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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/20687?page=4
海外各国は、日本以上に日本の水産物に厳しい目を向けている。8月11日、EUの欧州委員会が、福島第一原子力発電所事故を受けて、日本から水産物を輸入する際に、放射性物質の検査を強化するようEU各国に勧告したことが分かった。
さらに欧州委員会は、日本以外の国が日本近海を中心とする海域で漁獲した水産物も検査対象とし、回遊性の高い魚については遠洋で獲った場合でも厳密に検査を行うのが妥当、という判断をした。
日本近海の水産物に神経をとがらせているのは、EUだけではない。農林水産省がまとめた「諸外国・地域の規制措置」 によると、8月26日時点で、中国は、福島周辺の10県で獲れた水産物を輸入停止とし、それ以外の県で捕れた水産物も、政府が作成した検査証明書および産地証明書などを要求している。また、米国も、日本から輸入した水産物についてサンプル検査を行っている。
国内でも、水産物の放射性物質の調査が行われている。ただし、北海道から神奈川県に至る10都道府県に限られており、また、出荷制限の基準となる暫定規制値を設けている。「とにかく受け入れることを禁止する」といったような措置は、もちろん取られていない。
EUや中国が、日本近海という広域にわたって検査対象としている点から、他国が日本より厳しい措置を取っていることが分かる。世界は、高濃度の放射性物質を含む水が海に放出されたことを強く警戒しているのだ。
*****太平洋のセシウム137濃度は最大で平常時の14倍に
確かに、今回のように、大量かつ高濃度の放射能汚染水が海洋に放出された例はかつてない。チェルノブイリの原発事故では、大気や土壌に放出された放射性物質が徐々に海に移動していったが、福島第一原発事故では、直接、海に放射性物質が放出された。
では、放射能汚染水の海洋での広がりはどのくらいになるのだろうか。
日本原子力研究開発機構は6月24日、太平洋全域における放射能濃度の広がり方のシミュレーション結果を報告している。
これによると、1年後(2012年4月)の太平洋の海水中におけるセシウム137の濃度は、最も放射能濃度の高いもので1リットル中0.023ベクレルと予測されている。これは、現在のバックグラウンド(自然発生による放射線)の約14倍にあたる。
セシウム137を含む水塊は、数年かけて太平洋を東に拡散していき、5年後にはアメリカ西海岸に到達すると予測されている。ただし、7年後には今までのバックグラウンドと変わらない程度になると予測されている。
*****放射性物質は「生物濃縮」が起こりにくい
水産物はどのようなメカニズムで放射性物質に汚染されるのだろうか。様々な科学研究により知見が集められている。
『魚類生理学の基礎』(会田勝美編、恒星社厚生閣)によると、海産魚の場合、体内よりも体外つまり海水の浸透圧が高いため、体内から水が出ていきやすい。そのため、海水中に含まれる放射性セシウムは、魚の体内に取り込まれた後、鰓(えら)や尿から徐々に排出され、蓄積し続けることはないという。
ただし、海水中の放射性物質の濃度が高いほど、魚の体内の放射性物質の濃度も高くなるため、海水の濃度が低いに越したことはない。
また、淡水魚の場合は、体内の方が体外つまり淡水よりも浸透圧が高いため、体内に水が入ってきやすく、放射性物質の排出に要する時間は長いことが知られている。
食物連鎖により、生物種間で放射性物質が濃縮されることも心配の1つだ。「食べる・食べられる」の関係により、一般的には、食物連鎖の上位に位置する生物ほど、蓄積される化学物質の濃度が上がる。
水性生物の放射性セシウムの濃縮係数。 (出典:IAEA“Sediment Distribution Coefficients and Concentration Factors for Biota in the Marine Environment”)
海洋中では、例えば「植物プランクトン→動物プランクトン→イワシ→マグロ」といった食物連鎖の流れがある。1950年代に起きた水俣病では、工場排水に含まれていた塩化メチル水銀が、食物連鎖を通して魚の間で生物濃縮し、これを日常的に摂取した人が中枢神経疾患を起こした。
これまでの研究から、放射性セシウムなどの放射性物質は、水銀やDDT、PCBといった生物濃縮が話題になる物質と比べて、生物濃縮が起こりにくいことが分かっている。
生物が、ある物質をどのくらい体内に蓄積しているかは、海水中の物質の濃度に対する生物中の物質の濃度を示す「濃縮係数」で表される。水銀の濃縮係数は360〜600、DDTでは1万2000、PCBでは1200〜100万であるのに対して、放射性 セシウムの濃縮係数は5〜100、放射性ヨウ素では10ということが、これまでの海洋研究で示されている。
とはいえ、放射性物質でも生物濃縮が起きていることにはなる。生物の種類によっても、各物質の体内への取り込みやすさは異なる。
もし、食物連鎖の最高位に位置する人の体内に放射性物質が取り入れられたら、どのような挙動を取るのだろうか。カナダ・ゲルフ大学のデイビット・ウォルトナ=テーブス教授は、チェルノブイリの原発事故の調査をもとに、人の体内における放射性物質の動きを次のように説明する。
「生物学的には、ヨウ素131は急速に吸収され、ヨウ素が体内を移動する経路をたどって甲状腺に集まる。人間の場合、ヨウ素131のほとんどは尿で体外に排泄される。セシウムはカリウムと同じで筋肉細胞全体に行き渡る。実際、カリウムとセシウムの両方が人体に与えられると、人体はセシウムのほうを優先的に体内にとどめる」(サイエンスメディアセンター「食物連鎖における放射性物質汚染」より)
*****暫定規制値を超える放射性物質が検出された水産物
先述のとおり、日本国内では、北海道から神奈川県にわたる10都道県において、水産物の放射性物質調査が行われている。
水産庁の福島県および近隣県の主要港での調査によると、「各都道府県等における水産物放射性物質調査結果」によると、8月24日までに、暫定規制値を超える放射性物質が検出された水産物は、表層性魚種のコウナゴ、シラス、沿岸の底層性魚種のアイナメ、エゾイソアイナメ、イシガレイ、シロメバル、コモンカスベ、ババガレイ、ヒラメ、ウスメバル、マコガレイ、無脊椎動物のムラサキイ ガイ、ホッキガイ、キタムラサキウニ、モクズガニ、海藻類のワカメ、ヒジキ、アラメ、淡水魚のアユ、ヤマメ、ウグイ、ワカサギ、イワナ、養殖ホンモロコである。暫定規制値を超えたものは、出荷制限や、操業や採捕の停止が指示され、市場には出回らないようになっている。
一方、カツオ、サバ、サンマなどの回遊魚についても、水産庁は「水産物についてのご質問と回答(放射性物質調査)」の中で、定期的にサンプリング調査を行い、特に福島県の沖合海域を回遊する魚については、暫定規制値を超えていないことを確認した上で漁業を開始するとしている。(中略)
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