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牛肉だけじゃない 「いま福島県で起きていること」 新聞・テレビがパニックを恐れて 報道を自粛する
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/13863
2011年08月01日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
「福島の食い物なんて誰も買わんよ。俺だって、自分の子には食わせないもん」福島県内のある農家の男性が、ふと漏らした言葉だ。表立っては語れない、生産者だからこそ知っている真実に迫った。
■市民が作った放射能測定所
「こっちだって、危ない牛の肉は誰にも食べてほしくないし、出荷したくない。県のほうで検査して、大丈夫だって言うから売ったんだ。でも、一頭でも放射能にやられた牛が出たら終わり。この前、県の職員たちがうちで飼料に使っている稲わらを調べに来て、『基準値以下だから大丈夫です』って言ってたけど、結局、出荷できねぇんだろ。福島牛はこれで全滅かもな」
福島県相馬市の肥育牛農家の男性は、あきらめた表情でそう呟いた。
国が定めた放射能汚染の基準値を超える稲わらを食べた、いわゆる「セシウム汚染牛」問題は、あっという間に全国に広がった。7月8日に東京・芝浦と場で第1例が見つかって以降、10日余で、汚染牛の流通が確認されていないのは全国でわずか2県のみになってしまった(鳥取、沖縄。7月21日現在)。
'01年のBSE(狂牛病)問題を受け、すべての牛に個体識別番号が付けられるようになり、スーパーなどで買った牛肉も、ラベルに記載された番号をインターネットで検索すれば、誰でも生産地を調べられる。新聞・テレビは、それを強調し、まるで汚染牛がすぐ見抜けるかのように報じている。ただ、宮城県や岩手県でも基準値超えの稲わらが見つかり、それを他県の畜産業者が購入していたように、もはや生産地がわかったところで、気休めにもならない。二言めには「風評被害を招くから」と、もっともらしい理由を挙げ、パニックを恐れて「不都合な真実」は報道を自粛するという姿勢は、無責任な国と同じだ。
どうすれば我が家の食卓を守れるのか。その思いは、原発事故の被害にさらされながら、あたかも放射能をバラ撒く元凶のような扱いを受けている福島県に住む人々も同様である。
7月17日、福島市内の福祉総合施設「福島テルサ」に、野菜、果物、牛乳などを手にした人々が集まっていた。この日、福島市民有志が立ち上げた「市民放射能測定所」がオープンし、一般の人々が持ち込んだ食品の放射線量を先着順で測定すると告知されていたからだ。
家庭菜園で栽培したタマネギを測定してもらった白石章さんが語る。
「自分で作っていた野菜を測定してもらおうと思ったのは、この野菜が食べられるかどうかを確認するためではありません。『福島で作った野菜は食べられない』ということを確認しようと思ったからです。私には娘と孫がいますが、同じ福島市内に住む娘に、孫たちを避難させるように言っても、なかなか納得しない。今回の測定ではっきりした数値が出れば、さすがに孫たちを避難させるだろうという思いもありました」
タマネギの測定結果は、4ベクレル(1kg当たり。以下同)。ドイツ製の「LB200」という測定機器は、ガイガーカウンターより精密な測定が可能だが、20ベクレル以下の低線量では誤差が出やすく、それを加味すると最大で14ベクレルになるという。国の基準値は500ベクレルだから、数値としては基準値をかなり下回っている。
だが、以前は高校で物理の教師をしており、原子力や放射能汚染についての知識も豊富な白石さんは、こう続けた。
「国の基準値より低いからといって、安全だとは思えません。低線量被曝による健康被害にはわからないことがたくさんありますから。だいたい、日本の基準値は、たとえばチェルノブイリ事故で被害を受けたベラルーシと比べると5倍も甘い。政府が繰り返す『安全』を信じていたら、孫の命が縮まってしまう」
■タケノコ、ビワからも
白石さんと同じく、測定を依頼しに訪れた人物に、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」世話人の佐藤幸子さんがいる。佐藤さんが持参したのは、タケノコ、ビワなど。市内で採れたタケノコからは生の状態で1264ベクレル、茹でた状態でも799ベクレルと、基準値を大きく上回った。いまが旬のビワも約700ベクレルの数値が出たという。
「この辺りではタケノコなどは、みんな平気で食べていました。私は山菜類は数値が高いだろうと思っていましたが、それでも予想以上でしたね。
実は学校給食がどれくらいの数値かも測定してもらったんです。メニューはハンバーグに付け合わせの野菜、スープとご飯、それと牛乳です。これらを混ぜて測定してもらったら、約40ベクレルという結果でした。給食は子どもたちが毎日のように食べるものですから、カロリー表示と同じように、ベクレル表示もすべき。食べていいかどうかの判断は、それぞれのご家庭がすべきですが、判断材料は提示してもらいたいですね」(佐藤さん)
本誌記者も福島市内のスーパーで購入した牛肉と豚肉、卵を測定してもらった。スーパーによると、牛は青森県産、小間切れの豚肉は、複数の産地の豚肉を混ぜるので、「国産」ということしかわからないという説明。その測定結果は牛肉が18ベクレル、豚肉が24ベクレル、卵が11ベクレルという値だった。
もちろん、いずれも基準値以下である。だが、本来、食品からセシウムなどの放射性物質が検出されること自体が問題なのだ。
「郡山市では50万ベクレルという汚染値の稲わらが見つかった。そのわらが置かれていた周囲も相当汚染されているし、すぐにこのわらを扱った人たちの被曝線量を調査したほうがいい。食品について言えば、消費者にとって汚染ゼロがいいのは当然ですが、これだけ大規模に放射性物質が拡散した以上、すべての食品が汚染されてしまったと考えて対処しなければなりません。飲食店には1食あたりの汚染量の表示も義務づけるべきです」(立命館大学・安斎育郎名誉教授)
たとえ基準値以下でも、日々の食事を通して内部被曝は確実に進んでいる。特に子どもたちには、少しでも汚染が少ないものを食べさせる必要がある。
NPO法人「日本消費者連盟」代表運営委員の富山洋子氏が言う。
「私たちのところにも、親御さんから、食品の被曝検査ができないかという問い合わせが多い。こちらでは検査ができないので、民間機関を紹介していますが、そこではこれまで約1200件の検査依頼があり、肉・魚・野菜など、検査したほぼすべての食品で放射性物質が検出されたそうです」
■すでに流通している
チェルノブイリ事故後、日本では輸入野菜について370ベクレルという基準値を設けた。今回の基準値は、原発事故後に泥縄式に決めたものだが、同じ野菜でも500ベクレルと、なぜか輸入野菜より甘めに設定された。
では、福島県内で肉や野菜、米、牛乳などを作っている生産者たちは、自らが作る食品の安全性について、どう考えているのか。本誌は様々なジャンルの生産者たちに本音を聞いた。
最初に断っておくが、冒頭に紹介した肉牛を除けば、今のところ≠キべて基準値以内で安全というお墨付きを得ている食品の生産者たちだ。つまり、彼らが作ったものはすでに流通しているか、これから流通することになる。
まずは4月半ばから段階的に出荷制限が解かれた原乳について、乳牛を飼育している酪農家に聞いた。
「毎朝搾りたての牛乳を一煮立ちさせて飲むのが日課でしたが、事故のあとは止めています。今回のセシウム騒動は人ごとではない。うちではオーストラリア産のわらを使っていますが、わらを置いている倉庫は開放式で、戸外から空気が入ってくる。放射能を完全に防ぐのは無理です。もし、原乳からセシウムが(基準値を超えて)出たらどうしようかと不安です」
次に養鶏業者。
「うちの飼料は基本的に輸入モノで、タンクに入れて密閉するから大丈夫だと思います。また、鶏自体はケージで飼っているから土壌汚染の影響も受けない。むしろ、地鶏が心配だね。平地で放し飼いだから、その辺の草も食べる。鶏なんていったん放射性物質を体に取り込んだら、すぐに卵に出てしまう。そういう放し飼いをしている業者から肉や卵の汚染が発覚したら、違う飼い方をしていても影響をもろに受けてしまう」
一方、県内のある地鶏業者は「地面に石灰を撒いて、その上にビニールシートを敷き、さらに籾殻を敷いている。今使っている籾殻は昨年収穫されたものだから問題ない」と語った。
確かにこの地鶏業者は、鶏をビニールハウス内で飼うなど、かなり防御策を取っていたが、すべての業者が同じような対策を取っているわけではない。また、当初は安全と思われていたビニールハウス栽培の野菜でも、7月15日に福島県は、伊達市と本宮市で、椎茸から基準値を超えるセシウムが検出されたと発表した。ビニールハウスは安全だと思っていた生産者たちに与えた衝撃は大きかった。
養豚業者も、牛と違って飼料は輸入物が大半で、密閉管理しているので、エサから放射性物質を取り込む心配はないと語る人が多い。ある養豚業者は「ほとんどの業者は、水道水はカネがかかるから、敷地内に掘った井戸水を豚の飼育に使っている。特に調べていないけど、地下水は大丈夫だろう」と語っていた。
日本環境学会元会長の畑明郎氏が、地下水汚染についてこう言う。
「原発事故現場の地下を調べれば、すでに地下水にも汚染が進んでいることが明らかになるでしょう。地下水脈の調査は大がかりなものになり、民間レベルや県レベルでは無理。環境省にはすぐ調査すべきだと言っているのですが、動く気配がない。今後、水の汚染は再び大きな問題になる」
■一番心配なのは「米」
県内を移動中、二本松市内で、田んぼに農薬を撒いている米農家の男性に会った。福島県内では地区によって米の作付けを見送ったところもあるが、この男性のところでは例年通り作付けをした。
「どうせ福島産なんて売れないだろうけど、長年の習慣だからね。うちの稲は国の基準もクリアしてるし、俺はもう60歳を過ぎてるから米ができれば食べるけど、この米を孫に食わそうとは思わんね」
伊達市内の米農家の男性の話はさらに深刻だった。
「うちの田んぼは阿武隈川の支流から水を引いているんだけど、県の指導では阿武隈の川魚は捕ることも出荷することも禁じられている。そんな水を使って米を作ってもいいのか、県にも農協にも聞いたけど誰も教えてくれん。出荷直前に本格的な調査をすると言っていたけれど、危ない米をわざわざ作りたくはないよ」
米は9~10月に収穫期を迎える。溜め池の水を使っている農家も多く、畜産関係者からも「一番心配なのは米」という声が聞かれた。
そもそも、セシウム汚染牛も福島県の抽出検査で発見できなかったように、検査態勢は到底万全とは言えない。県内に食品の放射能汚染を本格的に計測できる機器は6台。この6台で、計画的避難区域と緊急時避難準備区域の肉牛の全頭検査を行うだけでも不可能に近いのに、野菜、米などの検査も同時に進めなければならない。こちらは当然、サンプル検査で、先に挙げた椎茸のように、出荷後になって危ない物が見つかるケースは防ぎようがない。
梨農園の女性は、「8月になれば出荷するけど、お得意さんから『今年も買うから送って』と電話があって、お得意さんだけに本当に送って大丈夫なのか・・・」
と漏らした。この言葉は福島県内のあらゆる食品生産者の複雑な心境を端的に表している。
いつか自分のところや同業者から放射能汚染食品が出るかもしれないと不安を抱え、知り合いや得意客に食べさせるのは気が引ける。でも、国の基準値をクリアしている以上、生活のために出荷を続けざるを得ない。
新聞やテレビが、こうした生産者たちの本音を伝えることはない。だが、消費者が一番知りたいのは、作り手が売るのをためらうような食品が食卓に並んでいるという事実ではないだろうか。
「週刊現代」2011年8月6日号より
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