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http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110701/106781/?ST=print
福島のみならず関東各地で次々と高濃度の放射性セシウムが検出されている下水汚泥。その処理をめぐり6月16日、政府は新たに方針を発表した。
今回の方針が意味するところは上下水道汚泥の処理のみならず、今後の廃棄物処理においてきわめて重大である。それどころか、放射性廃棄物の処理における大きな方針転換といってすらよい内容で、国民の生活においても大いに影響がある。
ところが、この間の報道では汚泥などに含まれる放射性物質が1kgあたり8000ベクレル以下なら跡地を居住地や農地に使わなければ埋め立て処分ができるとか、排ガスの処理をすれば焼却可能といった断片的な内容ばかりが目立ち、この政府方針の本当の意味が十分に伝わっているとは言い難い。その驚くべき内容について数回にわたって詳述する。今回は焼却・溶融処理について明らかする。
何でも燃やしてよい!
今回公表された「放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の当面の取扱いに関する考え方」は原子力災害対策本部(本部長・菅直人首相)が関係省庁とともに一切非公開のうちに作成し、国土交通省などが下水汚泥から高い放射性物質が検出されている東北、関東、中部の13都県8政令市に通達した。
「考え方」はA4用紙6ページで、原子力安全委員会の出した文書や別添の留意事項を含め計14ページ。上下水道汚泥や集落排水汚泥、それらの焼却・溶融にともなって発生した処理物や残さについて、処理や輸送、保管、処分方法について定めている。
「これは要するに何をやってもいいってことですよ」と「考え方」に目を通した神戸大学大学院教授の山内知也氏は危機感をあらわに言う。
「考え方」によれば、焼却・溶融処理においては原子力安全委員会が6月3日に示した廃棄物処理についての考え方を<担保できるよう適切に管理>しつつ実施することになる。その後に以下の内容が続く。
<たとえば、放射性セシウムの濃度が高い脱水汚泥(目安として500,000Bq/kgを超えるもの)を継続して焼却する場合には、焼却施設の集塵装置の適切な能力を確保する等の措置を講じる。なお、焼却灰については飛散防止のため、容器に封入する等の措置が必要である>
焼却・溶融処理についての記述はたったこれだけである。
「たとえば焼却・溶融処理では、1kgあたり50万ベクレルを超える脱水汚泥を継続して焼却する場合には集じん装置の適切な能力を確保する等の措置を講じるとありますが、これでいうと50万ベクレルまでなら、焼却施設の集じん装置に適切な能力を確保しなくてもよいことになる。また一時的なら50万ベクレルを超えてもよいとしている。50万ベクレルを超えてもバグフィルターなど通常の集じん設備があればよいということですから、要するに今ある設備でそのまま燃やしてもよいということでしょう。つまり事実上管理しませんということに等しいですよ」(山内氏)
現状の集じん設備で十分なのか
問題なのはもともと下水道施設は放射性廃棄物の処理施設ではないことだ。つまり放射性物質や放射線管理のノウハウもなければ、それに対する漏洩防止の設備もない。下水汚泥の焼却施設にはバグフィルター、セラミックフィルター、電気集じん機のいずれかの集じん設備とアルカリ水噴霧の湿式スクラバーがだいたい設置されているが、これで十分なのか。あるいは新たな設備を導入しなければならないのか。
国土交通省下水道局企画課に「考え方」の内容を確認した。
──焼却・溶融処理でどのような排ガス対策が必要なのか。
国交省 下水汚泥の焼却施設にはダイオキシン対策で集じん装置がついておりまして、セシウムが集じん機のほうにとられて廃棄については、ほぼセシウムなり放射性物質が移行しないと聞いているところなんですけど、念のために高濃度のものを継続して焼却する場合には能力を確保というか、集じん装置が目詰まり等しないように維持管理していく。
──「考え方」の記述では集じん設備がなくてもいいとも読めるが。
国交省 いままでの設備でダイオキシン対策で集じん装置はある。それで適切に維持管理されると考えている。とくに高いものについては適切に維持管理していただきたいと注意書きで書いてある 。
──適切な管理のための基準は。
国交省 集じん装置について、どれだけセシウムがとれなければいけないという基準はないんですよ。しかしですね、普通に集じん能力があれば、適切にセシウムが取れるという知見がある。『たとえば』なのであくまでも注意喚起です。
──つまり自治体が適切と判断すればどんな高濃度の放射性物質があり、どんな設備であってもかまわないということか。
国交省 そうですね。実情、法規制はないですからね。あくまでも技術的な助言という扱いです。指導・助言をおこなわれたいと。命令でも義務でもない。法にのっとっているわけでもない。
つまり、通常の集じん設備があれば、よほど放射性セシウムが高濃度でない限り、そのままでよいことになる。仮に1kgあたり50万ベクレルを超えるような高濃度であっても、既存の集じん設備をきちんと維持管理すればよい、ということのようだ。いみじくも国交省が認めるように「考え方」に強制力はなく、現実的にはそれぞれの都道府県あるいは自治体の判断しだいである。山内氏のいう「何をやってもいい」というのは本質を見事に言い当てている。裏返せば自治体に責任を押しつけたということだ。
大量のセシウムが大気中に放出?
焼却処理においては汚泥に含まれたセシウムは融点が600℃ほどのため、気体となって排ガス処理工程に入りこむ。しかし、排ガス処理工程で急速冷却されて固体にもどるため、集じん設備で捕集される。その捕集率は99.9%あるいは99.95%に上るため外部には出ていかない、というのが国側の説明だ。
廃棄物処分場問題全国ネットワーク共同代表の藤原寿和氏はそう単純ではないと指摘する。
「焼却にあたっては一定の性能を持った集じん装置で排ガス処理をやれってことなんでしょうけれど、いままで(放射性物質を捕集できるかの)測定を全くしていなかったはず。そもそもそういう性能を持っている設備があるのかどうかもきちんと確認されていません。試験をしたメーカーのデータなど、公的なデータすら示されないなかで、単純にバグフィルターとかがあればよいことにされてしまっているのは問題です。実際に測定による確認や技術的実証がないのですから安全といわれても無理があります。
ダイオキシン問題でもそうでしたけど、行政側はバグフィルターの都合の悪いデータは出してこない。99.9%は捕集できるとかいっても、実際には(フィルタの)出口側で入口よりも(ダイオキシンの)測定値が高くなっていることもあります。最近でも煙突の壁面に付着していた鉄粉がはく離して煙突から施設の近隣に降ってきたということもあります。当然そこに付着していたばいじんやダストも撒き散らされることになる。
それに急速冷却されるといっても、融点や沸点にはある程度の幅がある。実際の実証データがないとなんとも言えないはず。測定もせずにセシウムが必ず固体になるとか、十分捕集できるなんていえないはずです」
しばしば公表されるダイオキシン濃度は、焼却炉の燃焼が安定してダイオキシンが発生しにくくなったタイミングで測り、2回分析して数値が低いほうを公表することになっている。おまけに「測定時には不完全燃焼が起きてダイオキシンが発生しないよう、燃えにくいものは全部外していた」という焼却施設職員などの内部告発も少なくない。
つまり99.9%あるいは99.95%という捕集率は現実に基づかない虚構の数字の可能性があるというのだ。
「バグフィルタなどで現実にどれだけ取れているかは連続測定などがされていないのでわかりません」(藤原氏)
規制が始まって10年以上たつダイオキシンですらこの状態で、測定すらしていないセシウムがちゃんと取れるといわれてもにわかには信じがたいといわざるを得ない。「燃やしてから考えよう」とでもいうのだろうか。
(注) 今回の記事で焦点としている通達の発出時である6月16日段階および本原稿執筆時においては焼却施設の排ガス中の放射性物質について実測データが示されていなかったが、その後、わずかではあるが実測がされ、それに基づいて「安全」と国は主張するようになった。その詳細については機会を改めて紹介する。
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