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http://news.livedoor.com/article/detail/5741097/
激しく対立している様に聞こえる「脱原発論」と「原発肯定論」だが、今回の原発事故の主因が無策、無能、無責任な構造に加えて、当事者意識と当事者能力のない行政と東電ののリーダーシップの混乱にあると指摘する点や、今後の電力対策として、発電と送電を分離した「スーパーグリッド」や再生可能エネルギーへの投資を拡大すべきと言う点では一致している。
違いと言えば、原発肯定論の多くが客観的データを基に現実的な問題を論じているのに対し、脱原発論は凡そ日本の国情とは比較にならないドイツの例を挙げて「2020年で原発をゼロにし、しかも温暖化ガスの25%削減も可能だ」と主張するなど、浮世離れした「市民運動家」の夢物語に過ぎない事だろう。(ドイツは、少し財政事情が悪化すると付加価値税率を16%から19%に、所得税の最高税率を42%から45%に引き上げて再生エネルギーのコストを補い、更なる電力不足は原発大国のフランスからの輸入に頼る国である)。
日本経済の危機は多くの場合、エネルギーの危機で誘発されて来た。1970年代の2度にわたる石油危機を契機に、電源の脱石油化と多様化に踏み切った日本は、石油火力に代わる電源として、原子力発電と天然ガス火力の導入を積極的に進めた。
然し、その後の地球温暖化の深刻化で求められた「脱化石燃料」対策は、国民生活と直結するだけに簡単ではなかった。そこで選択したのが、クリーンで安定供給可能な原発であり、安定供給に不安を残す再生可能エネルギーと核融合エネルギーは、開発努力を重ねると言う選択をした。
「物作り日本」と言うが、雇用確保を軸足に置いて大量生産に偏る日本の物つくりは、安価で安定したエネルギー供給無しには成立しない。又、大量生産に傾斜する限り、ドイツ製品のように品質の良さを価格に転嫁できず、自動車の性能比較でも、スピード、スポーツ性、高級化などでドイツより低い評価の現状は打破できない。
日本が先端技術の宝庫だと自認しているとすれば、それも今や神話に過ぎない。IT技術、宇宙航空、医療分野では米国の遥か後塵を拝している。日本が誇った生産性も、付加価値の高い先端産業に注力する米国に比べると、6割程度に過ぎない。
日本が成長力を失い、長期停滞に陥った原因は古くは1956年や2,000年の経済白書が指摘している様に「苦痛を伴っても、自らの改造をする過程」をさぼったからに他ならない。その結果、先進国との質的技術水準に差をつけられ、途上国との間の工業生産の量的開きも逆転してしまったのである。
それでも尚、日本の政治情勢は成長政策より再分配に軸足を置き、国債残高が千兆円を超える財政危機に直面しても、官僚制度の改革や消費税率改正を拒み、丸腰で日本を守る気概も無しに日米平等を叫び、税番号は自営業中心の脱税利得層からの抵抗で実現できず、先進国最低のGDP当りの租税負担が先進国で最低レベルにありながら、大きな政府と国債の無制限発行を許して来た。
その結果、少子老齢化による社会負担、税制、円高、労働規制、自由貿易協定(FTA)、農業保護政策など日本国民は何重苦にも悩まされている。それにも拘らず、国民からは愚痴に近い不平不満の外は、然したる反応を示さない。これが「平和ボケ」や「ゆで蛙」症状の典型である。この症状の問題は、「平和」や「高い生活水準」を当たり前のものだと思っているとか、環境の変化に対応出来ないと言う事もさることながら、物事の処理に常に求められる重要性や緊急性を分別し、優先度を決定する基本に欠けている事である。
東日本の大震災の窮状に、原発の即時廃止に依る30%の電源喪失が加われば、失業の増大、物価の上昇、社会保障の減額などの経済的激震が国民を襲う事は間違いない。私が最近になって「即時実行」を条件に、日本の将来の為には原発の全面廃止に踏み切った方が良いと思う様になったのは、これが理由である。日本は頭から冷水を浴びないと覚醒しない。
日本企業が再び競争力を持ち、発展していくためには、これまでと違った手法を取る必要がある。大量生産分野では家電や携帯で韓国に水を開けられ、電子、PC分野などでは韓国のみならず台湾や中国にも地位を脅かされている現状を打破する道は、我が国のシステムが成熟した経済に適応しなくなっている事を認め、大量生産ビジネスモデルを離れ、米国、ドイツ式の付加価値優先モデルに切り替える事だ。
今の侭では、日本企業は生き残りの為に最適環境を求めて、生産拠点のみならず、開発、研究センターの海外移転も考えざるを得ない。
日本国民が原発の即時廃止の不自由を身に沁みて感じ、「なせば成る 、為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」と言う上杉鷹山公の言葉を思い出す事が出来れば、日本の将来にとってこれに勝る特効薬はない。私が「即時」を条件に脱原発に賛成する理由は、この事にある。
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