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http://jp.wsj.com/US/Economy/node_303334
反原発で高まる老朽化原発への依存
2011年 9月 8日 21:54 JST
福島第1原子力発電所の事故は思いがけない影響をもたらした。老朽化した原発への依存が世界中でかつてないほど高まっているのだ。もし公益事業者の思い通りに事が進めば、既存の原発が当初の予定より数十年長く稼働することになる。
米国などの国々では新規原子炉の建設が複数計画されていたが、福島の事故をきっかけに原子力への反発が強まり、「原子力ルネッサンス」の展望がかすんでしまった。とはいえ、既存の原発を放棄する意向を表明した国はほとんどない。それらは大抵、電力需要を満たすために不可欠と考えられているからだ。
米国では国内104基の原子炉の3分の2が、当初40年の運転認可期間を既に20年延長している。このうち9基は福島の事故後に延長を認められた。規制当局は米国の原子炉の認可期間を80年まで延ばせないかと調査を行っている。一方、フランスの原子力規制当局は一部の原発の寿命を60年まで延長する計画を進めている。
こうした状況は、老朽化した原発は新しいものより危険性が高く、認可延長手続きは十分に厳格でないと主張する一部の原発批判者を動揺させる。例えば米国では、老朽化した原発の腐食した配管から放射性液体が地中に漏れるといった問題も生じている。公衆が過度の放射線量にさらされた例はないと規制当局は言っているが。
米原子力規制委員会(NRC)は、公益事業者による原子炉運転期間の延長申請をかつて一度も却下したことがなく、これまでに71件の申請を承認している。現在、さらに13件が承認待ちの状態にある。
米メリーランド州の反原発団体「ビヨンド・ニュークリア」の広報担当者、ポール・ガンター氏は、「日本の事故を受け、せめて認可延長のペースは落ちると思っていたが、何の影響もなかった」と語る。
NRCは、適切に維持管理すれば原発を60年以上運転できない理由はなく、認可更新では詳細な老朽化管理計画の策定が必須条件になっていると主張する。老朽化管理計画とは、原子炉格納容器やコンクリート施工部など、定期的に交換されることのない設備の点検・維持に焦点を当てたものである。
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Agence France-Presse/Getty Images
インディアン・ポイント原発
NRCのスタッフは8月30日、ニューヨーク市から約42キロ離れたエンタジー社のインディアン・ポイント原発の老朽化管理計画を「受諾可能」と判断、認可延長に向け最終段階のハードルが一つ取り除かれた。ニューヨーク州は2013年と2015年に認可が切れる原子炉の廃炉を求めている。
老朽化した原子炉は世界中で増加している。40年以上稼働している原子炉は英国に4基、スイスに3基、ロシア、日本、カナダ、インド、パキスタン、スペインに各1基存在する。中国、インド、アルゼンチン、ブラジルなど、原発を保有する33カ国の3分の1以上は、かつて一度も原子炉を停止したことがない。
原発支持派と反原発派は、原発の寿命を延ばすことで考えが一致している。パリの原発コンサルタントで原発批判者のために仕事をすることもあるミシル・シュナイダー氏は、「フランス、米国、その他のどこでも、こうした原子炉の寿命を延ばすという発想を持っている」と話す。
すべての保有国が原発の稼働を続けていくわけではない。ドイツ政府は6月、2022年までに17基の全原子炉を停止することを決定し、既に8基を閉鎖している。7月には日本の当時の菅首相が原発を段階的に廃止していきたいとの考えを示したが、エネルギー資源に乏しい日本で果たしてそれが可能かどうかを疑う声もある。スイスは2019年から2034年に認可期限を迎えた時点で5基の原子炉を廃止するとしている。
福島の事故が起きるまで、オバマ米大統領は新規原子炉の建設を支持し、米議会も公益事業者のコスト負担を軽減するための借入保証やその他補助金制度を承認していた。しかし3月の東日本大震災後、日本の原発で重要な安全システムが機能不全に陥り、放射能漏れや環境汚染をもたらしたことで、原発に対する人々の信頼は大きく揺らいだ。
米国の複数の原発事業者が新規建設に及び腰になっている。NRGエナジーは4月、テキサス州での原子炉2基の建設計画を取り下げると発表した。同社は、福島第1原発を所有する東京電力を含む日本企業各社と協力する計画だった。
NRGは、福島の事故を受けて米国の原発の要件に関する不確実性が増し、それにより規制認可の取得が遅れて損失が生じる可能性があると説明した。さらに、NRGのデイビッド・クレーン最高経営責任者(CEO)は、このプロジェクトでは電力を購入する熱心な顧客が不足していた上、事故の影響で新たな顧客を確保することがますます難しくなったと述べた。
エクセロンやプログレス・エナジーを含むその他の事業者も消極的になっている。これには他の要因も影響している。安価な天然ガスが豊富に存在するため、ガス火力発電所を建設するほうが魅力的になっているのだ。
NRCが設置した「ジャパン・タスクフォース」は7月、米国内104基の原子炉の安全性を高めるための変更を提案したが、認可更新方法に関する変更は一切提案していない。
原子炉の認可方法は基本的に2種類ある。米国やフィンランドなどの国々では、期限の設定された認可を与え、後に延長を認める方法を用いている。他方、フランス、オランダ、日本、英国などの国々では、無期限の認可を与えた上で、運転継続のための定期安全審査(一般に10年ごと)を義務づけている。
米国は、新規の原発に40年間の運転認可を与えている。公益事業者は、原子炉を20年使用した時点で認可更新手続きを開始することができる。つまり、なんらかの問題が発生するかなり前の段階で更新が認められる可能性がある。
1970年以前に建設された原子炉は、既に世界中でそのほとんどが廃止されている。一般に公益事業者が、小さすぎる、非効率、不具合が多いなどと判断したためだ。だが、1970年代前半に建設された原子炉の多くはいまだに使用されている。
原発は経年劣化すると、トリチウムなどの放射性液体を運ぶ地下の配管が腐食し、漏出を引き起こすことがある。NRCによると、これまでに米国の65の原子炉サイトで放射性物質の地中への漏出・流出が起きている。ただNRCは、これらの事象で法的限度を超える放射線量に人が被ばくした例はないとしている。
電気ケーブルの老朽化も問題だ。昨年12月、NRCは公益事業者らに対し、ここ数年で電気ケーブルの故障例が269件特定されており、経年劣化するほど問題が深刻化すると注意を促した。電気ケーブル故障は重要な安全システムの機能停止につながり得るため、懸念すべき問題である。
事業者側は、安全懸念が発覚したら直ちに行動するようNRCから要請されているとしている。原子炉所有者の業界団体、原子力エネルギー協会のトニー・ピエトランジェロ最高原子力責任者は、「NRCは認可更新が申請されるのを待っているのではない。問題が生じたら彼らはすぐに対処する」と語る。
NRCは認可延長を求める原発に対し、構造物や設備の老朽化への対処方法を詳述した老朽化管理計画の策定を義務づけている。しかし、企業が老朽化による不具合を要求された通りに特定・修理しているかどうかを疑いたくなるような事象がたびたび起きている。
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Bloomberg News
ターキーポイント原発
ネクステラ・エナジーが運営するフロリダ州ホームステッド近郊のターキーポイント原発の原子炉2基(1972年と1973年に稼働)は、ともに2002年に20年の認可延長を取得した。
10月、原子炉エリアから放射性物質が漏出するのを防止するスチール製の防壁に小さな穴が複数あいているのを作業員が発見した。実際には放射性物質の漏出はなかった。この原発の防壁に穴が見つかったのは5年間で2度目だった。ネクステラは「維持管理の不徹底」が原因だったとNRCに説明し、修理を施した。
NRCの報道担当者ロジャー・ハナー氏は、公益事業者は義務づけられている点検を行っていなかったと指摘し、「うっかりしていたのだろう」と語った。ネクステラの広報担当者マイケル・ワルドロン氏は、現在は燃料補給で停止するたびにこの種の不具合を点検するようにしていると述べた。
一部の専門家は、1979年のペンシルベニア州スリーマイル島原発の事故以来、国内最悪となる事故は、オハイオ州オークハーバーのデービス・ベッセ原発で起こる可能性があったと考えている。原子炉圧力容器につながるノズルに亀裂が入っているのを作業員らが2度発見したのだ。
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Associated Press
デービス・ベッセ原発
1度目は2002年に起きた。亀裂により漏出したホウ酸が原子炉圧力容器に約15センチの空洞を生じさせ、著しく劣化させていた。NRCは原発所有者のファーストエナジーが安全規則に「意図的に」違反し、「不正確な」情報を提出したとして、同社に史上最高となる545万ドルの罰金を科した。同原発は大規模な修理を行った末、運転を再開した。
2010年3月、ファーストエナジーは交換部品に不具合を発見した。同社はこれにより「小規模な漏出」が生じたと説明した。NRCは、同社が想定以上の高温で原発を運転させたため金属疲労が生じたものと結論づけた。
同原発は現在、認可延長を申請している。ファーストエナジーは原子炉圧力容器の一部をより頑丈な合金鋼製のものに交換する計画だ。修理は10月に始まる。
NRCは認可延長手続きで、原発の設計が時代遅れでないかや、原子炉格納構造が最先端のものより劣っていないかなどについては再審査を行わない。緊急避難計画や放射性廃棄物貯蔵計画も審査の対象とはならない。これらは老朽化管理計画の一環ではないからだ。
NRCの認可更新ディレクター、ブライアン・ホリアン氏は、「これは再認可ではなく、認可更新と呼ばれるものだ」と言い、何を審査するかはNRCの規則によって決められると語る。
同氏は、この説明では世間が「納得しないことも多い」と認めた上でこう述べた。「原発が存在すべきかどうかを再評価する機会を求める人すらいる」
記者: REBECCA SMITH
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