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投稿者msehi
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ドイツは日本の福島原発事故を受けて、連邦議会は6月30日に10年以内にすべての原発を停止することを決定した。
既にドイツは2001年に電力業界の合意のもとに、2020年代末までに脱原発を決定していたことから、当然の成り行きと感じた人も多いように思う。
しかし実際は既にその時からドイツ原発産業の逆襲は始まっていた。
それは1998年に開始された電力の自由化で、当初30パーセントほど安くなった電力料金が、電力自由化前に1000社ほどもあった電力事業者の吸収、合併による寡占化で、2001年には値上がり始めていたことと呼応するものであった。
事実ドイツの電力料金は2002年から2007年までに120パーセントも値上がっており、その間ドイツ電力の8割は4つの巨大電力企業,EON,RWE,EmBW,Vanttenfallによって独占された。
したがって多くの専門家は過激な電力料金の値上がりの原因について、電力市場がこれらの独占企業に支配されることで、市場が意のままに操作されていることを指摘している。
このような過激に電力料金が値上げされていく中で、これらの巨大電力企業やジーメンス社などからなるドイツ原発産業は、「原発は安い、クリーン、安全」といったスローガンを掲げ、ロビー活動や政治献金を通して政治支配を強め、電力料金を安くするためには原発運転期間の延長は不可欠であることを訴え、28年間の原発運転期間延長を求めて行った。
そのため2008年から原発が順次運転停止時期を迎えるニーダーザクセン州の首相ブルフ(CDUキリスト教民主同盟)は、原発電力のコストの安さ、地球温暖化ガスを排出しないクリーンさ、そして安全性を強調し、「フィンランドやスェーデンのように原発運転期間を延長しないことは国家財産の損失であり、早急な原発撤退はドイツの電力料金を高騰させる」と言って、2007年7月に原発運転期間の延長を要請し、停止を実質的に延期させた(ドイツ全土では2007年から2009年までに4基の原発が停止予定であったが、いずれも実質的に延期された)。
しかしそのような原発運転期間の延期にもかかわらず、2009年は市場の高騰でドイツの電力料金は50パーセントも値上がりした。
それは、原発運転期間の延長がドイツの電力料金を下げるという神話を崩壊させた。
すなわち電力料金は初期投資や放射線廃棄物のコスト抜きの安い原発コストとは無関係に、独占企業の市場支配によっていることを明らかにした。
また安全性については2007年12月にドイツ連邦環境省の放射線防護局(BfS)が、16の原発がある周辺地域の1980年から2003年にわたる疫学調査で、子供が癌にかかる確率が異常に高いことを公表し、安全基準値以下の低い放射線濃度においても危険であることを明らかにした。
その後原発産業の激しい圧力で、直接的な原因はうやむやにされたが、ほとんどのドイツ国民は直接的原因が原発にあることを疑わなかった。
さらにほとんど地震のないドイツで放射線廃棄物処分場とし安全であると言われてきたザクセンアンハルト州の岩塩抗モアスレーベン、そしてニーダーザクセン州の岩塩層アッセ貯蔵は、僅か数十年の使用で坑道の壁の崩落などによって地下水の侵入を招き、使用できないことが明らかになっている。。
例えばニーダーザクセン州の岩塩層アッセ貯蔵場では、カールスルーエ原子力研究所の一九六〇年代から一九七八年までの研究目的低中レベルの放射性廃棄物などの一二万六千のドラム缶が岩塩層地下七五〇メートルに運び込まれ、地下水を一部汚染していることが問題視されてきた。
そのため放射線防護局(BfS)は二〇一〇年一月に、「岩塩層坑道近くには毎日一万二千リットルの地下水が発生しており、一〇年以内に坑道が崩壊する危険性がある」という専門家の指摘を受けて、最大数兆円とも言われる莫大な費用をかけてこれらのドラム缶の回収を決定した。(BfS Pressmitteilungen 15.01.2010)
しかもアッセ周辺では、二〇〇二年から二〇〇九年の白血病及び甲状腺癌の発生率が急上昇している。(ZDF Nachrichtung 04.12.2010)
しかし2009年の連邦選挙では、原発の電力料金の神話や危険性がドイツ国民に浸透していたにもかかわらず、従来から脱原発の転換を求めるキリスト教民主同盟が圧勝し、2010年9月に原発運転期間の12年の延長を決定した(草案では28年の延長)。
それまでも2005年からキリスト教民主同盟(CDU)のメルケル政権であったが、社会民主同盟(SPD)との連立政権では脱原発の転換を打ち出すことは不可能であったからだ。
社会民主同盟(SPD)が選挙で惨敗した理由は、シュレーダー政権からの産業利益を最優先する新自由主義の追及によって、ドイツ産業がEUで独り勝ちするほど莫大な利益を上げているにもかかわらず、大部分のドイツ国民の暮らしを困窮させるだけでなく、福祉から教育に至るまで恐ろしく悪化させ、多くの国民が社会民主同盟(SPD)に裏切られたという思いが高まっていたからだ。
しかし選挙では脱原発の転換がキリスト教民主同盟の公約に掲げられていなかったことから、ドイツ国民の批判は高まり、過去に放射線廃棄物の最終処分場として決定されたことのあるゴアレーベン岩塩層の調査が再開されると、批判が噴出した。
ゴアレーベン岩塩層は80年代からの調査に基づいて、2000年に多くの専門家が「ゴアレーベンのような岩塩層が地下水と接触している場所では、数百年も経ない間に高温の放射性廃棄物容器が岩塩層を溶かし、地下水を汚染する危険性が高い」と結論づけ、最終処分場建設を凍結したからだ。
そのような批判の高まりの中で、保守的と言われている公共放送ZDFの報道でさえ、「現在の政治は国民を大きな信頼の危機に落とし入れている」と述べ、国民の信頼を取り戻すことを強く主張した。(ZDF Frontal21 Sendung vom 02.11.2010 Manuskript)。
このような強い主張を公共放送ZDFがするのは、世論調査で原発運転期間の延長に反対する国民が圧倒的に多く、既にこの時保守大国バーデンブルテンベルク州の2011年3月の州知事選挙で緑の党の州知事誕生が予想されており、世論の高まりに呼応するものであった。
しかしそのような世論形成の大きな要因は、脱原発を求める公共放送ZDFの公正な報道でもあった。
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