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「生涯被ばく100ミリシーベルト」案のウラ
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2011年07月28日 東京新聞「こちら特報部」より :日々坦々
「生涯の被ばく量の上限は一〇〇ミリシーベルト」−。内閣府食品安全委員会の作業グループが検討する放射線が人体に与える影響の基準づくり案に異論が出ている。現在の食品の規制値は原発事故時の防災指針を流用した「暫定値」だ。内部被ばくが心配されるなか、厳しさが求められるはずなのに、緩い規制値を許容することになりかねない。汚染食品との「共生」時代に入ったとはいえ、健康を守る基準や方策はどうあるべきか。 (篠ケ瀬祐司、出田阿生)
「成人一人につき、生涯で一〇〇ミリシーベルト以上だと(健康に)悪影響が出る」。食品安全委員会作業グループ座長の山添康東北大大学院教授は二十一日、座長案として「年間」ではなく、「生涯」という長い時間軸を持ち出してきた。
これは汚染食品を食べ続けた内部被ばくの量と、外部被ばく量の合計値。ある時、大量被ばくしても、一生で一〇〇ミリシーベルトに達しなければ大丈夫との考え方だ。
食品規制値保つ狙い?
「生涯」を登場させた背景には、原発事故後の緩い「暫定規制値」の水準を保つ狙いがうかがえる。
国際放射線防護委員会(ICRP)が定める一般公衆の年間被ばく限度は一ミリシーベルト。一方、食品安全委員会が三月に出した「緊急とりまとめ」では、放射性セシウムなどによる内部被ばくは年間五ミリシーベルトでも「かなり安全側に立ったものだ」と、大きい値を挙げている。
長い時間軸で安心装う
具体的な暫定規制値は、厚生労働省が通知した。原子力安全委員会が作成した「防災指針」にある飲食物摂取の制限に関する指標値に沿い、放射性セシウムの場合、飲料水や牛乳・乳製品は一キログラム当たり二〇〇ベクレル、肉、野菜、魚、穀類などは同五〇〇ベクレルと、放射性物質の種類や食品ごとに値を定めた。
「ベクレル」は一秒間に一個の原子核が崩壊して出す放射能の強さを、「シーベルト」は放射線を浴びた時の体への影響度を示す。食品安全委員会によれば、放射性セシウム134と137が同量の時、五〇〇ベクレルが検出された牛肉を一キログラム食べた場合、人体への影響は〇・〇〇八ミリシーベルトになる。
放射性物質は化学的性質の違いで実効線量係数が異なる。それを一キログラム当たりで検出されたベクレルの数にかけてミリ・シーベルト(シーベルトの千分の一)を出す。
放射性物質は飲食で体内に入った場合、吸収される臓器やとどまる期間も異なってくる。セシウムは主に筋肉に蓄積されるが、排せつ作用などで体外に出ていき、放射能の量が半分に減る「生物学的半減期」は、134と137がともに「百十日程度」とされる。
先の〇・〇〇八ミリシーベルトだけ見れば少ないが、他の汚染飲食品の積算による内部被ばくや外部被ばくを足せば、年間一ミリシーベルトを超える可能性もある。
汚染された稲わらを食べて、暫定規制値を超えた牛肉が流通するなど、食品汚染は広がるばかり。一方、暫定規制値をICRP基準の年間被ばく限度一ミリシーベルトに合わせて設ければ、食材の流通が滞るおそれがある。
そこで作業グループでは、期間を「生涯で一〇〇ミリシーベルト」と大きな数字を提示。政府が暫定規制値を維持・緩和する余地を残したとみられる。
国は汚染測定、公開を
「現在の暫定規制値は異常に高い。このレベルで飲食を続ければ、内部被ばくだけであっという間に一〇〇ミリシーベルトの生涯量に達してしまう」
「新装版 食卓にあがった放射能」の著者で「原子力資料情報室」(東京)スタッフの渡辺美紀子さんは警告する。
暫定規制値の汚染レベルの食品や飲料をとったと仮定し、年間の被ばく量を計算した。摂取量は原子力安全委員会の「一日あたりの目安」を用いると、ヨウ素とセシウムだけでも成人で一二・九ミリシーベルト、幼児では二六・四ミリシーベルトに達した。
「規制値以下なら安全と思ってしまいがちだが、暫定規制値そのものが緊急時の限定的な防災指針。食品の安全基準とは関係がない。規制値は随時見直して低くしていかなければならない」
チェルノブイリ事故で旧ソ連は食品規制値を一年目は一〇〇ミリシーベルト(一キロ・一リットル当たり)、二年目から五〇ミリシーベルト、五年目には五ミリシーベルトに減らした。
渡辺さんが食品汚染に注目するのは、チェルノブイリ事故の影響調査があるからだ。オーストリア政府が事故から約半年の一九八六年十一月に公表した報告書では、被ばくの八割が食品からで、地面の汚染による外部被ばくが15%だった。
「今の値、高すぎる。引き下げよ」
放射性物質が体内に取り込まれると、少量であっても繰り返し放射線を出し続けるために、健康被害をもたらす。特に成長のため細胞分裂が激しい胎児、乳幼児や子どもほど影響を受けやすい。
日本の暫定規制値は大人と子どもを区別していないが、冒頭の座長案では「小児への影響は留意が必要」としている。
ICRPなどは、チェルノブイリ事故の放射能汚染の影響は発がん性しか認めず、主に子どもの甲状腺がんや白血病だけに注目する。しかし「発がん性にとどまらず、セシウムは、臓器を動かす筋肉や臓器そのものにも影響する。免疫力低下によるさまざまな病気、心筋梗塞や泌尿器系の病気を引き起こしたと思われる事例が報告されている」と渡辺さん。
同事故後、欧州各国が設けた食品の規制値は、それぞれ国の原子力政策に大きく影響された。細やかで具体的に対策を実施したのは、国内の原発運転を国民投票で止めたオーストリア政府。一方、原発大国のフランス政府は特別の警告は出さず、対応が遅れた。
渡辺さんは「福島の事故後の日本も同じ。どの食品がどの地域でどれだけ汚染されているのか、あまりにも分かっていない。国はもっと多種多様な食品を測定して情報公開すべきだ」と憂える。
市民ネットワークで自衛も必要
赤ちゃんにのませる粉ミルクも気がかりな食品だ。民主党の森裕子参院議員は二十五日、放射線量調査の状況を農林水産省にただした。同省側は「粉ミルク原料の九割以上を海外から調達し、残りは各メーカーが検査をしている」と説明したという。
ただ、森議員は納得していない。「海外とはどこなのか。他の原料の検査はメーカー任せでいいのか。(粉ミルクに)核物質が混入していないことを証明するには不十分で、(国民に)説明できる資料をつくってほしい」と、情報公開の必要性を強調している。
渡辺さんも「とにかく今は食品の放射性物質を測定し、結果を明示することが重要」とし、こう提言する。「フランスでは、市民や科学者が独立組織を設立。放射性物質の検出・測定で活躍し、現在では行政にも影響を与える監視機関となった。そうした市民のネットワークづくりと情報共有も日本には必要だ」
<デスクメモ> 渡辺さんの新装版は二十一年前、市民科学者の故高木仁三郎氏と出版したもので今も新鮮でためになる。その中の逸話を紹介。ドイツのある食肉店は「商品の放射能汚染の値」を店頭で公表。「一キロ七〇ベクレルを超える肉は売らない」と宣言し、定休日には測定器を市民に貸し出して大人気となったという。 (呂)
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