「秋の収穫期が来ると大混乱が起きる」という東大の小佐古教授の言葉はあまり注目を集めなかったようですが、肉牛のセシウム汚染の原因が福島第1原発事故後も田に放置してあった稲わらだった、というニュースを聞いたときに私がすぐ思ったのは、
「もしかして牛にやらない稲わらは田んぼに鋤き込むのではないか」
ということでした。さっとネットで調べてみると、普通は秋の収穫時に干した後、牛の飼料として保存するか堆肥に仕込む、ということのようですが、但し書きとして、
「天候不順などで秋に十分に干せないときは春まで田に放置されることがある」
「鋤き込みは通常秋に行うが、春に行うこともある」
うーん、これは危ない、と思っていましたが、実際に春に鋤き込んだらしい農家の言が、フライデー8月12日号記事に掲載されていました。(記事一部転載)
見渡す限り青々とした田園風景の中で、ササニシキやコシヒカリなどブランド米の産地として知られる宮城県栗原市の米農家、佐藤護さん(77)が言う。
「この時期ににわか雨がどっと降ると、一気に穂が出てくる。あと1ヵ月もすれば収穫が始まります」
少し早い実りの秋を控えているのに、佐藤さんの表情は晴れない。栗原市や同県登米市の稲わらから暫定基準値の2.7倍超のセシウムが検出され、畜産農家だけでなく、米農家までをも混乱の渦に巻き込んでいるからだ。
「この地域では汚染米の心配をしている農家は多い。特に稲わらの収穫が遅れ、春以降も田んぼに放置していた農家は戦々恐々としています」
登米市で畜産と稲作を営む伊藤貞幸さん(63)も、不安を隠せない。
「う ちは60頭の黒毛和牛を飼っていますが、以前なら最上級のA5クラスの肉は1kg当たり2000円で売れたのに、今は1200円。A3クラスは 1kg1300円から、200円にまで値が落ちた。今は出荷を自粛していますが、肉だけならまだしも、米が気になる。(原発事故以降に)野外に放置してい た稲わらは牛の餌として使ったり、肥料のために田んぼに鋤き込んでいるので、『稲が(セシウムを)吸い上げてしまうのではないか』と不安に感じている農家 が多いんです」
やっぱり。
それだけではありません。福島県を含む東北、関東の県は、今年の作付けを行う前に田の放射性物質の測定を行い、放射性セシウムが土壌のキロあたり5000ベクレル以上のところは作付け制限したことになっていますが、その測定というのは乾いた土を測定したのでしょうか、それとも水を既に引いた田の泥で測定したのでしょうか?
宮城県の4月1日の検査には、「水田土壌、乾土」とあります。4月1日では、田んぼにはまだ水を引いていなかったのではないでしょうか。
フライデーの記事つづき:
立命館大学名誉教授で放射線防護学が専門の安斎育郎氏が言う。
「これから米の汚染は必ず出てくるでしょう。なぜもっと早く土壌だけで なく、水田の検査をしなかったのか。セシウムは水溶性なので、土壌を調べるのと、水を引いた田を調べるのではまったく違う調査結果が出る可能性がありま す。また汚染は関東、北陸、東海地方にまで拡大しているので、広い範囲でチェックを行うことが必要です。稲が吸収したセシウムは主に玄米に留まり、籾殻や 糠などに高い数値が出ます。これを精米し、白米にするとグンと落ちますが、低線量の内部被曝に弱い児童の給食などに用いられると、白血病やがんなど深刻な 疾患のリスクを高めます」
政府は1kg当たりの土壌中の放射線量が5000ベクレルを超える場合には作付けを禁止し、収穫された玄米の放 射線量が1kg当たり500ベクレルを超える場合には出荷停止の措置をとるとしているが、徹底できるのかは甚だ疑わしいし、そもそも国の基準値は低線量の 内部被曝による健康リスクを度外視した数値なのだ。
放射線専門家の皆様は、4月の上旬に政府、自治体が水田の土壌の検査をしていた時に、何をなさっていたのでしょうか?今更そんなことを言われても、もう静岡、千葉では早生米の収穫期です。
また、検査したと言う田も、各市町村で一箇所程度、しかも米を作付けする全ての市町村で検査したわけでもありません。
こうなると無能を通り越して悪意すら感じられる政府の対応、および専門家の沈黙と言わざるを得ません。
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