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風知草:どうにも止まらない=山田孝男
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毎日新聞 2011年7月18日 東京朝刊
先週末、文部科学相が、高速増殖原型炉「もんじゅ」をめぐる自分の発言を伝えた報道に神経をとがらせ、記者会見をやり直す騒ぎがあった。この逸話は、関係当事者の利害に遠慮し、国政の大局を見失った日本の混迷をよく表している。
もんじゅは、原発から出る使用済み核燃料を再利用して発電する「夢の原子炉」である。まだ研究開発段階だから、文科省が所管している。
15日朝、文科相の定例記者会見で「首相の脱原発発言は、もんじゅに影響するか」という質問が出た。文科相は「今後の議論で、おのずと結論が出る」と答えた。それが「中止の可能性も」という報道になり、もんじゅの地元・福井県の知事が「本当か」と聞いてきた。あわてた文科相が再度記者を集め、「中止とは一言も言ってません」と繰り返した−−。
この騒ぎで最も印象深いのは、当たり前のことを言い、当たり前の観測が流れたにもかかわらず、「中止でない」とフォローに汗だくの、文科相の神経質な対応ぶりである。
もんじゅは見果てぬ夢だ。国の土台をむしばむ虚構と言っていい。開発史を顧みれば、誰が見たって砂上の楼閣、やめて当たり前の計画である。にもかかわらず政府は、関係業界、立地自治体、関連予算で生計を立てる人々の利害を優先し、やめると言えずにいる。
もんじゅは敦賀(つるが)市にある。その名は、同じ若狭(わかさ)湾に面した天橋立(あまのはしだて)・智恩寺の本尊、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)に由来する。高速増殖炉は1967年に起案された。80年代に実用化へ進むはずが、ずるずる延び、今は「2050年」がメドと言っている。
起動して間もない95年に火災で運転休止。昨年、14年半ぶりに動かしたら、また事故で休止。お先真っ暗のお荷物に政府は延べ1兆円の税金をつぎ込み、なお毎年二百数十億円ずつ拠出しようとしている。
もんじゅには、原発から出る危険きわまりない使用済み核燃料の引き受け施設という含みがある。だが、もんじゅは動かない。原発依存社会は、実現しない計画に「希望」を託して不気味に漂流している。
ダメとわかりきった作戦で亡国に至った歴史があった。太平洋戦争だ。航空決戦の時代と知りながら、日本は大艦巨砲主義に固執して負けた。なぜか。戦後も生き延びた元航空参謀、源田実(89年、84歳で死去)の回想が興味ぶかい。
「大砲がなかったら自分たちは失業するしかない。多分そういうことでしょう。兵術思想を変えるということは、単に兵器の構成を変えるだけでなく、大艦巨砲主義に立って築かれてきた組織を変えるということになるわけですから。人情に脆(もろ)くて波風が立つのを嫌う日本人の性格では、なかなか難しいことです」(94年プレジデント社「日本海軍の功罪」)
わかっちゃいるけど、やめられない。もんじゅの背後に原発があり、電力会社がある。重電メーカーが寄り添う。気前のいい電力会社は銀行の高利安全の融資先。商社が調達した燃料も電力会社なら高値で買ってくれる。この構造に連なる膨大な人々の利害が経済成長の大艦巨砲主義の基盤である。
首相の「脱原発」宣言自体を批判するわけにはいかない。だが、戦法と陣立てがない。そもそも閣僚が従わず、官僚が動かない。官僚批判のアジ演説だけでは、大艦巨砲主義の構造は変えられない。(敬称略)(毎週月曜日掲載)
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