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記者の目:原発シンポ「やらせ」質問の保安院=足立旬子
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110804k0000m070145000c.html
毎日新聞 2011年8月4日 0時11分
◇今度こそ推進官庁から独立を
国主催の原発シンポジウムで、規制官庁の経済産業省原子力安全・保安院が電力会社に、原発推進に有利な「やらせ」質問や動員を要請したとされる問題は、国民の原子力行政への信頼を失墜させかねない深刻な事態だ。安全を担う規制官庁の独立性、客観性が疑われるようでは、停止中の原発の再稼働はおろか、原発の存在自体に国民の納得や支持は到底得られない。政府は保安院を、原発推進側の経産省から分離独立させる案を検討しており、今度こそ形ばかりの組織再編に終わらせてはならない。保安院が推進側と一体化して安全規制を形骸化させてきた実態を解明し、うみを出し切るべきだ。
保安院の「やらせ」問題は皮肉にも、九州電力による玄海原発再稼働を巡る「やらせメール事件」を機に、保安院自身が調査を指示した結果、7月29日、電力会社が暴露する形で判明した。舞台になったのは、中部電力浜岡原発(静岡県)と四国電力伊方原発(愛媛県)での、プルサーマル計画に関するシンポジウム。使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、ウラン燃料と混ぜて使う同計画に関して07年と06年に地元で開かれた。
◇規制強化で設立、実際は甘い姿勢
電力会社は、「やらせ」を指示した保安院職員名を特定していることも明らかにした。ところが、保安院は急いで電力会社や職員への聞き取りなど真相究明に取りかかることもなく、調査する第三者委員会の設置だけが決定。進退や責任について「調査結果を踏まえて判断する」(寺坂信昭院長)と明言を避けた。
寺坂院長は東京電力福島第1原発(福島県)事故後、ほとんど会見に応じていない。この日も当初は会見を拒否し、記者からの強い求めでようやく午後9時半に姿を現した。しかも、会見冒頭の発言は、これより前に会見した海江田万里経産相の言葉とほとんど同じ。規制官庁のトップが進んで説明責任を果たそうとしない姿は、保安院の置かれた立場を物語っている。
保安院は、核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO=茨城県)の臨界事故(99年)を教訓に、原子力規制を強化する目的で、01年の省庁再編に合わせて発足した。原発推進側からの独立が焦点だったが、経産省資源エネルギー庁の「特別機関」と位置づけることで独立性を確保できるとして、結局推進官庁内にとどまった。経産省本省や資源エネルギー庁との人事交流も当然のように行われてきた。
実際に、発足直後から電力会社に甘い姿勢がたびたび批判されてきた。02年に発覚した東電のトラブル隠しでは、内部告発を1年半公表しなかった。07年に全国の原発で発覚した臨界事故隠しなどの重大な不祥事でも、運転停止処分を見送った。同年、国際原子力機関(IAEA)は日本に対し、経産省から保安院を独立させる法的措置を助言したが、独立を明記した報告書をIAEAに提出したのは、福島第1原発事故後だった。
◇専門家の育成と活動検証が必要
やらせが発覚したシンポジウムでは、資源エネルギー庁担当者がプルサーマル発電の必要性を強調した後、保安院担当者が安全性を約束した。原子力政策に詳しい吉岡斉九州大副学長は「プルサーマルは経産省が主導している。保安院も主人公という意識が働き、不利な材料をつぶそうとしたのではないか。資源エネルギー庁と保安院の二人三脚構造が問題で、解体的な組織再編が必要。全国で開催されたプルサーマル関係の集会について、保安院が発足した01年までさかのぼって検証すべきだ」と指摘する。
また、福島第1原発事故をめぐる保安院の発表は、東電のデータをそのまま伝えるケースが目立つ。その背景に専門家不足があるとの指摘もある。保安院の職員は約800人いるが、ガスや鉱山関係も含まれ、原子力規制に関わるのは約330人に過ぎない。城山英明東京大教授(行政学)によると、内閣府原子力安全委員会や文部科学省、原子力安全基盤機構や日本原子力研究開発機構などの独立行政法人に原子力関係の人材が分散している。合計で1700人になるといい、城山教授は「一体的に人材を育成し、統合された規制機関に集中させるべきだ」と指摘、専門家不足の解消を訴える。
保安院内部からも「原発の稼働率を上げるための安全規制になっていなかったか」と反省の声が聞かれる。保安院の分離独立は当然だが、それだけでは不十分だ。原子力行政が、いかにゆがめられてきたかを検証した上で、真の独立性と専門性を確保して再出発しなければ、10年前の保安院発足時と同じ過ちを繰り返すだろう。「名ばかりの独立」の解消が、信頼回復への唯一の道だ。(東京科学環境部)
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