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CsやSrも実用化するなら、さらに内部被曝軽減に有効だが
コストによっては普及は難しいか
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放射性物質を吸着・除去できる繊維 原発事故でも有効、「作業員用マスク」への応用も
2011年7月4日 月曜日
山田 久美
現在、福島第一原子力発電所では、原子炉を冷却する過程で大量に発生した汚染水の浄化処理が一刻を争う状況となっている。日々増え続ける汚染水を浄化し て、それを原子炉の冷却に使おうと、現在、「循環注水冷却」システムが導入され、稼動を開始している。しかし、同システムは、運転稼働率の低さもさること ながら、汚染水の浄化後、大量の放射性廃棄物が残されるという問題を抱えている。
そこで注目したいのが、環境浄化研究所の須郷高信社長が開発した海水中のヨウ素を高効率で吸着できる繊維である。同繊維であれば、ヨウ素だけを固体で回 収できるので、放射性廃棄物の量を大幅に削減できる上、大規模な装置も不要だ。吸着速度も速い。さらに、須郷氏は、セシウムを高効率で吸着できる繊維、さ らに、ストロンチウムを高効率で吸着できる繊維も開発中だ。
環境浄化研究所の須郷高信社長
「現在、福島第一原発に導入されている循環注水冷却システムの最大の問題点は、高濃度放射性物質を含む沈殿物が大量に発生すること。私が開発した方法を使えば、放射性物質だけを固体で回収できるので、大量の放射性廃棄物を発生させずに済む。大規模な装置も不要だ」
こう語るのは、環境浄化研究所の須郷高信社長だ。
須郷氏が開発したのは、海水中のヨウ素を高い効率で吸着できる繊維だ。実際にヨウ素を含む海水にこの繊維を浸したところ、繊維1キログラム当たり約40グラムのヨウ素吸着に成功した。
あとはこの繊維を塩酸などを入れた水槽に移し、塩酸の水素イオン濃度(pH)を調整すれば、ヨウ素だけを回収することができる。また、ヨウ素を回収した 後の繊維は再利用が可能だ。しかも、ヨウ素の吸着速度が速く、繊維を海水に浸して軽く揺するだけで、あっという間に吸着できてしまうという特徴も持つ。
沈殿する大量の放射性廃棄物が問題
現在、福島第一原子力発電所では、原子炉を冷却する過程で大量に発生した高濃度放射性物質を含む汚染水の浄化処理が一刻を争う状況となっている。日々増 え続ける汚染水を浄化して、それを原子炉の冷却に使おうと、現在、「循環注水冷却」システムが導入され、稼動を開始している。しかし、トラブル続きで、日 本中をやきもきさせている。
しかも、同システムは、放射性物質を沈殿物として回収する「凝集沈殿法」と呼ばれる方法を採用している。そのため、汚染水を浄化した後に、大量の放射性廃棄物が沈殿物という形で残される課題がある。この処理をどうするかが最大の問題だと須郷氏は指摘する。
右が普通の繊維、左がヨウ素を高効率で吸着できる繊維
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画像をクリックすると動画をご覧いただけます。(WMV形式)ヨウ素を吸着させる実験を見せる須郷氏
ここで、現在、福島第一原発に導入されている循環注水冷却システムの仕組みを簡単に説明しておこう。
この循環注水冷却システムは、4段階に分かれており、まず、油分離システムで、汚染水から油分を分離する。そして、米キュリオン社が提供するセシウム処 理装置で、「ゼオライト」と呼ばれる無数の小さな穴のあいた鉱物を使って、海水中にイオンとなって溶けているセシウム、次いで、ヨウ素を吸着する。
汚染水処理には3カ月かかる
次に、仏アルバ社が提供する除染装置で、放射性物質の吸着剤を使い、さらに残りの放射性物質を吸着させる。 吸着剤と結合した放射性物質は、コロイド粒子となって海水中を漂う。そこに、凝集剤を加えて、コロイド粒子を凝集して沈殿させ、海水と放射性物質を分離するのだ。
さらに、上澄みとして回収した海水は淡水化装置に送り、真水に変えて原子炉に戻し、原子炉の冷却水として使う。新たに冷却水を外部から注入する必要がな くなるので、汚染水を徐々に減らしていくことができるという算段だ。公式発表によれば、福島第一原子力発電所内には約12万2000トンの汚染水がたまっ ており、6月30日の時点で約9000トンを処理。今後、1日1200トンの汚染水を処理していく計画で、すべての汚染水を処理するには少なくともあと3 カ月かかる見通しだ。
「1日に1200トンの汚染水を処理する場合、このシステムでは、毎日400トンの放射性廃棄物が発生するのではないかと見ている」と須郷氏は語る。
須郷氏の試算に基づけば、3カ月間で3万6000トン以上の放射性廃棄物が発生する計算になる。しかし、現在、この放射性廃棄物の処理方法について、日本政府や東京電力から明確な方針は示されていない。
ヨウ素を吸着する「手」
環境浄化研究所は、1999年に日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)が職員の起業を支援する制度を設けたのを受け、当時、日本原子力研究所の研究員だった須郷氏が設立したベンチャー企業だ。
須郷氏は長年にわたり、日本原子力研究所で放射線を使った加工技術に関する研究に従事してきた研究者で、以前、このコラムの『ホントに海水からウランが取れた』で紹介した海水ウランの捕集技術も、実は須郷氏が開発したものだ。
海水ウランの捕集剤では、ポリエチレン繊維に放射線を照射して水素分子を取り除き、代わりに「アミドキシム基」と呼ばれる“手”を付けて、ウランやコバ ルトなどのレアメタルを吸着させている。それに対し、今回、須郷氏が発表したヨウ素を吸着する繊維では、同じポリエチレン繊維に放射線を照射し、ヨウ素を 吸着する「グリシジルメタクリレート―トリエチレンジアミン(GMA-TEDA)」という“手”を付けている。
このポリエチレン繊維などに放射線を照射して水素分子を取り除き、ほかの物質を付ける技術は、「放射線グラフト重合法」と呼ばれる。
須郷氏は、ヨウ素を吸着する繊維を開発後、同様の方法で、セシウムを高効率で吸着できる繊維、さらに、ストロンチウムを高効率で吸着できる繊維も開発中だ。
ヨウ素回収が急務である理由
ヨウ素を吸着する繊維は様々な形状にできる
「急遽、ヨウ素を吸着する繊維を開発したのは、放射性ヨウ素の回収がセシウムやストロンチウムにも増して急務だからだ」。須郷氏はこう説明する。
主な理由は2つある。まず、ヨウ素はセシウムやストロンチウムとは異なり、気化しやすい。そのため、原子炉建屋内にたまったり、海などに流出した汚染水に含まれる放射性ヨウ素が気化し、風に乗って広範囲に拡散する可能性が高いからだ。
次に、ヨウ素は人体にとって不可欠な元素で、ヨウ素が欠乏するとただちに甲状腺ホルモンの欠乏を招き、それが甲状腺腫瘍を引き起こす原因となる。そのた め、いったん体内に入ると、甲状腺に積極的に取り込まれてしまうのだ。1986年に起こったチェルノブイリ原発事故で大量に放出された放射性ヨウ素によ り、周辺地域で甲状腺ガンが多発したのはそのためだ。
一方、セシウムは、ナトリウムやカリウムと同じ「アルカリ金属」に属する元素。また、ストロンチウムは、マグネシウムやカルシウムと同じ「アルカリ土類 金属」に属する元素だ。そのため、ナトリウムやカリウム、マグネシウム、カルシウムをきちんと摂取していれば、たとえセシウムやストロンチウムが体内に取 り込まれたとしても、すぐに排出され、体内に長くとどまることはない。
だから須郷氏は、体内に積極的に取り込まれるヨウ素を早急に回収する必要があると考えたのだ。
そこで、海水中でヨウ素を高効率で吸着する繊維の開発に着手した。海水中のヨウ素は、2種類のヨウ素イオンとして存在する。そのため、いずれのヨウ素イ オンも吸着できる“手”として、須郷氏がポリエチレン繊維に付けたのが、グリシジルメタクリレート―トリエチレンジアミン(GMA-TEDA)である。
「イソジンうがい薬」に含まれる成分
「一方、空気中の放射性ヨウ素に関しては、数年前に開発したウイルス感染防止マスクが有効と考えた。そこで、すぐに、福島第一原発で作業されている自衛隊の方々に1万枚ほど寄贈した」と須郷氏は語る。
ウイルス感染防止マスクとは、フィルター素材に放射線を照射し、「ポビドンヨード」と呼ばれる化合物を結合させたものだ。ポビドンヨードは、食品・医薬 品メーカー、明治が販売する「イソジンうがい薬」に含まれているヨウ素剤で、ウイルスや細菌などに対する殺菌作用が高い。しかし、液体で使用するのが基本 で、乾燥させると効果が低下してしまうため、固体にするのは難しいとされてきた。
それに対し、須郷氏は、1999年、放射線グラフト重合法を使うことで、ポビドンヨードを、殺菌効果を低下させることなくフィルター素材に化学結合させることに成功した。そして、ウイルスの活性がフィルターを通過するだけで、10万分の1に低減されることを実証した。
須郷氏が開発した「イソジンウイルス立入禁止マスク」
同フィルターは、現在、「イソジンウイルス立入禁止マスク」として市販されている。ちなみに、このマスクを通過するとウイルスの活性が10万分の1に低減されるのは、ポビドンヨードによってウイルスが人体に無害なものに変わるからだ。
実は、このウイルス感染防止マスクには、ポビドンヨードが、2%程度しか付けられていない。100%付けるとマスクが紫色になってしまい、商品にならないからだ。とはいえ、これだけでも効果は十分あるという。
つまり、98%の“手”が余っていることになる。ここに気体中の放射性ヨウ素を吸着できる。ウイルス感染防止マスクは、「放射性ヨウ素吸着マスク」としても有効だというわけだ。
応用範囲が広い「放射線グラフト重合法」
現在、放射線グラフト重合法は、レアメタルの回収やウイルス感染防止だけでなく、腕時計に搭載されているボタン電池の長寿命化や、工場廃水の有害物質の除去、ペットや靴、トイレの悪臭除去、病院向け消臭装置など、実に幅広い分野に応用され、実用化されている。
2010年には、これら放射線グラフト重合法を生かした生活福祉関連製品が高く評価され、須郷氏は、日本放射線化学会技術賞を受賞した。
「原子力研究を通して培った知識と技術を使って、地球上のあらゆる汚染物質を除去し、環境を浄化する。これが設立当時からの私の目標だ」と語る須郷氏。今後もこの目標達成に向け、研究開発と製品開発を推進していく計画だ。
日本キラピカ大作戦
日本はCO2排出量の削減や高齢化、需要不足など、大きな課題に直面している。そのため、日本全体に閉塞感が漂い、希望ある未来社会が描きづらく なっている。しかし、これらの課題はいずれ世界のすべての国が直面するものでもあり、今の日本を「課題先進国」と位置づけることもできる。 「これは日本にとって千載一遇のチャンスである」と言う東京大学総長室顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを皮切りに、日本が世界を リードできる技術の最先端や“産声”を追う。エコ、スマート、シルバー…。日本にはサステナブルな社会を実現するためのピカイチ技術がたくさんある。これ を存分に生かして、キラキラと輝く未来を創り出そう。
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山田 久美(やまだ・くみ)
フリーライター。都市銀行システム開発部を経てフリーに転身。月刊誌やウェブサイトでハードウエア、ソフトウエアのレビュー、IT関連の記事を多 数執筆。2005年3月に技術経営(MOT)修士取得。現在はサイエンス&テクノロジー関連、技術経営関連の記事を中心に、執筆活動を行っている。研究者 の研究内容を聞くのが最もワクワクする時間。希望ある未来社会を実現するためのサイエンス&テクノロジーの追求をライフワークにしている。Twitter アカウントはこちら。
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