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「福島第一原発を考えます」
2011年6月24日福島地裁郡山支部に提訴される郡山市教育委員会に対する仮処分請求に関するクリス・バズビー博士の声明
この件に関する簡潔な所見を以下に述べます。また結論として、ガンマ線の外部被曝線量が汚染された地面から1mのところで1μSv/hを越える地域に居住している子どもと大人は即時非汚染地域に退避すべきと考えます。このレベルを越える外部被曝線量が存在する地域に子どもたちが居住しつづけることは、深刻な健康被害を被り、以後10年間で死ぬ可能性もあるでしょう。地表から1mで1μSv/hを越えるレベルに妊娠中の女性が被曝する場合は、その胎児の生存能力と赤ちゃんの生存能力と健康に深刻な影響を与えるでしょう。
1.1 論拠
この請求は、福島県在住で汚染地域の学校に通っている子どもたちの退避命令を
裁判所に求めるものだと理解します。
1.2私の専門分野
私は、ロンドン大学の化学学部から特別栄誉学位を受け、またケント大学から化学物理学博士号を取得しています。1974年化学ローヤルソサイティに選ばれ、現在は国際環境疫学協会とチェルノブイリ物理学者ウクライナ委員会のメンバーです。また、ランセット誌、小児放射線学ジャーナル、生物学と生物電磁気学、および科学と公共政治学ヨーロッパジャーナルの科学選考委員です。
私は低レベル放射線の健康被害を20年以上研究しています。また、基本的な細胞生物学レベルでの理論的および放射線疫学者としての研究をしています。この問題に関するふたつの英国政府委員会のメンバーです。(内部被曝調査委員会CERRIEと劣化ウラン調査委員会)
私はまた、英国政府と他の専門委員会あるいは調査委員会などの公式アドバイザーです。核廃棄物処理委員会、米国退役軍人保障議会委員会、ロイヤルソサイティ、原爆被災軍人の下院健康調査委員会、欧州議会などです。
私はウラニウム健康被害に関するカナダ政府への公式な専門的証言者です。2007年まで私はリバプール大学の医学部特別研究員として所属し、現在は北アイルランドのウルスター大学の分子生物科学部の客員教授です。そこでは、ウラニウムによる光電子加速効果の研究を指導しています。また、ハノーバー近くのブ
ルンズウィックにあるジュリアス・クーン・ドイツ連邦農業研究所の客員研究者です。そこでは、ウラニウム被曝による健康障害を調べています。
私は、ブラッセルの欧州放射線リスク委員会(ECRR)の科学議長であり、そのECRR2003年勧告書(低レベル放射線被曝の健康被害に関する勧告)の編集責任者です。この報告書は今ではフランス語、ロシア語、日本語、スペイン語に翻訳され、放射線保護の目的で、最近(2006年)では核廃棄物処理英国委員会をはじめ多くの機関によって使用されています。また最近のECRR2010年報告書も私が編集しました。
ECRRのリスクモデルを基にして汚染地帯の最適な処理法に関するアドバイスをするよう、英国の原子力産業(CIRIA)によって招かれたことがあります。2003年から2006年の間は、私は子どもの健康と環境EU政策インフォメーションセンター(PINCHE)の科学政策インターフェイスグループのリーダーを務め、また放射線と紫外線による子どもたちの健康被害に関する報告者でもありました。英国と米国での放射線と健康に関する40以上の訴訟に専門家として証言してきました。
私の特別な専門分野は体内に取り込んだ放射線核種の健康被害です。この分野の放射線と健康の科学に重要な貢献をしてきましたし、このことに関するたくさんの記事と報告を出版してきました。
私の研究から、体内に蓄積した放射線核種被曝の影響は、日本の原爆研究と他の高度外部被曝に基づいた放射線リスク機関(ICRP,NCRP)によって現在採用されている平均化方式を使っては科学的にも経験的にも評価できないとの結論に達しました。ICRPによって公表され、これらの機関によって採用されている放射性核種の放射線量係数は、それらが細胞内での不適切なエネルギー平均化のために正確ではありません。そのことをこれから述べたいと思います。
これは実際のところ常識的なことなのです。そうであるとますます多くの政府放射線リスク機関と委員会が見るようになってきているのですが、放射線リスクへの伝統的な扱い(組織的官僚的構造による簡単な歴史的扱いが伴って)という歴史的重みによって、この分野での政策変更が妨げられて来ました。そのような放射線内部被曝の現在のリスクモデルの非科学性を公式に受け入れることは、広範囲にわたる、また財政的負担をもたらす政策に反映されることを意味します。
1.3 福島原発からの放射線放出による健康被害の評価
電離放射線の被曝リスクは現在日本当局によってICRP(国際放射線防護委員会)の吸収線量法を用いて評価されています。ICRP方式は、電離放射線被曝の
健康被害リスクは受けた放射線の吸収量に直線的に関係するという考え方に基づいています。今では、ある種の内部被曝にはそれが正しくないことを示す圧倒的な証拠があります。それには、原子炉と使用済み核燃料タンクの爆発とメルトダウンと進行中の核分裂による福島県の子どもたちと大人たちが受けている被曝があります。
文科省による測定値と、放出地の近辺および以遠の様々な大学、機関、個人たちによる測定値は、放射線レベルが一連の放射線核種による汚染とガンマ線測定値のよるものとで評価されていることを示しています。日本当局によって決定される被曝限度は毎時マイクロシーベルトで計測される外部ガンマ線量に基づいています。
これによって、集積線量が計算され、年間で1mSvを越える被曝はしてはならないというICRP勧告との比較が可能になります。たくさんの地域で大人と子どもたちが今や1μSv/hを越える線量下で生活しています。そのような地域の環境に365時間以上いるだけですでにICRP勧告値を越えてしまうのです。子どもたちが学校に通っている地域の多くで、子どもたちはすでにこの限度を越えています。しかし、この限度値を使うことは、福島原発からの放出物質で汚染されている地域に適用するのは危険です。それにはいくつかの理由があります。
1)福島の環境中に存在する多くの放射性物質はガンマ線放射物質ではありません。それはガンマ線量データの中には含まれないのです。その例としては、β線放射物質であるストロンチウム90、バリウム140、プルトニウム241、トリチウム(放射性水)、アルファ線放出物質のプルトニウム238,239,240、ウラニウム238、ウラニウム235、アメリシウム241があります。このように被曝は過小評価されているのです。
2)環境中にはホットパーティクルと呼ばれるアルファ線とベータ線放射物質があり、それらは呼吸と飲食から体内に取り込まれます。これらは遠い東京の自動車のエアフィルターからも検出されています。それらの影響は非常に深刻です。
私たちはすでにこれらの物質の被曝による鼻孔や内臓粘膜破壊の結果である鼻血や下痢などの症状の報道があることを知っています。
体内の放射線核種による放射は、同様な放射線の外部からの放射にくらべるとその評価線量から言ってはるかに高い危険性を持ちます。これが、私が議長を務める科学者と放射線専門家による独立グループ、ECRRの見解です。ECRR2010報告書「低レベル放射線被曝の健康被害」は日本語に翻訳されています。(http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm )
(4)ECRR勧告は、一般人はだれでも、いかなる人工的プロセスによる発生源であっても、その発生源すべてからの年間総線量が0.1mSvを越える被曝をさせてはいけないというものです。
(5)ERCRRとICRPの立場は同じです。現在の放射線リスクモデルに関するECRRの一般的立場のガイドラインはレスボス宣言 (www.euradcom.org/2009/lesvosdeclaration.htm )をごらんください。
福島での通常の自然バックグラウンドガンマ線放射線量は、0.1μSv/hです。約0.2μSv/hを越える線量は、その増加分の発生源がある徴候です。その発生源は原子炉からのフォールアウト(放射性降下物質)汚染物質です。このフォールアウト汚染は、セシウム137をモデルとすると、ガンマ線バックグランド以外に1Sv /h当たり300キロベクレル/uに相当します。チェルノブイリの隔離ゾーンは500キロベクレル/uが基準でした。
原子炉から60km離れた地面のセシウム137の測定から、セシウム137のレベルが1,000から10,000キロベクレル/uであることが分かります。
これは私の意見ですが、このようなレベルの汚染地域に子どもたちを置くことを許すのは、無責任であり、何かしらの健康障害と死をもたらすことになり、どのような文化社会においても許されることではありません。
これも私の意見ですが、原子爆弾による放射能の被害を最初に、そしてあれほどひどく被った日本と言う国が、原子力産業とその取り巻き科学者たちに支配されているリスク機関の勧告、そして、少なくても過去15年間の研究で疫学的にも論理的にも誤りであると明らかにされている時代遅れのリスクモデルに基づいた勧告に、盲目的に従った結果、いまそれ自身の子どもたちと親たちを犠牲にしていることは極めて悲しくまた皮肉でもあります。
2011年6月23日
クリス・バズビー
Castle Cottage, Sea View Place, Aberystwyth SY23 1DZ UK
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