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記者の目:玄海原発2、3号機の再稼働問題=阿部周一
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20110802k0000m070140000c.html
毎日新聞 2011年8月2日 0時03分
佐賀県玄海町の九州電力玄海原発2、3号機を再稼働させるべきか。真夏の電力ピークが迫る中、全国に先駆けて議論の的になったこの問題は、菅直人首相が安全評価(ストレステスト)を突然持ち出したことで秋以降に持ち越された。安全対策もそこそこに、遮二無二再稼働を目指そうとした拙速に「待った」が掛けられたのは当然だが、一方で、このままでは年度末までに全国の原発がすべて停止する。周辺自治体や住民の、政府と電力会社への不信感が一連の「やらせ」で極まる中、事態打開には、脱原発の道筋を具体的に示す以外にない。その第一歩は老朽炉の停止だと思う。
◇早期の再開を容認する構図
再稼働を巡るなし崩し的な動きには疑問ばかりが募った。7月1日、佐賀県議会でこんなやり取りがあった。やり玉に挙がったのは、九電が福島の事故を受けて実施した緊急安全対策。全電源が途絶えても蒸気で給水ポンプを動かし、原子炉を冷やすという計画を巡る質疑だ。緊急時には、このポンプが唯一の頼みの綱になる。
県議「ポンプも壊れたらどうなるのか?」
県幹部「過去に故障したことがない。信頼性は高い」
この答弁に、県議が「そのような考えで、福島では全電源喪失に至ったのではないか」とかみついたのも無理はない。県側は答えに窮した。その2日前、「安全性の確認はクリアした」と再稼働容認を打ち出したばかりの古川康知事は「何も安全対策が100点満点とは言わない」としどろもどろ。傍聴席からはため息と失笑がもれた。
夏の電力供給不安を盾に、経済産業省や電力会社が早期再稼働を迫り、原発マネーで潤う立地自治体はやすやすと容認に流れる−−そうした構図は、少なくとも九州では福島の事故後も変わっていないようにみえる。
ただ一方で、「玄海原発1、4号機は現に動いている。なぜ2、3号機ばかり問題視するのか」(佐賀県幹部)という疑問も、ある意味でうなずける。再稼働の是非論は原子力安全・保安院が打ち出した緊急対策が有効か否かという議論に矮小(わいしょう)化されがちだ。全国の54基を見渡して、ここは当面動かす、ここは止めるという冷静な戦略が求められるが、そうした方向は、政府からは示されていない。
◇圧力容器劣化の老朽炉まず停止
そこで判断材料の一つになるのが原子炉の老朽化だ。
例えば玄海1号機。75年に操業開始し、現在も稼働中だ。この古い原発の圧力容器が異常に劣化している。容器内壁が中性子を浴びてどれだけもろくなったかを示す指標「脆性遷移(ぜいせいせんい)温度」が、09年4月の計測時点で国内最悪を記録し、九電の従来の想定を大きく超えて劣化していることが明らかになったのだ。井野博満・東大名誉教授(金属材料学)は「緊急時に急激に冷やすと容器が割れる恐れがある」と指摘する。原発容認派が多い佐賀県議会や玄海町からも、1号機については「廃炉も検討すべきでは」との声が上がる。
井野名誉教授によると、想定を超えた老朽化は日本原電敦賀1号機(福井県、70年操業開始)でも認められる。そもそも原発の寿命は30年とされてきたが、今は倍の60年まで持たせようとしている。減価償却が済んだ後の原発は電力会社にとってドル箱になる。が、圧力容器を交換する技術はないから中性子による劣化は回復しようがない。複数の老朽炉は前回の計測から既に10年以上経過しており、それらを調べ直さずにストレステストをしても、一体何が分かるのだろう。
原発林立前夜の光景を振り返ってみたい。73年11月、九電は玄海1号機の操業開始を控えて原発敷地内で「質問に答える会」を開いた。約20人の住民が集まったが、当時、誰も原発の知識をほとんど持ち合わせていなかった。
中学教諭だった玄海町の坂本洋さん(77)は、「放射能は外に出ない」と繰り返す九電社員が、原子炉建屋の設計図に記された煙突形の設備について尋ねられた場面を覚えている。社員は長く黙り込んだ末、小さな声で「排気筒です」と明かした。フィルター越しに放射性物質を含んだ気体が放出されることすら国民は知らされていなかった。
国民不在のまま原発は船出し、刻一刻、寿命とされた年限を超えて老朽化が進んでいる。運転30年を過ぎた原発は国内に19基ある。菅内閣は「2050年までに減原発」という長期方針を掲げたが、具体的手順を示さなければ、単なる問題の先送りだ。
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