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なぜ福島第一では緊急冷却装置を手動で停止する必要があったのか
http://news.livedoor.com/article/detail/5735122/
2011年07月26日09時09分 中島 聡
先月の中頃に東電が、地震の15分後に1号機の緊急冷却装置を手動で停止していたことを発表した。「実はオペレーターの操作ミスがあったのでは」との誤解をした人も多かったようだが、東電は「原子炉の圧力が急激に変化したために、炉の破損を避けるために緊急冷却装置を手動で停止した」と説明。原子力安全保安院も「マニュアル通りに停止しただけで、オペレーターのミスではない」と説明し、一件落着した感がある。
「マニュアル通りに操作したから問題なし」とはいかにもお役所的な答えだが、こんな答えで満足していては「理科系うんちく」を語ることはできない。そこで色々と調べたところ、以下の事実が明らかになった。
原子炉は運転中は300°近くで安定して動作しているが、炉の中の核燃料は緊急停止(スクラム)後もしばらくは熱を発生しつづける。万が一、その途中で水が蒸発してしまうと炉心溶融(メルトダウン)を起こしてしまうので、冷却装置を使ってすみやかに100°以下に冷却する必要がある。
1号機で使われているGEのMarkI型原子炉には、蒸気圧のみで動く(つまり外部電源なしに動く)緊急冷却装置がついていて、万が一の全電源喪失の際にも、原子炉を冷やして炉心溶融を避ける仕組みがついている。
3月11日の地震でも、原子炉の緊急停止時、この装置がちゃんと作動した。
その結果、炉の温度が一気に100°下降した。
しかし、炉の温度を一気に下げると、炉に大きな負荷がかかり、熱いコップを冷たい水に入れた時のように、炉が破損してしまう危険がある。
そんな炉の破損を避けるために、原子炉のマニュアル(手順書)には、「原子炉の緊急停止時に炉の温度が短期間に大幅に下がった場合(1時間に55°以上)、緊急冷却装置を手動で停止して、炉の破損を避けなければならない」と書いてある。
福島第一のオペレーターが地震の15分後に緊急冷却装置を手動で停止したのはこれが理由。
しかし、そのまま停止させておいたのでは、再び炉の温度が上昇して炉心溶融を起こしてしまう。そこで、オペレーターは、温度計と圧力計をにらみながら「炉を壊さない様にゆっくりと、でも炉心溶融を起こさないようにすみやかに」冷却すべく、緊急冷却装置のオン・オフを繰り返していたのである。
この手の「綱渡り的」なオペレーションは、福島第一原発以外の原発でも、地震によるスクラムがあるたびにしばしば行われていた(参考http://www.priee.org/chikyugo/pdf/334/p0205.pdf)。
原子炉は鉄で出来ているが、炉の運転で発生する中性子により鉄が年々劣化し、急激な圧力の変化に耐えられなくなる温度(脆性遷移温度)がしだいに高くなる。そのため、古い原子炉ほど「炉を壊さない様に冷やす」ことが難しくなる(参照http://www.ansn-jp.org/item_file/2005-SA-L-4.pdf)。
井野博満・東大名誉教授らが「玄海原発はもっとも危険な原発」と警告を鳴らすのはこれが理由(参照http://d.hatena.ne.jp/Vergil2010/20110703/1309693952)。
「原発の運転って、こんなに難しかったのか」というのが正直な感想だが、そんなギリギリのオペレーションをしている福島第一を襲った津波による全電源喪失。やはり、福島第一での事故は「起こるべくして起こった」のである。
点検中の原子炉の再稼働の条件となるストレステストには、ぜひともこの「地震によるスクラム後に緊急冷却する際に、炉の破損を避けながらも炉を安全なレベルにまで緊急冷却するオペレーション」のエラーマージンがどのくらいあるかをしっかりとシミュレーションしていただきたい。
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