http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/142.html
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「核燃料のメルトスルー放っておくと…地下水まで突き抜けず固まる (MSN産経)」(
http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/133.html)という放っておけない記事が出ているので一言。
記事の概要(主旨)は、福島第一でメルトダウンやメルトスルーは起きているが、コンクリートや注水で防止されているから、溶融燃料が地下深くまで落ちる“チャイナシンドローム”は起きていないというものだろう。
原発推進派として八面六臂の活躍を見せている奈良林教授と重鎮とされる宮崎名誉教授が、その理由をもっともらしく説明しているが、その説明を否定する肝心な出来事をまったく無視したひどいものである。
肝心な出来事とは、5号機と6号機の原子炉及びタービン建屋の地下に湧き出ている大量の汚染水である。
放射能汚染水であることやその量の多さから、1号機から3号機のいずれか(全部かもしれない)の原子炉に注入された水が、原子炉建屋の底から“チャイナシンドローム”の穴を通って透水層に流れ落ちることで押し出されて湧き出たと推定できる。
(福島第一の地下水脈はわからないので、全部の汚染水が5号機・6号機の建屋地下に湧き出ているとは言えない。1号機から3号機の建屋で湧き出ていても格納容器からの漏れと区別がつかない)
東電と政府は、ふざけたことに、6月22日までは湧出している汚染水の量が推測できる仮設タンクへの移送量を示していたが、その後は、移送を続けている(汚染水の湧出があるという意味)にもかかわらず、その事実だけを記述しその量は伏せている。
末尾で汚染水の汲み出し経過の一覧を引用することにして経過を簡単に示す。
● 4月4日から9日のあいだサブドレインピットに集められた低レベル汚染の「地下水」を放水口経由で海に放出:5号機(約950トン)・6号機(約373トン)・合計約1,323トン
※ かつては、その水が津波の影響で溜まった海水かもと思っていたが、「地下水」と明示しているので、1号機から3号機の溶融燃料に関わる汚染水だとわかる。
● 3月27日から6月22日までのあいだで仮設タンクなどに移送された量は5・6号機合わせて11,455トンである。
海に捨てた分とタンク類に移送した分を合わせると12,778トンだから、1日平均145トン以上の湧出ということになる。
原子炉1基あたりの注水量(1日)は、100トンから250トンほどだったから、1基分がまるまる地下水脈に流れ込んでいるとも言える。
※ 「1号機格納容器損壊と地下水汚染について」(http://www.asyura2.com/11/genpatu11/msg/718.html)では、1日あたり100トン以上と推定した。
産経の記事内容に関して少しコメントしたい。
【引用】
「北海道大学の奈良林直(ただし)教授(原子炉工学)は「欧米で懸念されたように圧力容器の底が一気に抜け落ちるというより、溶けた燃料がパイプを伝わって赤い雨のように音もなく落ちていったと考えられる」と話す。 」
【コメント】
もっとも弱い“環”から壊れるものなので、底部を貫いている制御棒挿入管や中性子束計測管からメルトスルーが始まると考えていいだろう。
しかし、一気に抜け落ちたかダラダラと抜け落ちたかの違いは、その後の推移に大きな違いを生むわけではない。
イメージとしての怖さを軽減させる説明なのだろう。
奈良林さんは、事故後まもなく何度か出演したテレビ番組で、圧力容器や格納容器の閉じ込め機能が失われることはないと説明していた。その落とし前をつけてから新しい発言をして欲しいものだ。
【引用】
「 圧力容器の下には、容器を支えている「ペデスタル」と呼ばれるコンクリート製の構造物がある。コンクリートは鉄より熱に強いため、大阪大学の宮崎慶次名誉教授(原子力工学)は「溶けた核燃料は、ペデスタルのコンクリートの上で冷えて固まっている状態ではないか」とみている。 」
「 奈良林教授も、86年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故の例を挙げ、「チェルノブイリでは、何の対処もできず、(溶けた核燃料が)コンクリートの床部分に広がった」と指摘。これと同様に「コンクリート上に水平に広がるうちに冷え固まり止まるだろう」との見方を示した。」
【コメント】
鉄より熱に強くさらに強化もされているコンクリートだが、2300℃ほどで熔解する。溶融燃料は2800℃あたりまで達していたのでコンクリートをも溶かす。
それ以前に、高熱にさらされたコンクリートは、その性能の基礎である水分が蒸発し、ぼろぼろの状態になって役割を果たせなくなる。
【引用】
「 宮崎名誉教授は「水を掛けて冷却しなければ、溶けた燃料が外まで突き抜ける『チャイナ・シンドローム』と呼ばれる現象も起きかねなかった」と指摘した上で「水を掛ければ、それ以上進展することはなく、今回の事故の対策として水を掛け続けた措置は極めて重要だった」と説明する。 」
「 宮崎名誉教授は「地下深くまで行くわけではなく、自然に放熱され、どこかで冷え固まる。噴き出した溶岩が自然に固まって止まるのと同じだ」と指摘する。
特に原子炉は、高い耐震性を維持するため、鉄筋とコンクリートでできた地中の分厚い「人工岩盤」の上に建てられており、「地下水まで突き抜けるものではない」と分析する。 」
【コメント】
元のスレッドのコメント欄にも書かれているが、一般の燃焼と性質が違うのが放射性物質の崩壊熱や臨界であり、だからこそいったん事故が起きると収束の見通しがつかないのである。
何より、「水を掛ければ、それ以上進展することはない」というのは、現実の経緯をまったく無視した絵空事である。
メルトダウンそのものの理由が炉心の露出(水なし)であり、注水もなく空だきになったからメルトダウンし、そのまま間を置かずにメルトスルーしたのである。その勢いで、格納容器底部のコンクリートを溶かし、地中まで落ちていっても何ら不思議ではない。
注水も出来ず原子炉に水がなくなったために起きた過酷事故であることを無視し、ある程度落ち着いてから始まった注水を説明の根拠にするのでは、まともな学者とは言えない。
(3月11日から1週間ほどは、“緊急”注水さえ途中何度か停まっている)
宮崎名誉教授は、コンクリートで止まると説明しながら、「地下深くまで行くわけではなく」と、溶融燃料が地下まで突き抜ける可能性は認めている。
「地下水まで突き抜けるものではない」と分析しているのなら、5・6号機の建屋地下に湧き出ている放射能汚染水がどこから来ているのか、きちんと説明しなければならない。
【引用】
「 チャイナ・シンドロームのような最悪の事態を避けるために続けられている水による冷却作業だが、蒸発した水蒸気で大気が汚染されることはないのか−。
宮崎名誉教授は、事故当初であれば、放射性物質が「多少は水蒸気に付いて運ばれる可能性がある」としながらも「海水が蒸発してもほとんど塩分を含まないように、水素爆発が起きたときのように放射性物質が周囲にまかれるような状況ではない」と解説する。」
【コメント】
これは、同じ記事に出ている奈良林先生に反論して欲しい話だね。
奈良林教授は、NHKのシリーズ原発第3回の討論に出演し、「とにかく、原子炉を100度以下に冷却するのが急務である。100度を超えていると放射性物質を含む蒸気が出続けることになる」と力説していたよ。
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■ 5号機・6号機の建屋に湧き出ている汚染水の状況
「地震被害情報(第213報)(7月28日12時00分現在)」P.25からP.31より引用
http://www.meti.go.jp/press/2011/07/20110728009/20110728009-3.pdf
・5号機及び6号機サブドレンピットにある低レベルの施設内で集水・管理さ
れた地下水を放水口経由で海へ放出(5 号機 4 月5 日17:25〜4 月8 日
12:14(約950t),6 号機 4 月4 日21:00〜4 月9 日18:52(約373t))
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約100m3)を復水器へ移送(4 月19 日
11:00〜15:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約120 m3)※を仮設タンクへ移送(5
月1 日14:00〜17:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約222.3m3)※を仮設タンクへ移送(5
月2 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約124.1m3)※を仮設タンクへ移送(5
月3 日14:00〜17:00)
・5号機タービン建屋地下の溜まり水(約600m3)について、復水器への移送作
業を実施(3 月27 日〜5 月2 日)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約111.7m3)※を仮設タンクへ移送(5
月6 日14:00〜17:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約184.1m3)※を仮設タンクへ移送(5
月7 日10:00〜15:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約94.7m3)※を仮設タンクへ移送(5
月9 日14:00〜17:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約118.2m3)※を仮設タンクへ移送(5
月10日10:00〜16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約10 m3)を同号機廃棄物処理建屋へ
移送(5 月10 日11:00〜12:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約118.9 m3)※を仮設タンクへ移送
(5 月11 日10:00〜16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約10 m3)を同号機廃棄物処理建屋へ移送(5 月11 日11:00〜12:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約116.9m3)※を仮設タンクへ移送(5
月12 日10:00〜16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約7.5 m3)を同号機廃棄物処理建屋へ
移送(5 月12 日10:30〜12:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約102.2 m3)※を仮設タンクへ移送
(5 月13 日10:00〜15:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約3.3m3)を同号機廃棄物処理建屋へ
移送(5 月13 日11:30〜12:15)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約96.3 m3)※を仮設タンクへ移送(5
月14 日10:00〜15:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約94.3 m3)※を仮設タンクへ移送(5
月15 日10:00〜15:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約76.6 m3)※を仮設タンクへ移送(5
月16 日10:00〜14:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約75.3 m3)※を仮設タンクへ移送(5
月17 日10:00〜14:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約83.6 m3)※を仮設タンクへ移送(5
月18 日10:00〜14:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約10.5m3)を同号機廃棄物処理建屋へ
移送(5 月18 日10:30〜12:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約45.3m3)※を仮設タンクへ移送(5
月21 日14:00〜18:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約201.0m3)※を仮設タンクへ移送(5
月24 日9:00〜19:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約378.0m3)※を仮設タンクへ移送(5
月25 日9:00〜19:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約378.0m3)※を仮設タンクへ移送(5
月26 日9:00〜19:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約381.5m3)※を仮設タンクへ移送(5
月27 日9:00〜19:00)
※移送量については、流量×時間から水位の変化量による値に変更
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約382.2m3)を仮設タンクへ移送(5
月28 日9:00〜19:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約12m3)を同号機廃棄物処理建屋へ移
送(5 月28 日10:20〜12:10)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約378.4m3)を仮設タンクへ移送(5
月29 日9:00〜19:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約250.7m3)を仮設タンクへ移送(5
月30 日10:00〜17:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約5,298.1m3)を仮設タンクへ移送
(6 月2 日14:00〜6 月8 日18:00(一時停止6 月5 日14:00〜14:45))
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約17m3)を同号機廃棄物処理建屋へ移
送(6 月8 日10:05〜12:40)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約271.3m3)を仮設タンクへ移送(6
月9 日9:00〜18:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約199.6m3)を仮設タンクへ移送(6
月11 日10:00〜15:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約147.1m3)を仮設タンクへ移送(6
月12 日10:00〜15:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約112.3m3)を仮設タンクへ移送(6
月13 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約57.6m3)を仮設タンクへ移送(6
月14 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約52.6m3)を仮設タンクへ移送(6
月15 日10:00〜16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水(約15m3)を同号機廃棄物処理建屋へ移
送(6 月15 日11:55〜14:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約55.7m3)を仮設タンクへ移送(6
月16 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約42.9m3)を仮設タンクへ移送(6
月17 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約60.5m3)を仮設タンクへ移送(6
月18 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約59.7m3)を仮設タンクへ移送(6
月19 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約63.5m3)を仮設タンクへ移送(6
月20 日10:00〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約71.3m3)を仮設タンクへ移送(6
月21 日10:00〜16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を同号機廃棄物処理建屋へ移送(6 月21
日11:05〜13:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水(約44.3m3)を仮設タンクへ移送(6
月22 日10:00〜16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を同号機廃棄物処理建屋へ移送(6 月28
日11:00〜13:20)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月1 日10:00〜
7 月3 日16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月4 日10:00〜
16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月5 日10:30〜16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月6 日10:00〜
17:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を同号機廃棄物処理建屋へ移送(7 月6
日8:45〜10:50)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月7 日10:30〜16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月8 日10:30〜
16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月9 日10:30〜
16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月11 日10:30
〜16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月8 日10:30〜
16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月9 日10:30〜
16:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月11 日10:30
〜16:30)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を同号機廃棄物処理建屋へ移送(7 月13
日8:40〜10:50)
・6号機のタービン建屋地下の滞留水を移送し溜めていた仮設タンクからメガ
フロートへ移送(7 月13 日10:00〜17:00)
・6号機のタービン建屋地下の滞留水を移送し溜めていた仮設タンクからメガ
フロートへ移送(7 月14 日10:00〜17:00)
・6号機のタービン建屋地下の滞留水を移送し溜めていた仮設タンクからメガ
フロートへ移送(7 月15 日10:00〜17:00)
・6号機のタービン建屋地下の滞留水を移送し溜めていた仮設タンクからメガ
フロートへ移送(7 月16 日10:00〜15:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を同号機廃棄物処理建屋へ移送(7 月18
日9:00〜10:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月21 日11:00
〜7 月22 日18:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月23 日11:00
〜18:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月24 日11:00
〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月26 日11:00
〜7 月27 日16:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を同号機廃棄物処理建屋へ移送(7 月26
日11:00〜12:00)
・6号機の原子炉建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月27 日8:45〜
11:20、13:00〜13:30)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送(7 月28 日11:00
〜16:00)
・6号機のタービン建屋地下の溜まり水を仮設タンクへ移送開始(7 月29 日10:00〜)
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