05. 2011年7月19日 05:54:45: Pj82T22SRI
>「100mSv/年 以下の被曝を理由に人工妊娠中絶をしてはいけない」 というICRPの勧告が論拠 >いつのまにか被曝量の安全域は100mSv/年になっていたのかなるほど、100mSv/年というのがICRPの人工妊娠中絶の基準とは初耳だが 産婦人科科学会では周知の事実だったらしい。 あと原子力安全委員会によると100mSvは確定的な影響がでる目安らしいな ただ1年ではなく、累積(生涯?5年?)ということのようだが その辺が曖昧だな http://www.nsc.go.jp/info/20110520.html 低線量放射線の健康影響について 平成23年5月20日 原子力安全委員会事務局 標記に関する原子力安全委員会の考え方について説明いたします。 放射線の健康影響は、「確定的影響」と「確率的影響」に分類されます。 「確定的影響」は、比較的高い線量を短時間に受けた場合に現れる身体影響で、ある線量(閾値)を超えると現れるとされています。比較的低い線量で現れる確定的影響として、男性の一時不妊(閾値は0.15Gy、ガンマ線で150mSv相当)や、リンパ球の減少(閾値は0.5Gy、ガンマ線で500mSv相当)があります。100mSv以下では確定的影響は現れないと考えられます。 一方、「確率的影響」には、被ばくから一定の期間を経た後にある確率で、固形がん、白血病等を発症することが含まれます。がんのリスクの評価は、疫学的手法によるものが基礎となっています。広島や長崎で原子爆弾に起因する放射線を受けた方々の追跡調査の結果からは、100mSvを超える被ばく線量では被ばく量とその影響の発生率との間に比例性があると認められております。一方、100mSv以下の被ばく線量では、がんリスクが見込まれるものの、統計的な不確かさが大きく疫学的手法によってがん等の確率的影響のリスクを直接明らかに示すことはできない、とされております。このように、100mSv以下の被ばく線量による確率的影響の存在は見込まれるものの不確かさがあります。 そこでICRPは、100mSv以下の被ばく線量域を含め、線量とその影響の発生率に比例関係があるというモデルに基づいて放射線防護を行うことを推奨しております。また、このモデルに基づく全世代を通じたがんのリスク係数を示しております。それは100mSvあたり0.0055(100mSvの被ばくはがん死亡のリスクを0.55%上乗せする。)に相当します。 2009年の日本人のがん死亡率は約20%(がん罹患率(2005年)は約50%)で、年々変動しております。また、地域毎、がんの種別毎のがん死亡率の変動もあります。100mSvの被ばくによるがん死亡率は、その変動の範囲の中にあるとも言えます。 出典 : ICRP Publ.103 国際放射線防護委員会の2007年勧告 国際放射線防護委員会 放射線と線源の影響 2000年報告書、原子放射線の影響に関する国連科学委員会 放射線と線源の影響 2006年報告書、原子放射線の影響に関する国連科学委員会 がんの統計'10 (財)がん研究振興財団 http://www.e22.com/atom2/jsog.htm 日本産婦人科学会への抗議文 4/20/2011 [更新] 日本産婦人科学会 (JSOG) 、日本産婦人科医会 (JAOG) が発表した案内文で、 妊婦に対して「100mSv以下では、被害はない」「50mSv以下なら安全」 とする不適切な基準値を発表していることに対し、ここに抗議する。 JAOG 3/19案内原文:http://www.jaog.or.jp/News/2011/sinsai/fukusima_0319.pdf JSOG 3/24案内原文:http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110324.pdf JSOG 4/18案内原文:http://www.jsog.or.jp/news/pdf/announce_20110418.pdf JSOG 3/24案内文より一部引用: 「お腹の中の赤ちゃん(胎児)に悪影響が出るのは、赤ちゃんの被曝量が 50,000マイクロシーベルト(50ミリシーベルト)以上の場合と考えられています。 なお、日本産科婦人科学会では放射線被曝安全限界については米国産婦人科学会の推奨に基づいて50ミリシーベルトとしてきております。一方、これら問題に関する国際委員会の勧告、ICRP (International Commission on Radiological Protection) 84 等に基づいて安全限界を100,000マイクロシーベルト(100ミリシーベルト)とする意見もあります。この違いは他の多くの安全性指標と同様、安全域をどこまで見込むかという考え方の違いによるものです。なお、赤ちゃん(胎児)の被曝量は、母体の被曝量に比べて少ないとされています。胎児が100,000〜500,000マイクロシーベルト(100〜500ミリシーベルト)の被曝を受けても胎児の形態異常は増加しないとの研究報告もあり、ICRP84は「100ミリシーベルト未満の胎児被曝量は妊娠継続をあきらめる理由とはならない」と勧告しています。」 抗議内容: 一、 ICRP 84勧告 "Pregnancy and Medical Radiation"1 =「妊娠と医療放射線」で出している基準値の100mSvは、 「妊娠中にX線や放射線治療を受けなければならない状況」において、医療被曝した場合に胎児に何らかの影響が認められるまでの上限である。 米国産婦人科学会 (ACOG) の推奨値2の50mSVもICRP勧告と同じデータに基づき、「妊娠中の医療被曝において」のみの基準値である。また、どちらとも胎児への異変が短期的に分かり得る影響の制限であって、ICRP 90勧告4で取り上げたような胎児が人生においてがんにかかるリスクなどの統計は全く反映されていない。 よって、これらの基準値は胎児の健康を守るための「安全値」ではなく、医療被曝以外の環境に50mSv〜100mSvを適用するのは不適切であると同時に、妊婦と胎児への健康に長期的な影響が出る可能性を高めている。 日本産婦人科学会、日本産婦人科医会は直ちに内容を再調査し、新たな案内を発表することを求める。 一、 アメリカ原子力規制委員会の職場における妊婦 / 胎児への被曝制限の推奨値3は最大で5mSvである。 放射線従事者のの年間許容量を50mSvとし、妊婦はその10分の1である。 他国の原子力機構も、妊婦の被曝量の制限は合計で1〜5mSvとしている。 一、 大人の人間でもがんの発症率の増加が認められるのは年間100mSvであるとされるのに、放射線従事者の年間被曝線量が非常事態でもない限り年間20mSv程度に制限されているのは何故か。 ICRPが基準値を設定するにあたって、1997年の勧告から続いている「線量制限体系」は指針の三本柱として、 ・Justification(正当化):被曝をしてでも得られる効果が、その被害を上回る場合以外は、避けるべきである。 ・Optimisation(最適化):経済的、社会的な理由も含めて「合理的に達成出来る限り」低く保つべきである。 ・Limitation(制限):個人の被曝量がその環境で指定された推奨値を越えないように努めるべきである。 と挙げている。つまり、案内でICRPのデータを利用するのであれば、同時にこの三本柱を尊重した上で、 妊婦/胎児への制限を50mSvに引き上げている理由を明確に示せなければ、大変な問題である。 一、 この理由から、JSOG 4/18案内で「安全を見込んで50mSv」と言う表現をしているが、これは大きな間違いである。外部被曝の値を粉ミルクや飲料水による内部被曝の累計値と比較していること自体、危険である。妊娠中の時期によって、甲状腺の発達に伴うヨウ素の吸収率など放射線への感度も大きく変わるため、均一の基準値を設定する際に考慮する必要がある。 一、 JSOGの4/18案内で参考文献としている食品安全委員会による「放射性物質に関する緊急とりまとめ」4 (2011年3月発行) も、ICRPの数々のX線照射に基づいた勧告から「逆算」して放射性ヨウ素の許容値の50mSvを割り出しているが、これも誤った考え方による計算である。 一、 かくして、ICRPは職場での妊婦の被曝を数mSvと制限しながら、一方ではX線による胎児の二次被曝を100mSvまで容認すると言う矛盾が見られる。ICRP自身も、外部被曝のデータを元に数式で内部被曝の評価を下していることが理由として考えられる。ICRPの係数が疑問視されていることとは別に、「50mSvの内部被曝」をしても大丈夫と言う保証はどこにも存在しないのである。ICRPの勧告は、X線やガンマ線による障害が見て取れるまでの「上限値」を提示しているだけであり、決してそれ以下の「安全値」を定めるものではない。 摂取して吸収された放射性物質による内部被曝のメカニズムは明白であるため、吸収された分だけ被曝量が増えるのは当然である。健康に影響が出るかどうかは、母体内と胎内の免疫力の働きに頼るところが多いのである。症状が表れないからと言って細胞が全く「無害」な訳ではない。大人の人間には遺伝子や細胞の破損に対する修復機能が何重にも備わっているが、妊娠中に放射線による余計な負荷をかけない方が良いと言うのが健康を気遣う意味で国際的にも正論である。 一、 妊婦への案内としては、ICRPの外部被曝から割り出した基準値を利用せずに、「妊娠中の人工放射性物質の摂取は極力避けることをお勧めする」とはっきり言うべきである。一定の被曝量以下は安全であると言う印象を与えることは正しくない。 一、 このことによって過度の心配を抑える方法に関しては、日本に捧げる形で4月4日に無料配布されたICRP 111勧告5に指示してある通り、飲料水と食品中の複数の放射線核種の検査を徹底的に行い、長期間に渡って管理して行くことで安心してもらうこと以外にない。 一、 補足として、3/24案内文に「なお、赤ちゃんの(胎児)の被曝量は、母体の被曝量に比べて少ないとされています。」と書いてあるが、内部被曝の場合はその逆である。JSOGの4/18案内で参考文献にもしている、CRR397/20016 のp.142に "The concentration of radioiodine in the fetal thyroid is always higher than in the mother's thyroid" =「放射性ヨウ素は胎児の甲状腺の濃度の方が母体より常に高い」と明記してある。 X線も人工放射能も「電離放射線」であるために、胎児への影響は細心の注意を払わなければいけないものである。子宮から離れた照射でも電離を起こした因子が胎児に影響を与える場合が考えられるからだ。放射線を扱う現場では殆どが外部被曝を対象にしていることに対し、放射能汚染が起きた地区の住民が気にしなければいけないのが内部被曝である。
X線は一秒以下の外部被曝であり、細胞が受ける影響の平均値を計算しているのに対して、放射性物質を特定の部位に吸収/蓄積する内部被曝とは影響が全く違う。 両方とも体に負荷がかかるが、内部被曝の影響は放射性物質の核種、吸収率、生物学的半減期、妊婦と胎児の免疫力、多くの不確定要素に依存する所が多い。 決してシーベルトだけでは計れない (シーベルトやベクレルの単位は量や推移を知るためには有効だが、内容が分からなければ正確な分析はできない) ことは、妊婦以外の一般人にもあてはまる。 最後に、長年に渡るICRP勧告の著者でもあり、元ICRP科学事務局長のJack Valentinが2009年にストックホルムでプレゼンテーションした内容を紹介する。 Source: Pr. Chris Busby, ECRR, versus Dr. Jack Valentin , ICRP, 1(2) (http://vimeo.com/15382750 ) 41:00〜 Valentin氏、ICRPの基準値が時代に応じて変化して来たスライドを表示: 1923:〜1000mSv 確定的な影響(X線による甚大な被害など) 1934:〜500mSv Spirit of the time: Radiation good, safe thresholds, no environmental concerns = 時代の風潮:「放射能は体に良い、安全値が存在し、環境的思慮なし」
大気圏内核実験の開始、第五福竜丸事件 (1954)などを経て、 "minimise stochastic harm" = 確率的な被害を最小限にする 1956/59 (1号):50mSv/年(放射線従事者)、5mSv/年(一般人) 1966 (9号):"Reduce doses if readily achievable"「容易に達成できる範囲で最小限に」 1977 (26号):"Reduce doses if reasonably achievable"「合理的に達成出来る限り低く保つ」 System of Protection Developed =放射線防護のシステム化 Justification: More benfit than detriment=正統化:被害より効果が認められる場合 Optimisation of protection: Doses As Low As Reasonably Achievable (ALARA) = 防護の最適化:「合理的に達成出来る限り被曝量を最小限に抑える」 以下、 ICRRのリスクモデルと対峙していることで有名なECRR(欧州放射線リスク委員会)の代表、バズビー教授との会話からのヴァレンタン氏の発言を引用する。カジュアルなやり取りとは言え、歴史的な会合である。この場で氏は後から「引退したから発言できる立場だ」と示唆した上で、核心に触れたことを言っているので一読の価値がある。
(同ビデオ 42:53〜) "We published further reports where we realized that it was important, not just to avoid burning holes in yourself which was what we worked before that, which was to minimize genetic damage and cancers ....and we realized that any level of radiation confers some level of risk. There is no safe dose. And because of that, we felt that a dose limit is not really an important thing, the really important thing is to reduce doses below whatever limits there are... and the requirements increased more and more" - Dr. Jack Valentin 「勧告を発表して行く上で我々が大事だと気がついたのは、それまでは(放射線で)自分の手に穴を空けないようにしていたことから、遺伝的なダメージとがんになる可能性を最小限に抑えることであった。そこで分かったのは、どんな量でも放射線にはある程度のリスクがあると言うことである。安全値などは存在しない。だから、我々が重要視したのは基準値を決めることではなく、線量の制限を(人間の)限界値以下まで減らして行くことだったのである、、、そしてその要求が高まって行ったのだ」 作成者:Shing02 (安念真吾) info@e22.com
参照リンク: 1 ICRP84 "Pregnancy and Medical Radiation" - J. Valentin (Ed.) ZIP file
2 ACOG Commitee Opinion Number299, September 2004, p4 http://www.ed.bmc.org/education/reading-library/radiology-procedures/Radiation%20In%20Pregnancy%20-ACOG.pdf 3 Unites Sates Nuclear Regulatory Commission: Dose Equivalent to an Embryo/Fetus http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part020/part020-1208.html 3 ICRP90 "Biological Effects after Prenatal Irradiation (Embryo and Fetus) " - J. Valentin (Ed.) http://www.uclimaging.be/ecampus/rpr/rpr_2009/rpr2002_2009_effects_of_irradiation_in_utero.pdf 4 United States Nuclear Regulatory Commission: Standards for Protection Against Radiation http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part020/ 5 ICRP111 "Application of Comission's Recommendations to the Protection of People Living in Long-term Contaminated Areas after a Nuclear Accident or a Radiation Emergency" - C.H. Clement (Ed.) http://www.icrp.org/docs/P111(Special%20Free%20Release).pdf 6 Contract Research Report CRR397/2001 http://www.hse.gov.uk/research/crr_htm/2001/crr01397.htm http://www.nuketext.org/topics3.html http://onodekita.sblo.jp/article/45392678.html
|