http://www.asyura2.com/11/genpatu14/msg/773.html
Tweet |
山田文雄氏ブログ「実践的パンと平和論」
http://yamadafumio.com/2011/07/post-10.html
7月19日日本経済新聞の朝刊は、一面トップで「脱原発、漂流する経済」という見出しと共に、「エネルギーを問う」と銘打った特集記事を載せた。その趣旨は、最も安価な発電コストである原発を簡単に止める訳にはいかないという、これまでの同紙の主張の繰り返しであるが、今回は珍しく、原発コストが安価であるというその根拠を載せている。笑ってしまうのはその中に、「原発かその他のエネルギーかの実のある議論が日本で進まないのは、政府さえ原子力と火力の正確な発電コストを知らないのが一因だ」と書いてあることだ。御冗談でしょう、政府は本当のことをすべて知っているからこそ、正確な発電コスト情報を持っていないと言わざるをえないだけでしょう、と普通は思うが、それはまあいい。
続けて、その「政府さえ知らない発電コスト」を、関係の日本経済研究センターに彼らは独自に算出させたと言う。それによると原発は事故前1kW時あたり5.4〜6.4円、火力発電(石炭)は掲載されたグラフから読みとると12円位となっている。だから安易に脱原発などと言ってはいけない、といういつものストーリーになるのだが、第3面に「日経センターによる発電コスト試算の前提」という解説記事がある。それによると彼らは原発の稼働率を何故か70〜85%とし、火力発電の稼働率を50%としている。しかしこの稼働率そのものの根拠については何の記載もない。だがこの稼働率こそ各発電方式の発電コストを算出する際の最も重要な変数で、この値が高ければ発電コストは当然下がり、低くなれば上がる。
同紙の少し前に出た週刊金曜日7月15日号の特集「『原発の電気は安い』は本当か」の中で、明治学院大教授の熊本一規氏は、完成した技術である100万kW級火力の稼働率は、政策的に止めない限り、現在少なくとも87.5%を実現できると言っている。他方未成熟技術である原発の稼働率は、2010年度までの5ヶ年平均で64.7%(原子力施設運転管理年報による)にすぎなかったと言う。その数値をベースとすると原発のコストはどんなに低くとも6.3円(この数値には加算すべき原発特有の他のコストが入っていないと熊本氏は言っている)、火力のコストは5.4円と両者は日経の結果と全く逆転するのである。
原発の稼働率に70〜85%という有り得ない数字を使い、火力のそれを実現可能な数字とはかけ離れた50%とするのは、客観的にはかなり稚拙な情報操作である。しかし素人目には、一応発電の原価計算をちゃんとしているかのように見えるので、「合意の捏造」がここでも本来なら目出たく成立する筈であった。だが稼動率について嘘をついているという証拠が、解説記事の中にはっきり残ってしまったのは全く杜撰であった。これでは九電のやらせメール事件とまるで同じである。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素14掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。