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全国知事会、「日本の再生に向けて−東日本大震災復興への提言−」に見る主体性のなさと無責任
http://www.asyura2.com/11/genpatu16/msg/291.html
投稿者 taked4700 日時 2011 年 9 月 06 日 22:15:07: 9XFNe/BiX575U
 

全国知事会、「日本の再生に向けて−東日本大震災復興への提言−」に見る主体性のなさと無責任

 既に2か月ほど前になるが、7月12日・13日と全国知事会議が開かれ、そこで「日本の再生に向けて−東日本大震災復興への提言−」なるものが取りまとめられた。たった二日の会議なので、実質的な話し合いがあったと言うよりも事務局が何人かの知事に相談しながらまとめたものを改めて読み合わせてみたと言うところだろう。しかし、それにしても主体性が全く見られない。また、今後近い将来起こるだろう次の震災、特に原発震災に関する発言が全く見られない。まさに無責任としか言えないものなのだ。以下、原発事故についての部分だけを取り上げ、幾つか例にあげながら、本来ならどのような提言がされるべきであったのか、それを述べてみよう。

例1:「放射性物質による汚染の影響は国内のみでなく、海外への食品をはじめ工業製品に至る多くの輸出品目に風評被害を与えている。また、放射能に関する安全基準が明確にされず、そのことが混乱に輪をかけている。日本全体の経済活動は電力不足の影響と相まって、このままでは活力の喪失にもつながりかねず、東日本大震災発災後4ヶ月経った今でも、復旧・復興の手がかりを模索する状況が続いている。」

 この部分は提言の前提となる現状認識を述べている。しかし、この現状認識では最も大きな問題が全く述べられていない。つまり、福島県民は勿論のこと、東北から関東地方に至る地域の住民が被りつつある放射能汚染被害に関することが丸々抜け落ちているのだ。そればかりか、この文章だけを見ると、まるで住民が被る汚染の影響は「風評被害」であるかのようにさえ読めてしまう。

 本来この部分は次のようになるべきだ。

 「放射性物質による汚染の影響は広く関東地方から東北地方へ見られるばかりでなく、今後、全国的なものになる恐れがある。また、食品から工業製品に至るまで輸出品についても様々な影響が出ている。これらの原因はひとえに放射能に関する安全基準が明確ではないためである。アメリカが中心となって取りまとめた放射能汚染に関する安全基準は原爆保有国独特のもので、原爆保有を正当化するために放射能汚染の影響を故意に低く見ている。しかし、国際的な合意として、低線量被曝であっても、安全閾値なるものは存在せず、健康に悪影響を与える可能性があるとされている。」
 

例2:「提言2 原子力発電に関する安全対策の確立
今次の事故により得られた知見や徹底検証の結果等を踏まえ、防災指針や原子力発電所等に対する耐震設計審査指針などの安全基準を抜本的に見直し、国内の他の原子力発電所等における安全対策も強化すること。また、地域住民の安全・安心を確保する地域防災計画の見直しを早期に行うため、防災対策を重点的に充実すべき範囲(EPZ)を原子力発電所から8〜10kmに設定している現行の「原子力施設等の防災対策について(防災指針)」や国の「防災基本計画」を、都道府県域を超えた大規模災害にも対応できるよう、原発の立地しない地方自治体の意見も踏まえ、早急に見直すこと。」

 まず事故原因についての言及がない。「徹底検証」という言葉が使われているが何を検証するのか、その対象が示されていない。そもそも、福島第一原発1号炉は地震の揺れで壊れたことが無視されている。この提言の文面では安全対策を徹底することで安全に原発の運転ができると言う印象を受ける。しかし、もともと、地震について現在の人類はまだあまり理解をしていない。地震学というものができてまだ100年もたってはいない。ましてや原発のようなこの数十年でできたばかりの建物に直下型の地震が起こったらどんな影響が出るかを確認したことがない。ただし、この例の後半部分でEPZを県境を超えて広範囲に設定するべきという点はいい提案だと思う。そして、もう一点、この部分には重要な点が欠けている。それは「る安全対策」の強化を求めるだけで一次データの開示を要求していない点だ。つまり、地震で原発事故が起こったと言うことについて故意に隠蔽をしているようにさえこの提言は見えるのだ。

 本来、この部分は次のようになるべきだ。

 「今回の原発事故の原因として挙げられるものに地震由来の故障・事故、津波由来の故障・事故、人為的な対応ミスによる事故がある。地震直前の状態からその直後のデータや写真の公開をし、そのことによって地震や津波、及び人為的な原因によって起こった事故や故障について、その因果関係を明らかにすること。その上で、原発の耐震安全設計などの見直しを行い、地震国日本に原子力発電がそもそも可能であるかどうかの検討を行うこと。もし可能であるのならば、どのような条件のもと可能と誰が判断し、事故が起こった時の賠償主体が誰になるのかを明示すること。」
 

例3:「提言3 放射能汚染に対する安全対策の推進
オフサイトセンターが今回の事故では機能しなかったことを十分検証し、今後の対策に反映させること。また、放射線量等に関するモニタリングを強化し、広域的かつ長期・継続的な測定を国が責任をもって実施するとともに国内外に正確な情報を迅速に発信すること。更に、放射線量、飲料水、食品、放射性物質に汚染された土壌や上下水汚泥、廃棄物等に関する各種安全基準や取扱い等に関する指針を速やかに明確に設定した上、住居や公園・校庭・園庭等の土壌、農地の除染や、廃棄物等の安全な処理方法の提示と実施など、住民生活や子どもの学校生活等の安全・安心を確保する対策を強化すること。さらに、放射線量や放射性物質に対する監視・検査体制の拡充・強化を図るため、必要な資機材の配備等について、財政支援措置を講ずること。」

 この部分が例1で指摘した現状認識に対応する提言だ。しかし、健康被害についての記述はない。まるで、「安全・安心を確保する対策を強化する」ことを今後やって行けば健康被害など生じないと言っているように見える。

 本来、この部分は上に引用した部分に加えて次のように述べるべきだ。

 「放射性のセシウムやヨウ素をはじめ、プルトニウムなどの重金属に至るまで、マウスや豚などを使った低線量被曝、特に、内部被ばくの影響調査について、第2次大戦狩猟直後に行われたものの結果の公開や改めての実験を行い、客観的実証的にどの程度までの被ばくなら安全であり、どの程度以上ならば危険なのかを示すことを求めたい。このことについては、関東地方や東北地方の各大学にも要請を行う。次に、放射能汚染の被害の実態がまだ明らかにならないことを踏まえ、妊婦及び小学校入学前の乳幼児については、福島県内だけでなく、広く関東地方から東北地方まで、北海道や九州などへの避難について援助を東京電力及び国の責任において行うこと。また、福島第一原発で作業にあたっている人たちの健康管理の一環として自己末梢血幹細胞の採取・保存を東京電力及び国の責任において早急に行うことを求める。更に、今後30年以上にわたって、福島県内のみならず関東から東北地方については全住民の健康調査を定期的に行い、被ばくによる健康被害が見られた場合は東京電力及び国の責任において治療及び賠償を行うこと。」

 なお、現状では福島県民について、ほぼ一生原発被害について健康診断をすると言う方針が立てられている。しかし、その前に、きちんと放射能汚染からの避難ができなければいけない。それをせずに単に健康調査のみを行うのはまるで放射線による健康被害についての人体実験を県がやっているようなものだ。哺乳類で人間と同じほどの寿命を持つものは少ないが5年から10年生きる生物は多くいる。マウスや豚などでの実験で5年程度までの影響なら調べられるはずだ。今すぐにでも実験をある程度の規模で始めるべきだ。
 

例4:「提言4 風評被害対策の強化
日本産食品等に関する輸入規制が強化・長期化されないよう、また、輸入規制に踏み切る国等が拡大しないよう、関係国等への働きかけを強化するとともに、政府として国際社会に対して、農林水産物、加工食品、工業製品、観光・サービスなど広範な分野・地域に関する安全性を緊急に宣言すること。また、これらの分野等に係る風評の払拭に向けた的確かつ積極的な情報発信や農林水産物及び工業製品等の安全性の証明に必要な検査等により生じる企業等の新たな負担に対する対策を講じること。また、被災地から避難された人々が、風評等により、いわれなく差別やいじめを受けることがないよう国民各層への周知を図るため、一層の情報発信に努めること。さらに、農林水産物等の風評被害による経済的損害について、確実に賠償等の対象とすること。」

 これを読むと、実害がある食品は一切存在しないと言う前提があると気が付くはずだ。しかし、現実には農地汚染はかなり広がっている。つまり、この提言は二重の意味でだましが行われているのだ。国内向けの安全対策について全く触れていない。そして、輸出食料品についての現状が述べられていない。こうして、国内食品の汚染については現行の検査で万全だと暗に言っているわけだ。そして、このことは、国内で現在規制値以下として出荷・流通している食品が海外では流通が認められ
ない場合があることを示している。福島県産で海外に輸出されていた野菜や果物などが現在どう輸出先の国で扱われているか、それをまず調べてみるべきだろう。

 本来、この部分は上に例として引用した部分の前に次のように述べるべきだ。

 「農地の汚染状況を100アール(1ヘクタール)ごとに定期的に調べ、それを各町村で公表すること。その際、セシウムだけでなく、考えられる限りの放射性物質についての分析を一回は行うこと。土壌のサンプリングに際しては、最も汚染のひどいと思われる地点から採取すること。出荷規制の解除に際しては、なぜ規制値以下に汚染濃度が下がったのかの分析を行い、それを公表すること。食料品の流通に際しては、いつどこで収穫されたものであるかを消費者が確認できるようにすること。」


例5:「提言5 原子力災害に対する十分な財政支援
原子力発電所事故による影響を早急に払拭するために必要な地方の取組みに対し、使途の自由な交付金制度の創設等十分な財政支援を行うこと。」

 この部分も唖然としてしまう。「原子力発電所事故による影響」を受けている地域とは福島や茨城、宮城などであろう。そうであれば、まず、汚染地域からの妊婦や乳幼児の避難について述べられなければいけない。一切述べられていないと言うことは、汚染地域からの避難については最低限しか認めず、それ以外は避難費用の負担はしないと言っているに等しい。自治体がこういう態度であるというのは瞠目に値する。

 本来、この部分は次のように全面的に差し替えられるべきだ。

 「原子力発電所事故の収束は今後10年以上かかることは確実であり、現在も放射性物質の吐き出しは続いている。その影響を受けるのは各被災地の住民である。そのため、事故収束に向けてその工程表の作成に際し、全国知事会からの代表者を参加させること。また、除染を出来る限り早急に行うことは勿論であるが、時間がかかるので、まずは妊婦や乳幼児の遠隔地への避難を進める必要がある。そのための費用負担を東京電力及び国の責任において行うこと。」


*以上見てきたように、少なくとも原発事故についてはまるで原発存続が既に決定されたかのような提言がされている。そして、放射能汚染についての健康被害は全く無視されているのだ。実を言うと、このことは、政府肝いりで作られた「東日本大震災復興構想会議」による提言でも同じことだ。http://www.cas.go.jp/jp/fukkou/pdf/kousou12/teigen.pdf でその提言を見ることが出来る。ぜひ「第3章 原子力災害からの復興に向けて.」を読んでみていただきたい。たったの3ページ弱だから数分もかからずに読み終えることが出来るはずだ。

全国知事会、「日本の再生に向けて−東日本大震災復興への提言−」の記事は次のリンクにある。

http://www.nga.gr.jp/news/h23.7_1-1_nihonnosaiseinimukete.pdf 

*6月8日の記事「近づく戦争・テロ社会、これらの動きを止めるべきでは?」から一連番号を付しています。<<691>>  

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コメント
 
01. taked4700 2011年9月06日 22:20:47: 9XFNe/BiX575U : j6VfE4Icxd
日本の再生に向けて
−東日本大震災復興への提言−
平成23年7月
全国知事会

http://www.nga.gr.jp/news/h23.7_1-1_nihonnosaiseinimukete.pdf よりコピー: 
日本の再生に向けて
−東日本大震災復興への提言−
平成23年7月
全国知事会
東日本大震災復興協力本部
日本の再生に向けて
−東日本大震災復興への提言−
東日本大震災復興協力本部

平成23年3月11日午後2時46分、岩手県三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の大地
震が発生した。これによる巨大津波によって東北地方の太平洋沿岸の市町村で
はまち並みが根こそぎ倒壊、流出し、集落が消滅したほか、地震動、火災、液
状化なども相まって、東日本に災害史上未曾有の壊滅的な被害が発生した。死
者、行方不明者は合わせて2万人を超え、約12万人に上る被災者は今なお体育
館や公民館、仮設住宅などで不自由な暮らしを余儀なくされており、多くの国
民は復興への取組の遅れに対して深い懸念を抱いている。
更に、東京電力福島第一原子力発電所における事故は、依然として収束の兆
しが見えない状況の中、警戒区域や計画的避難区域等に加え、新たに特定避難
勧奨地点が設定されたことにより、関係住民は今もなお出口の見えない避難生
活を強いられている。また、放射性物質による汚染の影響は国内のみでなく、
海外への食品をはじめ工業製品に至る多くの輸出品目に風評被害を与えてい
る。また、放射能に関する安全基準が明確にされず、そのことが混乱に輪をか
けている。日本全体の経済活動は電力不足の影響と相まって、このままでは活
力の喪失にもつながりかねず、東日本大震災発災後4ヶ月経った今でも、復旧
・復興の手がかりを模索する状況が続いている。
こうした状況の中、国においては、復興の基本理念や基本的施策、復興対策
本部や復興庁の設置、特区制度の整備等を内容とする復興基本法を制定し、復
興構想会議での提言なども踏まえた取り組みを進めている。
本会においても、発災直後に緊急広域災害対策本部を設置して支援物資の提
供や職員派遣などの応急対策に当たった。5月12日からは東日本大震災復興協
力本部(本部長:上田埼玉県知事)を中核とした復興支援のための協力体制を
整備して、被災市町村の義援金支給関連業務への職員派遣など中長期にわたる
人的支援、被災者生活再建支援制度に対する国への支援強化要請など、被災地
からのニーズにきめ細かく対応するとともに、今後発生が予想される巨大地震
等による大規模災害への実効ある対策の確立に向けて取組を進めている。
今後、一刻も早い被災地の復興を成し遂げ、国難とも言える今回の事態を乗
り越えて、日本の再生を果たすためには、国と地方が総力を結集して取り組む
必要がある。
ついては、国が被災県から既に提出されている提言・要望に誠実に対応する
とともに、当面する緊急課題である以下の事項について、地方と十分に協議の
上、速やかに対応するよう提言する。

1.地方の主体性を活かしながら迅速に復興対策に取り組むべき
提言1 復興基本方針の早期提示
東日本大震災では、大津波や地震動、火災、液状化などによりそれぞれ
のまちに甚大な被害が生じたが、復興まちづくりの基本的な方向が明らか
にならなければ、住宅、商店、事業所工場等は現地復旧、復興事業を推進
することすらできない。しかも、被災地の地理的特性や被害の態様が様々
であることから、それぞれにふさわしいまちづくり復興計画が早期に策定
できるよう配慮することが必要である。
国は早急に復興基本法第3条に規定する東日本大震災復興基本方針を定め
るとともに、各地域における復興まちづくりに必要となる予算措置等を速
やかに講じること。
提言2 復興特区の速やかな制度設計と有効活用
地域主導による復興を迅速に進めるには、大胆な規制緩和や税制優遇等
の特例を認める「復興特区」の活用が不可欠である。復興基本法に位置づ
けられた復興特区の有効活用を図るため、国は地方の意見を踏まえつつ早
急に制度設計を行うこと。
制度設計に当たっては、既存の特区制度のスキームに捉われることなく、
国は最小限の範囲の関与にとどめ、地域が主体的に策定した復興計画を速
やかに実施できる簡便な手続きとすること。
なお、既に岩手県や宮城県から具体的な特区提案がなされているところ
であり、これらの提案が実現できるよう制度設計及び運用を行うこと。
提言3 高速道路ネットワークの整備促進
復興に向けて力強く進んでいくには、三陸沿岸地域及び日本海沿岸地域を
南北に貫く「縦軸」と、東西を結ぶ東北横断自動車道等「横軸」の、格子状
の高速道路ネットワークの整備が喫緊の課題である。
住民生活や経済活動を支える円滑な物流を確保し、早急に被災した地方の
骨格を固めるためにも、高速道路ネットワークの早期完成を図ること。
提言4 津波対策のための防災施設等の早期復旧・整備
新たなまちづくりを進めるためには、安全な土地の確保の見通しが必要
である。各自治体の復興計画策定推進のため、早急に湾口防波堤や防潮堤等
の整備方針を示し、早期完成を図ること。
提言5 迅速ながれき処理の推進
地域復旧の第一歩となるのが、被災地のがれき処理である。
がれき処理は基本的には市町村の事務とされているところであるが、東
日本大震災で発生したがれきは広域かつ大量に発生しているため、各自治
体の処理能力を大きく超えている。
迅速な復旧を進めるため、がれき処理については、国が主導して広域処
理体制を構築し支援する他、国の直轄事業や県への補助事業を導入するな
ど、既存の制度や従来からの役割分担を超えた弾力的な運用や特例措置を
実施すること。
提言6 復興財源の確保と自由度の高い交付金制度等の創設
被災地において復興に必要な財源が確実に確保されるよう、復興財源の
あり方について地方を交えた議論・検討をただちに開始すること。
被災した自治体や避難者を受け入れている自治体が実施する復旧・復興
事業に要する経費に対しては地方交付税総額とは別枠で財源を確保すると
ともに、不交付団体にも確実に財源を措置すること。
また、被災地の復興財源として、地域の実情に応じて、地域が主体的判
断で復旧・復興を実施できるよう自由度の高い包括的交付金制度を創設す
るとともに、「復興税」として基幹税を臨時に増税する場合は、その法定割
合を地方交付税とし、通常分とは別枠によりその総額を確保すること。
さらに、災害復旧事業について、国庫補助率のさらなるかさ上げや補助
対象範囲の拡大や国が実施する直轄道路等の災害復旧・復興事業に対する
被災した自治体からの負担金を廃止するなどの弾力的な財政支援措置を講
ずること。
提言7 被災県ごとの大規模な復興基金の早期創設
各般にわたる復興対策を補完し、被災地の実情や被災者のニーズに即した
復興対策を長期・安定的に地域の判断で主体的に展開できるよう、阪神・淡
路大震災時を大幅に上回る復興基金を被災県ごとに早期に創設すること。
提言8 第3次補正予算の速やかな編成と執行
復興構想会議の提言や被災地の要望などを踏まえ、直接的被害を受けた
被災地はもとより、併せて多大な間接的被害を被っている東日本全体の復
興に向けて、インフラの整備、まちづくり、農林水産業の生産基盤の復興、
産業振興、放射能汚染対策など本格的な復興対策を盛り込んだ第3次補正
予算を財源措置との同時決定にこだわらず速やかに編成し、ただちに実施
すること。その際、財源を「今を生きる世代」のみで負担することを強調
して事業規模を制約することなく、円高の是正、デフレ経済からの脱却に
より経済回復を図り、復興債を発行し、日銀がその役割を十分果たす中で
資金調達を行うことなどにより財源を確保し、復興に必要な事業を迅速か
つ支障なく実施できるよう、十分な事業費を計上すること。

2.福島第一原発事故の早期収束と安全対策の確立を実現すべき
提言1 福島第一原発における事故の早急な収束
いまだ収束の兆しが見えない福島第一原発事故に柔軟かつ大胆に対応で
きるよう、官民及び国内外の叡智を集めた取組を進めること。
提言2 原子力発電に関する安全対策の確立
今次の事故により得られた知見や徹底検証の結果等を踏まえ、防災指針
や原子力発電所等に対する耐震設計審査指針などの安全基準を抜本的に見
直し、国内の他の原子力発電所等における安全対策も強化すること。
また、地域住民の安全・安心を確保する地域防災計画の見直しを早期に
行うため、防災対策を重点的に充実すべき範囲(EPZ)を原子力発電所
から8〜10kmに設定している現行の「原子力施設等の防災対策について(防
災指針)」や国の「防災基本計画」を、都道府県域を超えた大規模災害にも
対応できるよう、原発の立地しない地方自治体の意見も踏まえ、早急に見
直すこと。
提言3 放射能汚染に対する安全対策の推進
オフサイトセンターが今回の事故では機能しなかったことを十分検証し、
今後の対策に反映させること。
また、放射線量等に関するモニタリングを強化し、広域的かつ長期・継
続的な測定を国が責任をもって実施するとともに国内外に正確な情報を迅
速に発信すること。
更に、放射線量、飲料水、食品、放射性物質に汚染された土壌や上下水
汚泥、廃棄物等に関する各種安全基準や取扱い等に関する指針を速やかに
明確に設定した上、住居や公園・校庭・園庭等の土壌、農地の除染や、廃
棄物等の安全な処理方法の提示と実施など、住民生活や子どもの学校生活
等の安全・安心を確保する対策を強化すること。
さらに、放射線量や放射性物質に対する監視・検査体制の拡充・強化を図
るため、必要な資機材の配備等について、財政支援措置を講ずること。
提言4 風評被害対策の強化
日本産食品等に関する輸入規制が強化・長期化されないよう、また、輸入
規制に踏み切る国等が拡大しないよう、関係国等への働きかけを強化すると
ともに、政府として国際社会に対して、農林水産物、加工食品、工業製品、
観光・サービスなど広範な分野・地域に関する安全性を緊急に宣言するこ
と。また、これらの分野等に係る風評の払拭に向けた的確かつ積極的な情報
発信や農林水産物及び工業製品等の安全性の証明に必要な検査等により生じ
る企業等の新たな負担に対する対策を講じること。
また、被災地から避難された人々が、風評等により、いわれなく差別や
いじめを受けることがないよう国民各層への周知を図るため、一層の情報
発信に努めること。
さらに、農林水産物等の風評被害による経済的損害について、確実に賠
償等の対象とすること。
提言5 原子力災害に対する十分な財政支援
原子力発電所事故による影響を早急に払拭するために必要な地方の取組み
に対し、使途の自由な交付金制度の創設等十分な財政支援を行うこと。
提言6 国内産品の輸出証明書発行事務対策
日本産食品に対する輸入規制に対し、適切に対応すること。特に、現在、
都道府県が行っている輸出証明書の発行について、都道府県の負担とならな
いよう配慮すること。

3.被災者支援施策を充実・強化すべき
提言1 被災者に対する支援の充実・強化
地震・津波災害及び原子力災害により避難を余儀なくされ、慣れない環境
で生活再建に取り組んでいる被災者に対し、住宅・雇用をはじめ生活全般に
わたるきめの細かい支援を機動的に実施すること。
また、原子力災害に伴う被災者の早期救済に万全を尽くすとともに、損害
の賠償等に当たっては、立法措置も含め、国が全責任を持って対応すること。
提言2 原子力災害被災者への経済的支援
原子力災害被災者の税負担に対する救済について、特別法を制定すること
などにより地震・津波災害と同様に措置するとともに、地方自治体における
地方税収入等の減に係る100%の財源措置を講じること。
提言3 住宅確保のための支援
避難所で避難している方々が一刻も早く、安心して生活できるよう、応急
仮設住宅の迅速な建設を支援するとともに、公営・民間住宅等の活用を促進
すること。
また、今後、恒久的な住宅供給対策として、災害公営住宅、地域優良賃貸
住宅や改良住宅などの整備が大量に必要となることから、補助率の引上げや
地方負担に係る全額交付税措置の実施、また、被災者生活再建支援制度にお
ける対象災害の見直し等の制度の総合的な見直しを行い、被災した住宅の修
繕や再建に対して手厚く支援するなど、国による全面的な支援と財政措置を
講じること。
提言4 液状化被害からの復旧への支援の充実・強化
液状化の被害を受けた住宅の被害認定基準の見直しが行われたが、新たな
基準で判定しても、被災者生活再建支援法の対象となる世帯は非常に少ない
ことから、更なる基準の見直しを実施すること。
さらに、液状化被害世帯への独自支援を行った自治体に対する財源措置を
講じること。

4.東日本大震災を踏まえ、地域の防災対策を強化すべき
今回の震災では、事前に想定し防災対策を講じていた規模を超える「想定
外」の規模で地震が発生し、甚大な被害を招いたことから、各地域における
防災対策を強化するため、国の防災基本計画を早期に見直すとともに、以下
の措置を講じること。
提言1 地震・津波観測監視システム等の構築による観測体制の強化
地震・津波発生メカニズムの解明を進めるとともに、地震・津波観測監視
システム(DONET)や海上ブイを使った海底津波計(DART)による津波観測
網を構築し、津波観測・予知体制を確立・強化すること。
提言2 早急な津波被害予測の実施
正確なシミュレーションのもと、津波高に加えて詳細な浸水予測図を作成
するなど、被害想定の見直しを行うこと。
提言3 消防力・防災力の強化
大規模災害時の緊急救助や支援、孤立集落の発生を防ぐためには被災状況
の把握と救急援助活動の早急な活動展開はきわめて重要であり、国において、
緊急消防援助隊の活動の充実・強化や、消防救急無線の送受信を確実にする
消防救急デジタル無線、衛星電話の整備など情報通信体制の充実・強化を図
ること。
また、警察の災害対応のための資機材の充実、自衛隊の災害派遣活動の環
境整備や自治体との共同訓練の強化、海外からの支援隊の円滑な受入のため
の取組など、地域の防災力の強化に向けて総合的な対策を講じること。
提言4 災害医療体制の充実・強化
DMAT(災害派遣医療チーム)は、大規模災害時の救急救助・医療に大
きな力を発揮するが、今般の東日本大震災では、移動手段や携行装備の確保
に大きな課題があり、緊急の展開、活動に支障を来した。
ついては、DMATの迅速・有効な活動展開を実施するため、国として大
規模災害被災地における移動手段や携行装備の確保と活動環境の整備を図る
こと。


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