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https://www.monex.co.jp/static/jpmorgan/2011/07/27/JMISC30239.pdf?kc=Vcmvy4BQTdks
実質的な変更はあったのか
・自民党の河野太郎氏は、東京電力福島第一原発事故の賠償スキームの
修正協議における最大のポイントは、「東京電力を債務超過にしないとう
たった閣議決定を事実上、取り消したことだ」という。「この法案が成立する
ことによって、あの閣議決定は意味を失うということをはっきりさせ、東京電
力が債務超過になることがあり得るということを認めさせた。純資産が1 兆
6 千億円程度だから、そうなれば債務超過は早晩、避けられない」と。
・問題は、6 月14 日の閣議決定のどの部分が修正されたのか、である。
この閣議決定では、「原子力事業者を債務超過にさせない」という文
は、次のパラグラフに含まれている。「機構は、原子力損害賠償のた
めに資金が必要な原子力事業者に対し援助(資金の交付、資本充実等)
を行う。援助には上限を設けず、必要があれば何度でも援助し、損害
賠償、設備投資等のために必要とする金額のすべてを援助できるよう
にし、原子力事業者を債務超過にさせない」。
・仮に、この文章のなかで、最後の一文、すなわち「原子力事業者を債
務超過にさせない」だけが単純に取り消されたのなら、意味は変わら
ないだろう。援助に上限を設けず、必要があれば何度でも援助される
のであれば、東電は債務超過にならない。重要なのは、「原子力事業
者を債務超過にさせない」という一文が取り消されたかどうかではな
く、この文章全体の意味が変わったのかどうかである。
・なお、原子力損害賠償支援機構法案のなかでは、当たり前のことなが
ら、「原子力事業者を債務超過にさせない」といった直截な表現は使
われていない。おそらく、同法案第42 条の次の文言がこれ(必要があ
れば何度でも援助)に当たると思われる。「資金援助を行う旨の決定
を受けた原子力事業者は、要賠償額の増加その他の事情により必要が
生じた場合には、当該資金援助の内容又は額の変更の申込みをするこ
とができる」。
・従って、この原子力損害賠償支援機構法案の第42 条に大きな変更が
加えられていないなら、「原子力事業者を債務超過にさせない」ため
の手段は維持されていることになろう。ただし、同法案41 条は、
「機構は、・・・申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決
を経て、当該申込みに係る資金援助を行うかどうか並びに当該資金援
助を行う場合にあってはその内容及び額を決定しなければならない」
とある。
前述の閣議決定が、この運営委員会の決定におけるガイドラインになるなら、
「原子力事業者を債務超過にさせない」という文言は意味を持つ可能性はある。
つまり、修正協議前なら、「原子力事業者を債務超過にさせない」方向で、常に
運営委員会は資金援助の決定を行っていただろうが、この文言が取り消された
ことにより、運営委員会が資金援助にノーという可能性も生じたことになる。この
場合のチェック項目は、この運営委員の人選になろう。因みに、委員は「電気
事業、経済、金融、法律又は会計に関して専門的な知識と経験を有する者のう
ちから、機構の理事長が主務大臣の認可を受けて任命する」と定められている。
それにしても、原発賠償支援法案を作成したにもかかわらず、資金援助はしな
いという決定が下されるという展開もまた想定しづらい。ちなみに、日本経済新
聞には7 月22 日以降、「原発賠償支援法案」という言葉を含む記事が11 件
ある。そのうち、「債務超過」を含む記事は、1 件だけである。その1 件(7 月26
日の「一目均衡」欄)も、今回の与野党3 党の修正協議について触れてはいな
い。
同記事の結論は次の通りだ。「国会審議中の法案には経済学者から「投資家
を保護しながら、電力料金引き上げなどで国民に負担を強いる。負担をかぶる
側の順番が不適切で不公正な内容だ」との批判が吹き出し、野党との修正協
議も始まった。一部の修正で支援法案が成立すれば東電株の上場維持が固ま
り、株価も落ち着くだろう。円滑な被害補償と電力の安定供給を理由に、東電
の組織や同社株式の上場を維持する今回の支援策。後世、市場関係者からど
のような評価を受けるだろうか」と東電が債務超過に陥る可能性を全く無視して
いる。
同記事は署名記事であり、日本経済新聞の社論とは異なるかもしれないが、彼
らは、確たる意思を持って今回の修正協議、特に債務超過云々の件を取り上
げていないようだ。
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