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東京電力福島第1原発事故で、東電が今年4月に低濃度放射性汚染水を海へ放出した際、その手続きに関与した経済産業省原子力安全・保安院の職員の中に、近隣諸国に事前通報する必要性を認識し、指摘した人がいなかったことが、政府の「事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長)の調査で分かった。外務省も、偶然知った東電詰の職員からの連絡で初めて把握したという。事故調は、条約に基づく海外への通報義務について調べを続けているが、保安院の認識の甘さと共に、重要情報の連絡体制のあり方についての課題が浮かび上がった。
◇保安院、会見みて気付く…事故調聴取で判明
事故調では、被害拡大防止対策等検証チームが、原発事故の拡大を防ぐ事前対策の適否などを調べるため、原子力安全委員会や保安院などを対象に聴取を続け、すでに約60人から話を聴いたという。
関係者によると、3月下旬、同原発1〜3号機のタービン建屋の地下などに高濃度放射性汚染水があることが発覚。4月1日、東電などの対策チームの会議で、集中廃棄物処理施設にたまった低濃度汚染水を海に放出し、高濃度汚染水を移送する案が出されたが、強い消極意見が出ていったん消えた。しかし、低濃度汚染水を4号機のタービン建屋に移送したところ、4日朝になって3号機タービン建屋の水位の上昇が分かり、地下で通じているとみて移送を中止。東電や保安院、原子力安全委事務局が、低濃度汚染水を海に放出する準備を始めた。
保安院は同日午後3時20分までに、菅直人首相の了解と、原子力安全委の助言をへて、東電に対して海への汚染水の放出は「やむを得ないと判断した」と伝達。これを受け、東電は同3時50分に広報し、同4時から官房長官が定例の記者会見で公表した。実際の放出は同7時3分だった。
ところが、海外への事故情報の提供窓口となるはずの保安院では、汚染水の放出手続きに関与した職員で、近隣諸国への事前通報の必要性を認識し、指摘した人はなかったという。実際には、官房長官の会見を偶然見ていた保安院の国際室の職員が、放出開始の約1時間前に国際原子力機関(IAEA)に電子メールで連絡した。
また外務省も、東電の対策本部に詰めていた若手職員が、偶然見た汚染水の放出に関する東電作成の広報書類をファクスで本省に送ったことで、放出を初めて知ったという。
放出は、4月4〜10日に実施され、放出開始時に近隣諸国や地元自治体から「事前に連絡がなかった」などと批判が起きた。
毎日新聞 8月18日(木)15時2分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110818-00000042-mai-soci
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