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原発建設費13兆円
ゼネコン大もうけの裏側
「しんぶん赤旗・日曜版」 2011年9月18日号 1面
全国の原子力発電所の建設費用は約13兆円。原子炉建屋は大手ゼネコン5社が独占受注。粗利益率は3割にも。政界にもカネが流れ、ツケは電気料金で国民に―。原発マネーをめぐる癒着構造の一端が新資料と証言でわかりました。 取材班
「ゼネコンヘの発注実績は、できるだけ隠したかったのに…」
編集部が示したリストを前に、東京電力元幹部が語りました。
原発の建設費用は最終的に電気料金などとして国民が負担します。いわば“公共工事”と同じ。なのに電力会社は「民間企業だから」と発注金額や受注企業などをこれまで公表しませんでした。
福島第1原発事故後、日本共産党の吉井英勝衆院議員の要求で、経済産業省資源エネルギー庁がようやく提出してきたリスト。ここには、全国の原発57基を受注した原子炉メーカー、原子炉建屋や土木工事を受注したゼネコン、建設費実績が記されていました。(図参照。4面に全体の表)
57基の総建設費実績は約13兆円。消費者物価指数による現在価値に換算すると14兆5千億円にものぼります。
原子炉メーカーは、一部外国企業を除き大手3社(三菱重工、東芝、日立製作所)が独占。原子炉建屋も、大手ゼネコン5社(鹿島建設、大林組、大成建設、竹中工務店、清水建設)が独占受注(共同企業体では幹事会社)。多くは競争入札なしの特命受注です。
受注した大手ゼネコン幹部が語ります。
「粗利益率は20〜30%と公共工事以上に高い。1号機をとればその後も受注でき、廃炉までやると50年以上、仕事が切れない。本当においしい仕事だ」
前出の東電元幹部も「ゼネコンにはもうけてもらっている」とあっさり認め、その理由を語ります。
「原発立地の段階からお世話になる。用地買収から、政治家対策や説明会の“動員”など“裏”の仕事も頼む。電気料金に転嫁できるから、自分たちの懐は痛まないよ」
(4面につづく)
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東電元幹部「ゼネコンに“裏”仕事」
見返りは受注独占
(1面の続き)
もうかる仕組み
「原発工事は文字通りトップセールスだ」
こう言い切るのは大手ゼネコン幹部。原発工事受注活動の一端を明かします。
「電力会社で新社長が就任した際には、お祝いを持っていく。数百万円だ」
原発工事の多くは、電力会社が独自の判断で業者を指名する特命発注です。
その理由を東京電力元技術系幹部は説明します。
「原発は固有の技術が求められるというが、それは表向きの理由だ。実は、ゼネコンには原発立地の段階からさまざまな“裏”の仕事をやってもらっている」
その一つが、電力会社などの依頼で、原発用地をひそかに買収することです。これまでに明らかになっているだけでも…。
―東北電力が計画していた巻原発の建設予定地を鹿島の下請け会社などが買収。
―関西電力などが計画していた珠洲原発の建設予定地を清水建設の関係会社などが買収。
さらに、原発の新設や増設の際に開かれる公開ヒアリングや説明会の際にもゼネコンは“裏”で暗躍していました。前出の東電元幹部は明かします。
「国などの主催だが、実際は東電が準備する。警備上の理由で、会場の入り口を狭くしたりするが、これらの費用は国などからは出ない。地元対策も含めゼネコンに汗をかいてもらっている」
原発立地での“裏”での活躍の見返りが工事受注なのです。その際、「“裏”の仕事でかかった経費は当然、建設費に上乗せしていた」と東電元幹部は語ります。ゼネコンがもうかる仕組みはいろいろありますが、その一つはこうです。
―原発工事では、正式着工の数カ月前に特定ゼネコンに特命発注をして、施工計画などを手伝わせてい
た。そのためゼネコンは自分がもうかるように施工計画をつくれた。
―それでも利益が足りない場合は工事着工後、ゼネコン側が設計変更を出してくる。これも基本的には認めていた。
政治家も“口利き”
原発工事のうまみに食いついたのは、ゼネコンだけではありません。東電元幹部は証言します。
「政治家から特定業者を下請けで使ってほしいとよくいってきた。国会議員から県議、町村長まで。立地や増設でお世話になるので、できるだけ使うようにしていた」
政治家側も電力会社に“口利き”していた事実を認めます。自民党元閣僚経験者の秘書は証言します。
「公共工事に口利きをすると問題になるが、原発は民間工事なので口利きをしても問題になりにくい。電力会社は政治家の話はよく聞いてくれた」
さらに、「原発のある地元有力者がかかわる建設会社には“お約束”として毎年、工事を発注していた」(東電元幹部)とも―。
“お約束”として工事を出していた1社が、福島第1原発の地元、福島県双葉町の田中建設。同社社長だった故・田中清太郎氏は1963年から85年まで6期、双葉町長を務めていました。
田中氏の著書『追想・町長在職二十二年の軌跡』には、東電元会長だった平岩外四経団連会長(当時)が発刊によせた一文を贈っています。
「田中氏は、その任期中、福島第一・第二原子力発電所の設置に関わる誘致に、地元の責任者としてご尽力されてまいりました。(中略)感謝の念に堪えないところであります」
工事経歴書によると田中建設は2009年までの5年間で、福島第1原発や東電関連企業から計約5億円の工事を受注しています。
さらに福島県議だった元浪江町長が株主の建設会社にも東電は、09年までの3年間で約2億1千万円のエ事を出しています。
電力会社とゼネコン、政治家はまさに「原発利益共同体」。そこにメスを入れることが求められています。
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