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反射鏡:誰が原発の天井に穴をあけるのか=論説委員・青野由利
http://mainichi.jp/select/opinion/hansya/news/20110724ddm004070053000c.html
毎日新聞 2011年7月24日 東京朝刊
3月12日の衝撃が忘れられない。この日、東京電力福島第1原発1号機の建屋が水素爆発で吹き飛んだ。テレビに映し出された「爆発前」と「爆発後」の映像に、「もうだめか」という言葉さえ頭をよぎった。
そうした体験をしたためだろう。6月18日に原子力安全・保安院が示した「水素爆発防止策」の図に、思わず笑った。もちろん、楽しい笑いではない。当時の衝撃との落差に力が抜けた、といったところだろうか。
「水素爆発防止策」は、福島の事故を踏まえ、保安院が電力各社に求めた「シビアアクシデント(過酷事故)対応」の一環である。原子炉の型によって異なるが、力が抜けたのは福島第1原発のような沸騰水型(BWR)の対策だ。
原子炉建屋の天井に穴のあいた図が描かれ、「穴あけ作業の手順の整備」とある。その脇には電気ドリルで作業する男性の写真。保安院は「穴あけ作業に必要なドリル等を配備、または、手配済みであることを確認した」と述べている。
つまり、今回のように炉心が溶融し、水素が原子炉建屋に漏れ出すような場合には、建屋の屋根に作業員が上って穴をあける。そのためのドリルは各原発に用意された、というのだ。
これでだいじょうぶと言われ、納得する人がいるだろうか。
公正を期していえば、保安院が指示した応急措置は他にもある。電源車や消防車の配備など電源喪失や冷却機能喪失に備えた「緊急対策」もとられている。「過酷事故対応」は、水素爆発防止以外に4項目ある。
しかし、いずれも対症療法に過ぎない。なにより、これらの対策で、どれほど原発全体のリスクが軽減されたのか、さっぱりわからないのだ。
原子力安全委員会は「全体に安全性がどう高まったのか、総合的に示してほしい」と保安院に要請していた。さすがに班目春樹委員長も「まさか、水素爆発対策として屋上に穴をあける、それだけで福島と決定的に違うと言っているんではないですよね、という点が大切なんです」と語っている。
そこへ新たに出てきたのが「ストレステスト(安全評価)」である。設計上の想定を超える地震や津波などにどの程度耐えられるか。その余裕を確かめるものだが、手続きに不備があったこともあり、評判がよくない。評価を1次と2次にわけた点も非常にわかりにくい。
ただ、「緊急対策」と「過酷事故対応」がすんだからと、経済産業相があっというまに「安全宣言」するよりずっとましだ。総合的なリスクがわからないまま、国が「安全」のお墨付きを与えるようでは、「福島以前」と何も変わらない。そんなお墨付きがあてにならないことを、私たちはいやというほど学んだはずだ。
ストレステストをめぐる電力会社の対応にも納得できないところがある。保安院によれば、余裕を測る意義は「原発の弱点を探り、対策を講じる」ことだ。そうであれば、今回の過酷事故発生後に、国に言われるまでもなく、電力各社が自主的に行っていなくてはおかしい。
国から言われて行い、国の指示を満たしていれば「合格」。それ以上のことはしないというのでは、電力会社もまた、「福島以前」と「福島後」で何も変わっていないことになる。
地元自治体も同様だ。国の「合格」でよしとせず、住民に説明できるまで国や電力会社を追及する姿勢が、「福島後」には求められているのではないか。
原子力やエネルギー・環境政策の専門家有志で作る「グループ311」は、「エネルギーフォーラム7月号」で、「目に見える形のストレステスト」を提案している。
保安院のテストとは別に、地域特有の厳しい天候、作業員の少ない時間帯など不利な条件を設定し、住民の不安に即した訓練を事業者や自治体の共同作業で行う。これを地域や国民に公開し、それを再稼働の条件とするという考えだ。国にお任せするのではなく、こうしたさまざまな試みが出てくることも、「福島後」には必要だろう。
それにしても、気になるのは、だれが原子炉建屋の天井に穴をあけにいくのかだ。原因は津波とは限らない。炉心が溶融し始めるような状況で、「多重防護」の壁のひとつでもある建屋の屋根に上り、ためらわずにドリルで穴をうがてるのか。
そう考えると、過酷事故対策は通り一遍の訓練ではすまない。人間の心理まで考えなければ不十分である。
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