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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/19736
原発マネーは誰を潤しているのか(前篇)知事も町長もどっぷり、玄海原発を巡る黒いカネ
2011.08.25(木)
中願寺 純隆
原発の是非について判断を下すのは誰か。答えはもちろん、この国の主権者たる「国民」のはずだ。しかし、現実には原発立地自治体の市町村長や知事にその権限が限定されているのが現状である。そこに法的根拠は、ない。
東京電力福島第一原子力発電所の事故は、放射能被害が、想定された範囲を大きく超えることを証明しているが、これまで立地自治体以外の住民の声は原子力行政に生かされることがなかった。
国内の原発は54基。営業運転を続けているのは15基である(本稿掲載時には調整運転中だった北海道泊原発3号機が営業運転を開始する見込みで、 そうなれば16基となる)。定期点検のために運転休止中の多くの原発については、ストレステスト後に再稼働の判断が求められることになる。
判断を下すのは、これまで通り立地自治体の首長らだが、原発を取り巻く地域ごとの事情を探っていくと、原発マネーで地域ごと買収するという「国策」の実相や、歪んだ地方政治の実態が見えてくる。
電源三法交付金の恩恵を独占する首長一族、選挙における票や公約実現への協力で政治家を支える電力会社、そして電力会社の仕事で飯を食う企業による原発推進運動・・・。
九州電力は、玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)と川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の2つを擁しているが、背景を追って取材を重ねるほどに、報じられることのなかった原発立地自治体の姿が鮮明となった。
福島第一原発の事故を経験したこの国で、原発の是非を「原発マネー」で潤ってきた地域の判断だけに委ねるのは間違いではないか。その疑問に答える一連の取材結果を2回にわたって掲載する。前半では玄海原子力発電所、後半では川内原子力発電所に焦点を当てる。
「佐賀県一の貧乏地域」を変えた電源三法交付金
佐賀県東松浦郡玄海町は人口約6500人。西側は玄界灘に臨み、北東側が唐津市に接する風光明媚な町である。町制に移行したのは1956(昭和31)年で、旧値賀村・旧有浦村の合併によって現在の町が形成された。
この町が大きく変貌を遂げるのは、1960年代後半(昭和40年代初頭)に原子力発電所の建設計画が現実のものとなってからで、74年には九州電力 玄海原子力発電所の1号機が、97年には4号機が営業運転を開始。2009年からは3号機でMOX燃料を使用した「プルサーマル」が実施されている。
「佐賀県一の貧乏地域」(玄海町・60代男性)を変えたのは、電源三法交付金である。
原発立地自治体は、国や電力会社にとって特別な存在で、優遇措置によって様々な恩恵を受けてきた。玄海町も同様で、電源三法(「電源開発促進税 法」「特別会計法〔旧・電源開発促進対策特別会計法〕」「発電用施設周辺地域整備法」)による交付金(迷惑料とも言われる)で、上・下水道整備をはじめ 「玄海町産業会館」「玄海町総合運動場」「玄海町町民会館」「玄海海上温泉パレア」など、人口6500人程度の町としては考えられない公共事業が次々と実 現したほか、原発関連の雇用がもたらされた。
その玄海町の町政トップは岸本英雄町長である。県議3期目に町長に転身し、現在2期目。全国で最初に原発再稼働に同意を与えた首長だが、同意表明 後、ストレステストの実施が決まったことに加え、九電「やらせメール」が発覚。玄海原発に集まった再稼働に関する注目度は一時より低くなっている。それで も、玄海原発の今後に最も発言権を有していることに変わりはない。
筆者が主宰する調査報道サイト「HUNTER」では、岸本町長に関する選挙違反まがいの町議への現金供与や、不動産にからむ疑惑を報じてきたが、カネにまつわるさらに醜い実態が明らかとなっている。
岸本町長のファミリー企業「岸本組」
玄海町が発注する公共工事は、電源三法による交付金の恩恵を受け、同規模の自治体とは比べものにならない件数となる。この同町の発注工事を半ば独占的に受注しているのが地場ゼネコン「岸本組」(佐賀県唐津市)である。
岸本組は、岸本町長の曽祖父が1911(明治44)年に玄海町で創業。佐賀県、唐津市、玄海町といった自治体発注の公共工事を受注する一方、九電 やその子会社の西日本プラント工業を得意先としている。西日本プラント工業は九電の子会社で、火力発電所・原子力発電所の設備設計や製作、関連工事を行う プラント企業だ。
岸本組のホームページには「主な取引先」として国土交通省や自治体が並ぶが、民間企業は九電と西日本プラント工業だけ。玄海原発の事業者である九電と密接な関係にあることがうかがえる。事実、岸本組が受注した玄海原発関連の工事は少なくない。
岸本組の社長は、岸本町長の実弟。町長自身も同社の大株主であることが分かっている。
<2009年度>町発注工事128件 → 岸本組受注件数19件(計5億6576万円)
<2010年度>町発注工事 99件 → 岸本組受注件数15件(計5億5493万7239円)
<2011年度>町発注工事 17件 → 岸本組受注件数3件(計6055万円)
玄海町発注公共工事の15%を、岸本町長のファミリー企業である「岸本組」が受注しているという異常な状況なのだ。
岸本町長に原発マネーが流れ込むカラクリ
岸本町長が公約として掲げた「薬草研究所」の関連工事に至っては、岸本組独占の状況がさらに顕著だ。落札状況は次のとおりである(数字はすべて税抜き)。
岸本町長の公約の目玉とも言える「薬草園」関連工事では、町長の実弟が社長を務める「岸本組」が合計4億9320万円もの工事を受注している。その他、中山昭和・町議会原子力対策特別委員長の次男が経営する「中山組」が計7800万円の工事を落札していた。
同事業は電源立地地域対策交付金(いわゆる原発交付金)や佐賀県核燃料サイクル補助金といった、いわゆる原発マネーで賄われているが、2社の受注 金額合計は5億7120万円。同事業に費消された原発マネー7億6000万円(事業費の中の交付金充当額)の、実に75%を岸本組と中山組の2社で独占し ていたことになる。
これが玄海町の実態である。
一方、岸本町長は2009年、2010年の2年間で、保有していた岸本組株の一部を岸本組本体に引き取らせていた。売却益は800万円を超える。
「原発交付金 → 玄海町 → 岸本組 → 岸本町長」といった原発利権の図式が出来上がる。玄海町の中で、最も原発マネーの恩恵を受けているのは他ならぬ町長の一族だったということだ。岸本町長が原発や九電を窮地に追い込むはずがない。
古川知事の「最先端がん治療施設」構想を支える九電
佐賀県の古川康知事についても同様の構図が見てとれる。
九電は2010年4月、「佐賀国際重粒子線がん治療財団への寄附について」とする発表を行ったが、そこには<佐賀国際重粒子線がん治療財団並びに 佐賀県のご要請に基づき、佐賀県が中心となって開設を進めている九州国際重粒子線がん治療センターの運営主体である、佐賀国際重粒子線がん治療財団へ下記 のとおり寄附を申し込みました。>とある。
寄附金額は、複数年度での分割で「39億7000万円」という巨額なものだった
古川知事は、2期目を目指した2007年の知事選で、「がん治療の先端的施設の誘致」をマニフェストに掲げ、翌2008年には「九州国際重粒子線 がん治療センター事業推進委員会」(委員長・古川知事)を立ち上げていた。事業推進委員には、当時九電会長の松尾新吾氏の名前も入っている。
重粒子線治療は、がん治療の切り札として注目される治療法の1つで、がん組織を重粒子線を使ってピンポイントで破壊するため、これまで治療が難し かった頭頚部や体の深い部分にも有効である上、外科手術と違い痛みがないことや副作用が少ないなどの利点がある(ただし、すべてのがんに有効というわけで はない)。
「SAGA HIMAT」(サガ ハイマット)は、2007年から古川康佐賀県知事がマニフェストに明記した最先端がん治療施設(Heavy Ion Medical Accelerator in Tosu)の建設構想を具現化したものだ。
2011年4月の知事選で古川知事が作成したマニフェストでは「7つの約束」を公表したが、冒頭で原発推進への強い姿勢を示すとともに、最先端がん治療施設「HIMAT」の整備を明記している。
2月には九州国際重粒子線がん治療センターの建設工事がすでに始まっており、今回の知事選で争点になる事案ではなかったのだが、わざわざマニフェストの1項目に入れたところに知事の計画への執念を感じる。
知事にとって「九州国際重粒子線がん治療センター「SAGA HIMAT」は、政治生命がかかる最重点施策なのだ。
そして、その構想を支えるのが「九電」ということになる。
九電から巨額の寄付金をもらって原発の是非を論じられるのか
「SAGA HIMAT」計画の初期投資額は約150億円で、佐賀県が20億円の補助金を出すほか、民間からの寄附88億5000万円と出資金などの計41億5000万円で賄う計画だ。
「佐賀国際重粒子線がん治療財団」のホームページには「寄附者一覧」として財団へ寄付をした企業や個人が掲載されている。九電の社名は見当たらな いが、その代わりに九電産業株式会社、ニシム電子工業株式会社 株式会社九電オフィスパートナー、西日本技術開発株式会社、九電不動産株式会社、九州通信 ネットワーク株式会社、株式会社電気ビルなど、九電の関連企業の社名がズラリと並ぶ(このうち数社は九電「やらせメール」事件でも登場している)。
つまり、九電からの寄附「39億7000万円」と、同社の関連企業からの寄附は、必要とされる寄附金額の半分近くを占めることになり、同社抜きでは古川知事の最重点施策は成り立たないという仕組みだ。
同財団が佐賀県鳥栖市に建設する「九州国際重粒子線がん治療センター」は、県と県医師会が設立した「佐賀国際重粒子線がん治療財団」が運営するこ とになっているが、建物の建設・管理は、なんと九電が中心となって設立された「九州重粒子線施設管理株式会社」(そのほか九電工、久光製薬、佐賀銀行など が出資)が受け持つ。ここでも主役は九電である。
知事の父親が九電の社員だったことや、九電役員からの献金、さらには「やらせメール」に代表される玄海原発再稼働をめぐる知事と九電のやり取りからも、両者の密接な関係は明らかだ。
古川知事に、原発の是非を論じる資格があるのか──。答えは、もちろん否である。
(後篇につづく)
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