http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/859.html
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気合いはだいぶ殺がれているが、この1ヶ月余り、福島第一原発事故に関しては電源喪失問題とベント問題を中心にあれこれ考える日々をおくっている。
そして、そのようななかから、原発の放射能を外部に漏らさないための防護壁は、格納容器などの頑丈な構造物ではなく、核燃料棒を覆うあの薄っぺらい「ジルコニウム被膜管」しかないこともわかった。
原発の“安全性”について、原子炉圧力容器・原子炉格納容器・格納容器まわりコンクリート壁・建屋など放射能封じ込めのための“多重防護性”がうたわれているが、それらは、漏洩量の軽減には役立つとしても、封じ込めとしては結局のところ機能せず、ただ一つ、燃料ペレットを覆っているジルコニウム被膜管のみが封じ込めの機能を担っているのである。
そして、そのジルコニウム被膜管の健全性は、冷却材(水)の持続的な注入とその注水を支える電源によって維持されている。
このことから、原発の放射性物質を外部に漏洩させないための最低限かつ絶対必要条件は、水(冷却材)と電源の確保ということになる。
水から露出したジルコニウム被膜管が、崩壊熱で高温になって水蒸気と反応(酸化:水素発生)し、それがさらに高温化を促すことで被膜管も崩れ落ち、最終的には2800度以上の高温に達し、酸化ウランさえ溶融するのがメルトダウンである。
このメルトダウンが起きると引き続き、原子炉圧力容器の“弱い環”を中心に穴が開くメルトスルーが起き、落下してきた溶融燃料物で格納容器内のコンクリートや格納容器鋼鉄壁にも穴が開くことが、今回の事故で実証された。
これは、なかに入って実際に目で損傷情況を確認しなくても、原子炉に注入した水がどうなるかでわかる話である。
多重防護の要と言われてきた原子炉圧力容器や原子炉格納容器そしてコンクリート構造物は、溶融してしまった使用済み核燃料物質を封じ込めることができなかったのである。
原子炉圧力容器や原子炉格納容器は、メルトダウンが起きない事故レベルに関してのみ封じ込めに役立つ設備だと言える。
このようなことを考えているときに、七転八起さんが転載してくれたWSJの記事を読んで驚いた。
6月7日の政府編纂のIAEA報告にも、5月17日に始まり以降修正も加えられてきた東電の電気設備関連公表資料にもなかった“津波の影響を受けなかった非常用電源”が6号機の1台以外に2台もあったことが記されていたからである。
引用元:「設計上の欠陥が事故を悪化させた―福島原発 - (WSJ日本版 - jp.WSJ.com)」
http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/633.html
【引用1】
「 1988年、新たな規制に対応するため、東電は福島第1原発の各原子炉に、少なくともそれぞれ2台の予備ディーゼル発電機を設置することを決めた。新しく設置することが決まった2号機と4号機の予備発電機は原子炉の隣、山側の高い位置に新たに建てられた専用の建物に納められた。これらの新しく追加された非常用電源を通して、福島第1の6基の原子炉はすべて、脆弱なタービン建屋以外の場所に設置された発電機を備えることになった。」
ある時点まで、政府・東電は、非常用ディーゼル発電機のすべてが海側で海抜が低い場所にあるタービン建屋に設置されているかのように説明してきた。
だから、IAEAへの報告書に添付されている地図で6号機の空冷式ディーゼル発電機が原子炉建屋よりさらに山側の建物に設置されている事実を知って驚いた。
その驚きに基づく書き込みが次のものである。
「それまで、5、6号機の非常用ディーゼル発電機も、1から4号機と同じように、海側のタービン建屋地下に設置されていると思っていたのに、それは間違いで、原子炉建屋内に一つと、さらに山側の外にある建物?に一つ設置されていることを知ったからである」(注1)とか、「東電は、福島第一で6号機だけは津波対策を行っていたのである。原子炉建屋よりも山側に空冷式非常用ディーゼル発電機を設置していたことで、5・6号機は破局を免れたのである。逆に言えば、1〜4号機はお金を惜しんで考えは及んでいたしなおかつできる対策をしなかっただけなのだ。」(注2)という内容を書いた。
同じ驚きにつながるものが他にも2台、しかも、未曾有の大惨事に陥った1号機から4号機に関わるものとして設置されていたというのである。
【引用2】
「 3月11日午後3時30分頃、マグニチュード9.0の地震が起きてから45分後に、大津波が福島第1原発を直撃した。送電網は使えなくなり、1970年代からタービン建屋に置かれていた予備発電機は水につかった。
1990年代後半に追加され、山側の建物に置かれていた3台の発電機は動き続けていた。しかし、そのうちの2台は、1号機から4号機では役に立たなかった。なぜなら、非常用発電機から冷却装置に電気を送る「メタクラ」が、タービン建屋の中で水につかっていたからだ。」
“東電関係者”が正常に稼働した3台の非常用発電機に関する情報をWSJに伝えた(リークした)大きな理由は、配電盤(「メタクラ」)が津波で冠水したから冷却機能が失われたという「津波原因説」をプッシュしたかったからだと推測する。
しかし、記事にある「非常用発電機から冷却装置に電気を送る「メタクラ」が、タービン建屋の中で水につかっていた」という“事実”は確認されておらず、あくまでも政府・東電の“推論”に基づく判断でしかない。
公表資料では、「津波到達後に全交流電源喪失が発生していることから、ディーゼル発電機、非常灯高圧配電盤及び非常用パワーセンターが津波により被害を受けたものと考える」と説明されているだけである。
これについては、配電盤やパワーセンターは健全であったのに、ディーゼル発電機だけが津波で停まってしまったから全交流電源喪失に陥ったという可能性を指摘すれば十分だろう。
配電盤が健全であれば、山側に設置されていた2号機と4号機の非常用ディーゼル発電機(たぶん空冷式だろう)から電力が供給されたはずである。
非常用高圧配電盤や常用高圧配電盤がタービン建屋のどこに設置されていたのか、その場所(高さ)まで実際に浸水があったのか、どのような被害状況だったのかなどについて、これまでまったく説明されていない。
※ この問題については、末尾に掲載している関連投稿最初のなかにある「● 常用高圧配電盤は損壊したのか健全なのか」(注3)を参照。
福島第一の電気設備の脆弱さは、3月11日のスクラム後(津波到来の前)「所内電源切替」(原発自身が発電した電力から送電線供給の電力への切り替え)が不能に陥ったり、国家総力を挙げた対応のさなかの6月8日に地震や津波がないまま3時間以上も停電が続いたことでわかる。
WSJの記事は、そのような根本的な脆弱問題を糊塗し、“想定外の大津波”によって今回の原発事故は起きたとするプロパガンダの一環に相当するものだと推測する。
2号機と4号機の非常用ディーゼル発電機から供給される非常用高圧母線は1・3号機にも接続され電力が相互に融通できる仕組みになっているから、非常用高圧配電盤が生きていたのなら 1号機から4号機まですべての冷却装置が作動したはずである。
政府は、3月30日に「福島第一原子力発電所事故を踏まえた他の発電所の緊急安全対策の実施について」を各原発保有電力会社に通達した。
そのなかで、「B 緊急時の電源確保」と称し、「所内電源が喪失し、緊急時電源が確保できない場合に、必要な電力を機動的に供給する代替電源の確保」を求めた。
それを受け、各電力会社は、電源車を配備し、今後の課題として非常用発電機の設置を計画している。
しかし、福島第一の非常用発電機2機が正常に稼働していながら電力供給ができなかった事実があるのだから、電源車や非常用発電機をいくら備えようが結局は対応できないこともあるという話になる。
3月30日の「福島第一原子力発電所事故を踏まえた他の発電所の緊急安全対策」は、まったく福島第一の事故を踏まえないまま、ただアリバイとして出された絵空事の“緊急安全対策”でしかないことがわかる。
福島第一の事故原因や事故拡大要因は、まったくと言っていいほど明らかにされておらず、そのようななかで、定期検査終了後の原発を稼働させようともがく経産省の動きは狂気の沙汰としか言いようがない。
※ 関連投稿
[(注1)(注3)の内容記載]:
「今回でもやっぱりあった「所内電源切替不能」事故:3号機で昨年6月と同じ事故が発生:地震さえ無関係で外部電源喪失か」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/834.html
「[外部電源喪失のウソ]津波でディーゼル発電機が水没しても「全交流電源喪失」を回避できたはずの福島第一」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/577.html
「わずか9カ月前に地震も津波もないまま「常用電源喪失」に陥った2号機:今回と強く結び付く事故を法令違反でうやむやに処理」
http://www.asyura2.com/11/genpatu12/msg/592.html
[(注2)の内容記載]:
「原発推進派の巣窟自民党も「津波破局説」:地震には備えてきたが想定外の津波でやられた:失念禁止!≪地震が破局要因!≫」
http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/113.html
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