http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/791.html
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定期点検後の今後の再稼働の政治的困難さを考えれば、廃炉もできず、稼働もできない原発が長期に渡って残存し、電力は作れないが、電気料金は高く税金も食いつぶしていく状況が一番ありそうにみえる。
http://president.jp.reuters.com/article/2011/08/24/18583A7C-CA18-11E0-969B-6E093F99CD51.php
今後、日本は原発にどのように対応すべきか、具体的なシナリオを描きながら、考察する。
一橋大学大学院商学研究科教授 橘川武郎=文 AP/AFLO=写真 平良 徹=図版作成
キーワード: ビジネススクール流知的武装講座 生活 東日本大震災 東京電力 自然・環境
福島第一原発の事故で、原発に対する社会の姿勢が問われている。今後、日本は原発にどのように対応すべきか、具体的なシナリオを描きながら、考察する。
世論調査では「現状維持」と「増やす」で7割を超える
3月11日の東日本大震災にともない発生した東京電力・福島第一原子力発電所の事故以降、わが国の世論は大きく二分され、「原発容認」と「脱原発」に割れたと言われることが多い。しかし、本当にそうだろうか。
事故後の福島原発。日本のエネルギー政策は転換を迫られている。(AP/AFLO=写真)
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事故後の福島原発。日本のエネルギー政策は転換を迫られている。(AP/AFLO=写真)
福島第一原発事故後の原発に関する世論調査で一貫して最も少数なのは、「増やす」という選択肢である。次いで少ないのが「すぐやめる」。当初最も多数であった「現状維持」は、時が経つにつれて「減らす」に追い抜かれるようになった。
多くのマスコミは、「すぐやめる」と「減らす」をまとめて「脱原発」とし、「増やす」と「現状維持」をまとめて「原発容認」としたうえで、世論が二分されていること、徐々に「原発容認」に対して「脱原発」が優勢になりつつあることを報じている。
しかし、実際の世論は別のところにある。ここで注目すべきは、「現状維持」と「減らす」の合計値がほぼ一貫して7割を超え、圧倒的多数を占め続けていることだ。「現状維持」を選んだ人と、「減らす」を選んだ人とのあいだに、大きな意見の違いはない。
いずれも、「できれば危険だから原発は使いたくないが、コスト、需給、地球温暖化問題などを考えると、ある程度使い続けなければならない」と考えている。この意見は、「すぐやめる」という「脱原発」とは異なるものであり、「脱原発依存」と概括することができる。
福島第一原発事故後の国内世論の趨勢は、「脱原発」ではなく「脱原発依存」にあるとみなすことができる。
今後の原子力発電のあり方に関しては、その危険性と必要性の双方を直視し、冷静で現実的な議論を煮詰めてゆく必要がある。
議論を深める際に出発点となるのは、「脱原発依存」を願う世論の動向をふまえ、日本における原子力発電の規模が将来的には縮小してゆくという大局観をもつことである。わが国には、現在、54基の原子力発電プラントが稼働しているが、今後、どのような原発縮小シナリオを考えうるだろうか。表1は、それをまとめたものである。
表1.東京電力・福島原発第一事故を受けた原子力発電の縮小シナリオ
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表1.東京電力・福島原発第一事故を受けた原子力発電の縮小シナリオ
原発縮小のための7つのシナリオ
この表が示すように、原発縮小シナリオとしては、
(1)福島第一原発の廃止(原子力プラント6基減少、以下同様)
(2)同じ福島県に立地し、同じ東京電力が運転する福島第二原発の廃止(4基減少)
(3)浜岡原発の廃止(3基減少。なお、すでに廃炉が決まっている浜岡原子力発電所の1〜2号機は除いてあり、同発電所については3〜5号機のみを検討対象としている)
(4)プルサーマル発電プラントの廃止(4基減少)
(5)営業運転開始後40年超の高経年プラントの廃止(3基減少)
(6)営業運転開始後30年超40年未満の高経年プラントの廃止(16基減少)
(7)全プラントの廃止(54基減少)
などが考えられる。このうち、(1)の福島第一原発廃止による6基減少は、既定事実といえる。各縮小シナリオには重複する部分があるため、その点を考慮に入れると、
・(1)と(2)の組合せでは10基
・(1)と(3)の組合せでは9基
・(1)と(2)と(3)の組合せでは13基
・(1)と(4)の組合せでは9基
・(1)と(2)と(4)の組合せでは13基
・(1)と(5)の組合せでは8基
・(1)と(2)と(5)の組合せでは12基
・(1)と(5)と(6)の組合せでは19基
・(1)と(2)と(5)と(6)の組合せでは23基
・(7)では54基すべて
の原子力発電プラントが運転を停止することになる((6)の「営業運転開始後30年超40年未満の高経年プラントの廃止」というシナリオが採用される場合には、必然的に(5)の「営業運転開始後40年超の高経年プラントの廃止」というシナリオもあわせて採用されると考えられる)。
一方、原子力発電プラントの新増設に関してみれば、現時点で多少なりとも可能性があるのは、2011年3月11日の東日本大震災発生時に建設中でほとんど完成している中国電力・島根発電所3号機と半ば完成している電源開発・大間発電所の2基にとどまる。もう1基建設中であった東京電力・東通発電所1号機については、着工開始直後で工事がほとんど進捗していないこと、工事主体が東京電力であることなどから、新設は困難だろう。
また、着工準備中で20年までに運転開始予定だった6基(東京電力・福島第一発電所7・8号機、日本原子力発電・敦賀発電所3・4号機、中国電力・上関発電所1号機、九州電力・川内発電所3号機)のうち福島第一原発の2基については建設が不可能になったし、残る4基についても新増設の目処は立っていない。
このように考えると、原子力発電に関して、20年までに9基の新増設、30年までに14基以上の新増設をそれぞれ打ち出した現行の「エネルギー基本計画」(10年策定)の実現が不可能であることは、誰の目にも明らかである。
それでは、日本の将来の電源構成は、どのようなものとなるであろうか。現行の「エネルギー基本計画」と同様に30年を対象にして、発電電力量ベースでの日本の電源構成の見通しを考えることにしよう。その際、重要なことは、原子力発電のウエートを独立変数として示すのではなく、従属変数として導くことである。
2030年の電源構成はどうなるか
日本の将来の電源構成見通しを作成する際に独立変数とみなすべきなのは、
[1]再生可能エネルギーを利用する発電の普及の度合い
[2]省エネルギーによる節電の進展の度合い
[3]IGCC(石炭ガス化複合発電)、IGFC(石炭ガス化燃料電池複合発電)、CCS(二酸化炭素回収貯留)などによる火力発電のゼロ・エミッション電源(二酸化炭素をほとんど排出しない電源)化の進行の度合い
という3つの要素である。原子力発電のウエートについては、これらの独立変数を決めたうえで、従属変数として、全体からの引き算で導くのが適切である。
[1][2][3]の独立変数は、いずれも不確実性が高く30年時点での見通しを得ることが難しい。明確な根拠はないが[1]と[2]については最大限の数値をめざすことにして、30年における発電電力量ベースでのウエートをそれぞれ30%、10%と設定することにした(発電電力量ベースでの再生可能エネルギー等の比率は07年度実績で9%であった。11年5月にフランスのドービルで開催されたG8サミットに出席した菅直人首相は、20年代のなるべく早い時期までに再生可能エネルギー利用発電のウエートを20%に高める方針を打ち出した。ここで[1]の30年における再生可能エネルギー利用発電のウエートを30%に設定したのは、07年度9%、20年代20%という上昇趨勢をふまえたものである)。
また、[3]を反映する火力発電のウエートについては、30〜40%と想定した。これらの仮定を念頭において、30年における発電電力量ベースでの日本の電源構成を見通すために作成したのが、表2である。
表2.2030年における発電電力量ベースでの日本の電源構成
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表2.2030年における発電電力量ベースでの日本の電源構成
日本にとって最適なエネルギー政策とは
表2の(1)の「原発依存シナリオ」は、現行の「エネルギー基本計画」の内容を示したものである。このシナリオが福島第一原発事故によって実現不可能になったことは、すでに指摘したとおりである。
(2)の「現状維持シナリオ」は、火力発電のウエートを30%としたケースである。このシナリオでは、30年における原子力発電のウエートは、現状と同じ30%となる。
(3)の「脱原発依存シナリオ」は、火力発電のウエートを40%としたケースである。このシナリオでは、30年における原子力発電のウエートは、現状を約10%下回る20%となる。
(4)は、原子力発電のウエートを0%とする「脱原発シナリオ」である。このシナリオでは、火力発電のウエートが60%になってしまい、燃料費等のコスト面を考えると、シナリオとしての現実性は低いと言わざるをえない。
問題は、(2)と(3)のシナリオのどちらが高い蓋然性をもつかという点に絞られるが、筆者は、今のところ、(3)の「脱原発依存シナリオ」になる確率が高いと考える。それは、「日本における原子力発電の規模が将来的には縮小してゆくという大局観」をもつことが大切だと考えているからである。
なお、筆者は最近、『原子力発電をどうするか』(名古屋大学出版会、11年8月20日刊行)を出版した。ここで述べた30年の日本における電源構成の見通しに関する詳しい説明については、同書を参照されたい。
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プロフィール
橘川 武郎
一橋大学大学院商学研究科教授
1951年生まれ。東京大学大学院経済学研究科第2種博士課程単位取得。青山学院大学助教授、東京大学社会科学研究所教授を経て、現在一橋大学大学院商学研究科教授。専攻は日本経営史、エネルギー産業論。著書に『日本電力業発展のダイナミズム』、共著に『現代日本企業』などがある。
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