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汚染との共存が現実に セシウム汚染牛問題 東京新聞「こちら特報部」
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2011072102000054.html
2011年7月21日 東京新聞「こちら特報部」 :日々坦々
福島第一原発事故でまき散らされた放射性セシウムによる「汚染牛」問題。おそらく、汚染された食物が明らかに口に入った初めての例だ。エサの稲わらは宮城県産というが、汚染はわらや宮城という地域のみに限らないだろう。安全の規制値も、あってないがごとしだ。畜産農家の悲嘆とともに、この問題は今後、私たちが放射能汚染と共存せざるをえない現実をあぶり出している。(出田阿生、中山洋子)
畜産農家 崖っぷち
「あと、どれくらいもつんだろうか…」
大型台風が接近した二十日、福島県西郷村。激しい雨音が響く牛舎で、星勝一さん(48)は嘆息交じりにつぶやいた。
星さんは約二百頭の肉牛を飼育する。夏は焼き肉需要が高まる季節だけに、今月中の出荷を期していた牛も多いが、めどは立っていない。
エサ代は月に約二百万円。業者への支払いを滞らせるわけにはいかない。「寝ても覚めても考えるのは『エサ代をどうすべか』ばっかりだ」
牛舎は福島第一原発から約七十キロ離れている。汚染稲わらは、隣接する白河市でも販売されていた。「原発がこんなにおっかないもんとは」。ビタミン豊富な稲わらは高級牛には欠かせない。
「稲わらを与えた生産者が責められるようになるなんて。稲わらをつくった稲作農家まで傷つけられてしまった」
相場急落「エサ代にもならない」
ちなみに星さんが与えている稲わらは原発事故以前に水田から収集したもので、数日前の保健所の検査でも放射性物質は検出されなかった。
「それでも放射能は目に見えないから怖い。全頭検査をやってもらわないと、消費者とわれわれの不安はぬぐえない」
実際、事故後、販売価格は大幅に下落した。それまで肉牛の相場は一頭五十万〜六十万円だったが、最近、福島産の肉牛に「十頭で七十万円」の値がついたと聞いた。
「これじゃ、エサ代にもならない」
二十八年前に二十頭で畜産を始めた。父の背中を見て育った二人の息子たちも家業を手伝う。長男の恭平さん(21)と次男の勝紀さん(19)は三月上旬、自分の子牛を二頭ずつ買い、牛舎の一角で育て始めたばかりだ。
福島県南部の別の畜産農家の男性(64)も「家族がいなかったら、東電に殴り込みに行きたいくらい。この年になって人生をかけてきたものをダメにされた」と憤る。
「十年前の狂牛病騒動のときも国はろくな手を打てず、保険と自己資金で生き延びた。こんな国で息子に畜産はやらせない。私の代で廃業だ」
福島県では、約三万頭の肉用牛が飼育されている。出荷制限の影響は計り知れない。各JA組合長や生産者らはこの日、こぞって上京し、鹿野道彦農相らに被害補償の支援などを訴えた。
全国農業協同組合連合会(JA全農)福島畜産部の菅野藤徳・畜産酪農課長は「地域を問わずに全県で全頭検査を実施してもらいたい。一日も早い手だてを打ってもらわないと、畜産農家が耐えきれない」と話す。
前出の星さんは牛舎で「原発が若い者の夢まで根こそぎ奪おうとしている」と声を震わせた。
全食品に懸念 広範な検査を
計画的避難区域などから出荷される牛は福島県が出荷前に検査するが、体表の汚染しか分からない。そのため牛肉のセシウム汚染が発覚した発端は、東京都内の食肉処理場での検査だった。
二十日までに判明しただけで、汚染の疑いがある肉牛の出荷頭数は全国で千頭を超えた。流通の全容は分かっていない。
肉の汚染は汚染された稲わらを飼料として与えられたことが原因とみられる。十九日の宮城県の発表によると、汚染された稲わらを六県に出荷していたのは登米市や栗原市などの県北部の業者で、いずれも福島原発から百数十キロ離れている。
京大原子炉実験所の今中哲二助教は「宮城県の稲わら汚染は三月十二日に福島第一原発の1号機が水素爆発したとき、放射性物質が北に飛散したのが原因だろう」と推測する。爆発直後、福島第一原発から約百キロ離れた同県の女川原発の放射線監視装置が、基準の約四倍超の放射線値を計測していたからだ。
国が事故後に放射線の拡散予測システム「SPEEDI(スピーディ)」の数値を公表したのは三月二十三日になってから。「もっと早く公表されていれば、稲わらも含め、汚染対策が取れたはずだ」と、今中助教は国の責任を指摘する。
十八日までに検査された牛肉で、汚染は最大で肉一キロあたり四三五〇ベクレルを記録した。国の摂取基準は五〇〇ベクレルだ。
岐阜環境医学研究所の松井英介所長(放射線医学)は「政府が設定した飲食物の暫定規制値自体が高すぎる。大人と子どもの基準が同じという点もおかしい」と語る。
ドイツの放射線防護協会が福島の事故後に出した提言では、子どもで一キロあたり四ベクレル、成人は八ベクレル以上のセシウムを含む飲食物を摂取しないよう求めている。これだと日本の基準は六十二倍から百二十五倍となる。
松井所長は「子どもの基準は成人の五分の一から十分の一が国際常識。牛肉は氷山の一角。野菜や魚、牛乳などすべてに汚染が広がっているとみた方がいい。ストロンチウムなど他の放射性物質も計測する必要がある。政府は極力被害を小さく見せようとしているようだが…」と懸念する。
琉球大の矢ケ崎克馬名誉教授(放射線被害)も「低線量でも放射線は人体に影響する。特に空気や飲食物による内部被ばくは健康へのリスクが高い。限度値を設定し、限度値以下は安全としたこと自体が、汚染を拡大している」と批判する。
放射性物質は風や雨で飛散する。現実の汚染は同心円状ではない。「福島県産だけ調べるのでは不十分。東日本以北の広範な地域で計測をして、地域の汚染実態を把握することが必要だ」と矢ケ崎氏は強調する。
「汚染が確認されれば、その地域の肉、野菜、穀物、海産物を出荷停止にし、政府が補償しなければ。さらに政府は汚染されていない食物を調達しなくてはならない」
とはいえ、現実には汚染の全容は把握されておらず、この先も完全にできる見通しはない。
京大原子炉実験所の小出裕章助教は十八日の民放ラジオで「福島の事故後、世界は変わった」と断言し、こう続けた。
「大人でも安全な被ばくはないが、被ばく回避をあきらめざるを得ない時代になった以上、大人は汚染食品を引き受けないといけない」「東電には汚染食品の買い取りより検査をさせるべきです」「子どもに(汚染食品を)食べさせないため、すべての食べ物の汚染を明示するシステムをつくる必要があります」
<デスクメモ> 国破れて山河あり、のはずが「原子炉破れて山河なし」になってしまった。瑞穂国(みずほのくに)はすっかり汚染された。汚した装置を備えつけた側には最高裁も含まれる。その最高裁は最近、教育現場の「日の丸・君が代」訴訟で、相次ぎ義務化を容認した。この国の「愛国心」とは一体なんぞや。(牧)
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