「衆院 原発事故時の手順書開示を」(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110913/t10015561891000.html)より 衆議院の科学技術・イノベーション推進特別委員会は、福島第一原発の事故の原因を調べるため、東京電力に対し、9日までに事故時のマニュアル「事故時運転操作手順書」と深刻な事故で使う手順書を提出するよう求めました。これに対し、東京電力は、「事故時運転操作手順書」は内容のほとんどを黒く塗りつぶして提出し、また深刻な事故で使う手順書だとして12日提示したのは表紙と目次の3枚だけで、目次の大部分を塗りつぶしていたうえ、資料はその場で回収しました。東京電力は「知的財産が含まれていて、また核物質をテロなどから守らなければならず、公表できない」と説明しています。これに対し特別委員会の川内博史委員長は、12日、経済産業大臣に対し東京電力に原本のままの提出を法律に基づいて命じるよう求めました。この問題について経済産業省、原子力安全・保安院は「今後、どう対応するか検討したい」としています。 朝日新聞記事「50行中48行黒塗り 東電、国会に原発事故手順書提出」(http://www.asahi.com/national/update/0912/TKY201109120347.html)では次の内容も報道されていた。 東電が開示した資料は、「1号機運転操作手順書(シビアアクシデント)」の表紙と目次で、A4判計3枚。12日、保安院を通じて、非公開の同委員会理事会で委員に配られた。 川内委員長によると、手順書は2003年7月1日に作成され、今年2月1日に改定されたと記されていた。目次の序文など50行のうち48行が黒塗りにされ、その場で回収された。読めた単語は「消火系」「不活性ガス」だけ。委員からは、「資料開示に応じないのははなはだ遺憾」などと批判が出たという。 これではまったく事故調査にならなず、なんらかの対応が必要なのは論を俟たないが、一企業としての東電側の思いもわからないではない。 そもそも、過酷事故に対処する手順書が東電側にのみ存在し、政府側の規制機関に存在していないというのも、今となってはの議論ではあるが、不可解な話である。それとも、この点、私が理解していないでいて、政府側の規制機関には過酷事故に対処する手順書が存在しているのだろうか? 福島原発事故を引き起こした原子炉は米国ゼネラル・エレクトリック(GE)社製「マークT型」ということからもわかるように、GE側には非常用復水器の操作を含め十分な資料があり、また、米国でも同型の原子炉が利用されていることから、米原子力規制委員会(NRC)も規制のために十分な資料を持っている。例えば、1989年には「マーク1型」についてNRCは格納容器に圧力緩和用の緊急通気弁を取り付けるGE社側の提案を承認し、これは今回の福島第一原発にも影響していた。 実際のところ今回の事故でも、東電および日本国側がなすすべもなく「ミッション・二階から目薬」(参照)を決死のパフォーマンスとして実施した後は、事実上の事故対応のヘッドクオーターはNRCに委ねられたと見てよい。この経緯についてはすでにブログで記しても来た。 事実上のNRC指揮移管に至る最大の契機は、事故対応のための手順書である、3月26日付けNRC文書のリークだったと言える。この文書については、「放射性物質を含む瓦礫の撤去が始まる: 極東ブログ」(参照)でも記したが、この事態で特別に編まれたものであるが、アドホックに書かれたのではなく、NRCの標準手順に沿って書かれていただけのものだった。つまり、NRC側には過酷事故に対処する標準の手順書が存在しており、NRC側としては、なぜ東電および日本が、NRCの過酷事故に対処する手順書に従わないのか不審を抱いていた。だから脅しために意図的にリークした。 米国であれば、過酷事故が発生すれば、NRCの過酷事故に対処する手順書に従うことになるし、NRCが事実上の指揮に当たる。当然ながら、原子炉を運営する企業は、いったん国家の側に移管されることになり、その後、国家機関としてのNRCが関与するということになる。 NRCに相当する機関が日本にはなかったというだけの問題とも言えるかもしれないが、日本国も、結果としてNRCの指揮下に入ったのだが、最初の時点で、過酷事故対処を東電指揮下から切り離すべきであった。この点について、日本でもそうであったという議論もある。そして、その上で東電が政府側に従わなかった、または、政府側が混乱して指揮ができていなかったという議論もある。 だが、現実問題として、過酷事故対処は東電に丸投げされており、そのきっかけ、および指針を出したのは菅直人元首相であった。 菅直人前首相が3月15日未明に東電本店に乗り込んだ際の訓示の記録全文が、9月9日なって東京新聞朝刊で公開された(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011090902000035.html)。)。「命を懸けてください」といった戦中戦前の日本軍を思わせる威勢のいい言葉の実態には、東電への丸投げと米国など他国の介入の忌避が明確に描かれていた。
*前首相訓示全文 今回のことの重大性は皆さんが一番分っていると思う。政府と東電がリアルタイムで対策を打つ必要がある。私が本部長、海江田大臣と清水社長が副本部長ということになった。 これは2号機だけの話ではない。2号機を放棄すれば、1号機、3号機、4号機から6号機。さらに福島第二のサイト、これらはどうなってしまうのか。これらを放棄した場合、何ヶ月後かにはすべての原発、核廃棄物が崩壊して、放射能を発することになる。チェルノブイリの二〜三倍のものが十基、二十基と合わさる。日本の国が成立しなくなる。 何としても、命懸けでこの状況を押さえ込まない限りは、撤退して黙って見過ごすことはできない。そんなことをすれば、外国が「自分たちがやる」と言い出しかねない。皆さんが当事者です。命を懸けてください。逃げても逃げ切れない。情報伝達が遅いし、不正確だ。しかも間違っている。皆さん、萎縮しないでくれ。必要な情報を上げてくれ。 目の前のこととともに、五時間先、十時間先、一日先、一週間先を読み行動することが大事だ。金がいくらかかっても構わない。東電がやるしかない。日本がつぶれるかもしれない時に、撤退はあり得ない。会長、社長も覚悟を決めてくれ。六十歳以上が現地に行けばよい。自分はその覚悟でやる。撤退はあり得ない。撤退したら東電は必ずつぶれる。 実際のところ、結果としては、横田基地で待機していた実動部隊によって、米国が「自分たちがやる」という事態にはならなかったが、放射性物質を大量にまき散らした後の対応は事実上、NRCの指揮下に入り、また対応の基礎資料はフランス、アレバ社にも依存することになった。 東電という企業を国家の命令で命を懸けさせることは、日本の戦前戦中風の美談にも思えるが、現実的には、十分な対処手順を持っていたNRCとリソースを用意していた米軍の関与を遅らせ、事態を深刻化させてしまうことになった。 東電側に過酷事故時の対処マニュアルがあったとしても、製造元のGEやNRCに準拠したものにすぎず、しかも実際にはそれを元に対応ができたわけでもなかった。
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