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百年になんなんとする齢(よわい)を生き抜くことは、人間にとって「偉業」のひとつだろう。それが、こんなかたちで終わってしまっていいはずがない▼家族に宛てた遺書に「私はお墓にひなんします ごめんなさい」(原文)と記していたそうだ。福島第1原発事故による緊急時避難準備区域に住む女性が6月下旬、自ら命を絶った。93歳だったという。9日の毎日新聞が報じた▼記事によると、女性は福島県南相馬市の水田地帯で代々続く田畑を守りながら、70歳を超える長男夫妻と孫2人の5人で暮らしていた。足は弱り手押し車を押していたが、家事は何でもこなし、日記もつけていた▼老いゆえのつらさや苦労はあったろう。だが、日々の出来事を日記にしたため、長寿をたたえられながら、穏やかに残された時を過ごせていたはずだ。原発事故さえなければ▼水素爆発後に一時は家族と離れ、親戚宅に身を寄せた。体調を崩し、入院もした。遺書には「またひなんするようになったら老人はあしでまといになる(中略)毎日原発のことばかりでいきたここちしません」ともあったという▼目に見えない放射能の危険と恐怖は、幼い命や年輪を重ねた命にひときわ重くのしかかる。「お墓にひなんします」とはなんと痛ましい言葉だろう。原発に依存してきた私たちの選択が、まさに1世紀を生きようとしていた人に、最期にそう言わしめた。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fourseasons/304989.html
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