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8月6日に放送されたNHKBS1のドキュメンタリーWAVE『「内部被曝」に迫る 〜 チェルノブイリからの報告 〜』を見たが、内部被曝とりわけセシウムの内部被曝に関する興味深いものだった。
■ 核エネルギー利用推進のため無視され続けた内部被曝
内部被曝の主要な摂取源となる放射能汚染食材については、「それくらいの量なら食べても安全」とか「直ちに健康に影響を与えることはない」と言われているが、番組は、「実態がつかめていない内部被曝」というナレーションから始まる。
そして、その事実を裏付けするように、二人の大学教授が内部被曝についてコメントする。
不思議というか面白かったのは、コメントした二人の教授の所属大学は明示されているにも関わらず、名前が伏せられていたことだ。
NHKがたぶん気を遣ったのだろうが、一人はあの長崎大教授の山下俊一氏で、もう一人は、広島大原爆放射線医科学研究所所長の神谷研二教授である。
(神谷氏については番組後半で詳細な所属と名前が示される)
長崎大教授山下俊一氏は「放射性セシウムについては今なおよく分かっていません」とコメント、広島大教授神谷研二氏は、「内部被曝は影響が必ずしもよく分かっていない。今後、健康影響に関する研究は必要になっていく」と話した。
お二人のコメント内容は、内部被曝問題を認めていないICRP、チェルノブイリ事故で放射性ヨウ素による甲状腺ガンの因果関係は認めたものの、その他の疾患は因果関係が明らかではないと影響を認めていないIAEAといった“権威ある”国際機関が見せてきたスタンスを反映していると推察する。
一躍時の人となった山下俊一氏は、とにかく国民は政府や行政の指示に従うべきと“国策第一”の構えを貫く人だから、放射性セシウムが降下している「砂場で子どもたちを遊ばせても大丈夫」とか「100mSvまでは健康にまったく問題ない」と政府の代弁者丸出しの発言をしていながら、NHKの取材に対しては「放射性セシウムについては今なおよく分かっていません」と言う姿を見ても驚きはしない。
NHKも、そのような山下俊一氏だから、名前をテロップで出すことは憚れたのだろう。
もっともらしい言葉で住民に“安心”をふりまいてくれる、政策に従順で自分たちに都合がいいからと、このような人物を重用している菅政権や福島県は度し難いほど狂っている。
政府の態度という面で、日本もそうだが、チェルノブイリ事故の責を負ったソ連政府、現在負っているウクライナ政府とも、核エネルギー利用推進の立場である。
私に言わせれば、「実態がつかめていない内部被曝」という表現はまやかしで、事実は、「実態をつかもうとされていない内部被曝」、「疾患との因果関係が避けられてきた内部被曝」と表現する方が的確なのだ。
それは、原発など核エネルギーのリスキーなかたちでの利用を続けるためのゴマカシであり詐欺とも言えるものだ。
番組の主要部分は、放射線医学研究所を辞め福島で放射性測定器を車に積んで「汚染マップ」の作成に奮闘した獨協医科大学准教授の木村真三氏が、ウクライナに渡って内部被曝の実態を調査する過程からなる。
ウクライナの実態は後ほど述べる。
木村氏の帰国後6月に札幌で開催された「チェルノブイリ健康影響研究会」では、木村氏のウクライナ報告を受けて、多くの参加者(京大の今中さんはじめ環境衛生学者、医学者など)から、データが少ない、必要なデータが不足しているとの指摘が出た。
細胞薬理学の学者からは、「細胞のなかにどれくらい溜まっているかデータが欲しい」と言われ、他の学者からは、「食事や喫煙に関するデータも欲しい」との声があった。
要は、内部被曝に関して、生体観察を含め、あまりにもデータが少ないということである。
日本でも世界でも、内部被曝の研究とりわけ生体を使った研究は、緊急度が低い割に経費がかかるということでほとんど行われておらず、日本でも70年代以降ほとんど研究されていないという。
この会議は6月に開催されているから、7月8日発覚したセシウム汚染牛のことを知らないなかでの発言である。
ウクライナで調査に奮闘した木村氏は、体内に取り込まれたセシウムがどのように蓄積されていくのかを解明することが重要だと考え、人の臓器を調べるわけにもいかないので、現地のひとに頼み豚一頭を解体しその内臓を日本に持ち帰った。
(豚のほうが牛より生物学的に人に近いとされる)
持ち帰った豚の内臓は長崎大で放射能測定された。臓器別の値は次の通りである。
心臓:16.52Bq/kg
甲状腺:13.46Bq/kg
腎臓:21.29Bq/kg
肝臓:11.19Bq/kg
大腸:11.54Bq/kg
胃:15.00Bq/kg
長崎大の分析担当者は、セシウムは生体が必要とする元素ではないので、臓器にはあまり取り込まれないだろうと考えられてきたのに、これだけの値が出ているので驚いたと語っていた。
このような研究実態からも、放射性セシウムに汚染された牛は、殺処分ではなく、飼い主の被曝に留意しながら飼育を続け観察すべきだと思っている。
日本政府は、セシウム汚染牛騒動が起きても、尿検査でセシウム汚染の有無や濃度推定ができるにも関わらず実施しようとしなかった。
それは、福島県民の内部被曝をチェックするために尿検査も行っていることと強い関係があると推測する。
内部被曝の影響はわからないというのが“定説”にも関わらず、住民の尿検査でわかったセシウム濃度については、すべて“安全”の範囲で問題ないと評価された。
しかし、汚染牛で尿検査し解体した肉や臓器のセシウム濃度を測定すれば、人と牛では生体メカニズムが違うとはいえ、尿と体内(各種臓器から細胞まで)の汚染度連関が浮かび上がってくることになる。
汚染牛の観察で、尿で100ベクレルなら腎臓には1500ベクレルといったデータが出てくると、人についても類推的に当てはめられ、大きな疑念を呼ぶことになるだろう。
政府は、肝心なことには配慮できないのにくだらないことには気を回すという態度ではなく、内部被曝に関して可能な研究は積極的に行うべきである。
政府は、国民の外部・内部それぞれの被曝をできるだけ少なくするための政策をとり、不幸にして疾患が生じたときも、あれこれ理屈をつけて原発事故とは“因果関係なし”と冷たくあしらうのではなく、あやしいものはすべて因果関係を認めるという態度で臨むべきである。
NHKや内部被曝に関心を抱いている研究者も、不幸中の幸いであるが、研究の好機が生まれたのだから、「セシウムに汚染した牛の延命と研究」を政府に強く直訴していただきたいと思う。
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■ これまでの研究でわかっている内部被曝の影響
大阪大学医薬基盤研究所の名誉教授野村大成氏が、内部被曝に関する埋もれていた研究の成果を話した。
ベータ線を出す放射性物質をマウスに注射したところ、生まれた子どもの細胞に異常が見られ、突然変異で毛の色も部分的に変わった。細胞の異常は、将来様々な病気につながると考えられている。
ベータ線は、放射能の周囲1cmに強い影響力がある。そのため、放射性セシウムを体内に取り込むと、そばにある臓器や細胞にダメージを与えると考えられている。
野村さんは、「個体レベルで、結構な高い頻度で、ベータ線は細胞の組織に障害を与える。人でも当然起こると考えられる」と説明した。
ウクライナの放射線医学研究センターのステファーノバ教授は、「長期低線量被曝による児童のミトコンドリア機能障害」という論文を発表した。
汚染地域の子どもと非汚染地域の子どもの血液分析結果を比較し、汚染地域の子どもの血液では、細胞レベルのミトコンドリアに数多くの異常が起きていることが明らかになったという。
ステファーノバ教授は、それが疲労感の原因のひとつでもあると推定している。
■ ウクライナの内部被曝が原因と見られる疾患について
木村さんは、ウクライナに調査に行ったさい、ナロジチ地区中央病院にあった未整理のカルテを数多く見つけ、それを日本に送り分析したという。
分析結果によると、心疾患が事故前の6倍に増加し、地区住民の3人に一人という割合にのぼっている。
ナロジチの病院の院長も、「自分たちの実感として、心疾患、ガンなどにかかる人が事故前に較べて大きく増加しているように思える」と語った。
ナロジチでは体調の悪化を訴える子どもたちが多いが、事故後に生まれた子どもたちは、外部被曝ではなく内部被曝の可能性が高いと考えられている。
慢性的な疲労を訴える娘さんは、白血球が正常値の半分以下の3200台で、立っているだけで強い疲労感に襲われ座り込んでしまうこともあるという。
11歳の男の子は、免疫力が低下し、急激な疲労感に襲われる症状に悩まされている。いつも眠い、疲れが抜けず、学校から帰っても横になりたがり、友達と遊びに行くのもつらい。毎日、心臓と頭が痛い。
16歳のときにチェルノブイリ事故に遇い、政府の命令で移住し、21歳のときナロジチに戻ったという41歳の女性は、9年前に突然心臓発作に襲われ、心臓に異常が起きていることがわかった。ちょっとしたことで疲れてしまう。介助がないと歩けないこともある。医者は原因はわからないという。この女性は、ホールボディカウンターで測定したところ体内セシウム濃度が1980ベクレルと評価された。
ウランの核分裂でできるセシウム137はこれまでの日本人なら測定してもゼロだが、ウクライナでは許容量範囲だという。
ナロジチ地区中央病院の院長は、「体調不良を訴える回数が年1、2回から次第に増えていき、その後、心臓の病気につながるケースを数多く見てきた。放射能の影響なのか、他に原因があるのか、残念ながら私にはわかりません」と語った。
番組にも出演していたが、ウクライナの人々に見られる症状は、広島陸軍病院の医師だった肥田俊太郎氏が命名した「原爆ぶらぶら病」に近いものである。
日本では、「原爆ぶらぶら病」とされる症状は、(原爆による)内部被曝が原因だとは認められていない。
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- <動画>NHK『「内部被曝」に迫る 〜チェルノブイリからの報告〜』 gataro 2011/8/09 20:18:56
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