http://jp.wsj.com/Japan/node_258611

2011年 7月 2日 13:02 JST

【東京】菅内閣の元官房参与、小佐古敏荘氏（61）が原発事故に対する政府の対応を痛烈に批判し、今後、放射能の脅威がさらに露呈する可能性があると警告した。

　ウォール･ストリート･ジャーナルのインタビューに応じた小佐古氏は、菅内閣は海の汚染や魚への影響について迅速な分析ができておらず、汚染除去コストを最小限に抑えるために特定の放射能の危険性を過小評価していると述べた。日本の放射線安全学における第一人者である小佐古氏がメディアの取材に応じたのは、4月に内閣官房参与を辞任して以来初めて。

　同氏は、茶葉やほうれん草など、食品の汚染については、既に散発的に報告されているものの、今年後半、特に日本人の主食である米の収穫が始まった頃に、より広範な、憂慮すべき問題が明らかになるだろうとした。

　同氏は、「今年の秋の収穫の時期が来れば混乱がおきる。収穫した時に米の中に、どのようなレベルかわからないが、放射能が入っている。それがスキャンダルになり、東北の米は買わないということになれば、やっかいなことになる」と述べた。

　さらに、3月11日に原子炉が津波の被害を受けて以来、福島第1原発の状況に対して政府がとってきた対応は、日本の政策決定のまずさを露呈したとし、「政府の意思決定メカニズムははっきりしない。どういう理屈で何を決めているのかはっきりしない。とても民主主義社会とは思えない」と述べ、東アジアの発展途上国のような状況になっているとの見方を示した。

　小佐古氏は、具体的に、校庭における放射能の許容水準を超える学校が17校にとどまるよう、政府は許容水準を比較的高いレベルに設定した、と述べた。同氏が主張していたようにより低い水準に設定した場合、何千校もの学校で全面的な放射能除去作業が必要になる。菅首相率いる民主党は補正予算の国会承認を得るために苦慮しており、同氏は、このようにコストがかかる選択肢は支持されなかった、としている。

　「今の内閣は生き延びるためだけに、色々な対策をうっているとしか私には考えられない」と同氏は述べた。

　本紙が小佐古氏の主張について政府のコメントを求めたところ、内閣府の高官が匿名で回答し、政府は海の放射能除去に向けて最大限の努力をしており、漁業従事者やその他関係者と緊密に協力していると述べた。

　同高官は、「特に主食の米には細心の注意をはらっている」と述べ、既に作付けは制限されているが、もし基準値を超える放射能が検出された場合は出荷を停止すると付け加えた。

　また、学校の問題については、政府は許容レベルの引き下げに向けて検討中であり、追加措置も考慮しているとした。

　今年4月30日、政府や学界の審議会などに数多く参加してきた東京大学教授の小佐古氏が菅内閣の官房参与を辞任したため、政府の原発事故対応をめぐる懸念に拍車がかかった。

　小佐古氏は、同氏を含む専門家が行った多くの申し入れは取り入れられなかったとしており、政府が定める校庭の放射能許容水準は「受け入れられない」とした。自分の子どもでもそういう目に遭わせることはできないと記者会見で涙をぬぐう同氏の姿は全国に放映された。

　その後2カ月間、同氏は東京大学で放射線安全学の講義に集中してきたが、まずは海外で心の内を明かす準備ができたと述べ、今後数週間は米国や台湾で講演を行う。

　同氏は、特に、被災した原子炉から周辺の海に廃棄された大量の放射性物質が海を汚染する可能性について懸念を深めている。政府は、福島第1原発の原子炉冷却過程で、何が海に廃棄されたのか、大ざっぱな報告しか発表していない。

小佐古氏は、海水の監視や、汚染水の拡散状況の予想をこれまで以上に行い、海草から貝類、魚類にいたるまで様々な種類の汚染に対応するための措置を実行するように求め、「ずっとやれやれといってきたのに、やっていない」と述べた。

　同氏は辞任の際、官房参与だった6週間に行ったすべての申し入れをまとめた、「福島第一原子力発電所事故に対する対策について（参与提言を中心に）報告書」と題する分厚い文書を政府高官に提出した。本紙は独立した情報源からその文書のコピーを手に入れている。

　3月16日に官房参与に着任して以来、小佐古氏とその他の専門家の一部は幅広く様々な提言を行ってきたが、中には何週間も経ってから一般に知られるようになったものもある。例えば、3月17日には、政府の緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム（ＳＰＥＥＤＩ）で「合理的な最悪のケース」を使い、住民の被曝レベルを予想することを提言した。

　3月18日には、政府の原子力安全委員会に対し、ＳＰＥＥＤＩによるシミュレーションに基づいて、当初の避難区域の妥当性を再考するように勧告した。

　しかし、ＳＰＥＥＤＩデータは3月23日まで一般には公開されず、避難区域は4月11日まで変更されなかった。政府を批判する向きは、そうした遅れによって、何千人もの福島県住民が高レベルの放射能にさらされた可能性があるとしている。

記者: YUKA HAYASHI

コメント
01. 2011年7月02日 21:10:13: soUBND2Ud6 小佐古氏については、原爆訴訟などで国側の証人として出廷するなどの実績があり、原告側の証人であった沢田先生からは「あの涙は理解できない。」という感想が漏れた。 何にせよ、小佐古氏が、今までの経緯を見直し、真に人体、生命、人民を守るという観点から行動しはじめたというのであれば、それは歓迎すべきことではある。 しかし、上記のような懸念、つまり、政治的な思惑があるのではという疑念を前提として考えるとき、 今回のインタビューは ・ウォールストリートジャーナルによるもの。 ・米作＝穀物需給の見通しに関するコメントがあること。 ・当然のことながら現政権に対する批判を行っていること。 以上について、若干の不安を感じるのは私だけであろうか。 なお、上記の事柄について、強力に理論展開する力を、今の私は持たない。 助力を請う。
02. 2011年7月02日 21:18:41: lIVROQWquE 理論展開なんか意味ないだろ。 日本の穀倉地帯がダメになれば歓ぶのは米国の穀物資本などだ。 おそらくコメ、肉、野菜、豆類、すべてが米国や中国から輸入せざるをえなくなる。 琵琶湖以東は、もはや世界の放射能実験場だ。
03. 2011年7月02日 21:44:59: SMmbKFZ61I >> 01 同じことを感じた。 日本政府（日本の原子力ムラ）からアメリカに乗り換えたってことでしょう。 あの時に涙が本物であったなら、米国や台湾での講演よりも先に、泣いた後すぐに、避難するか留まるかで苦悩している福島住民に向けて福島で講演行脚していたと思う。
04. 2011年7月02日 22:04:20: gr8J2UlbH2 ＞アクロ(ACRO)による日本の放射能モニタリング結果 (2011.06.30) http://www.acro.eu.org/OCJ_jp ３号機爆発による放射能煙のシミュレーション http://www.youtube.com/watch?v=DGnKN7NzYik
05. 2011年7月02日 22:19:24: pW4jdlZYk6 海の汚染・・・津波で化学物質容器が流れ出したことがあったが、容器から中身が漏れずに済んだのだろうか？　放射性物質とともに化学物質への警戒も必要。
06. 2011年7月02日 22:19:54: 4NzEut6wis 国民の健康を考えたら、アメリカに乗り換えたほうがベターだろう。 俺達に三十万ベクレル平方メートルの田んぼの米を食わせようとする奴らよりアメリカの方がまし。 予算、関係ない筈。今は戦時。やることをやらねば結果は死のみ、を分からない政府東電。 福島中通りの米をお前らは食うきか。
07. 2011年7月02日 22:37:49: ETU4MaSquE 真実はわからんが、こやつのは嘘泣きだとネットにでてたよ。状況を読んで東電からは金を取れないと考えたのだそうだとネットにでてた。沈む船からにげだした化けネズミらしい。金の切れ目が縁の切れ目だそうですぞ。ビックリだわ。真偽は不明。 それから被爆者は関東東北4000万人でしょうね。これから中部地方が増える。 敦賀文殊や美浜を爆発さすかもしれないから京阪神も危険の可能性も考える。玄海も危険だ。九州も瀬戸内も危ない。
08. 2011年7月02日 23:08:55: DB5KcjycmG なぜウォール・ストリート・ジャーナルなのか。アメリカ政府の意向が反映しているからではないか。 アメリカ政府は、日本の今後の国内事情を憂慮しているのではないか。日本政府は明らかに情報隠蔽をし、日本国民を被曝の危険にさらしている。いまはまだ情報操作により、事態の深刻さに気がつかない国民が多いが、そう遠くない時期に、健康異常や食物による被曝が、誰の目にもはっきりと見える時期がやってくる。 その時に、日本国民は忍耐の限界に達し、政府への激しい批判とともに、それを背後であやつる米国への批判に拡大する怖れがある。さらには米国に都合のよい体制の崩壊さえも懸念される。 よって、リスク管理の点から、アメリカの利益にかなう、妥当な軟着陸の方法を模索しているのではないか。その有力な候補として小沢一郎氏が検討されのではないか。ただし、アメリカの利益に反しない程度の改革のみ許容するという条件のもとで。 小沢一郎氏がウォール・ストリート・ジャーナル誌のインタビューを受け、同誌の世論調査でも小沢氏が第一位となったのは、無関係であると思えない。
09. 2011年7月03日 02:07:17: h69tTYryng この人は御用学者だが米国の意志に従ったのだろう。 米国は常に核戦争時を想定しており放射能汚染の対策は世界一。 この先生の言うように今年の秋はコメパニックの可能性がある。 東東北のコメはほぼダメ。あとは関東も相当危ない。 茨城や千葉、栃木はコメの産地だがホットスポットがかなり有る。 １９９５年の東北冷害コメパニックと同じになる可能性がある。 しかし政府は例によって情報隠蔽。冷害時と同じく混米としてしまう。 汚染米の混米はスーパーや外食、加工産業に出荷するだろう。 これでコンビニやスーパー、牛丼、寿司、ファミレスチェーンで 全国に拡がり国民はセシウム漬けとなる。
10. 2011年7月03日 03:46:12: yAZZCLUgJo 以前放射能汚染を憂慮するあまり、役人をやめて汚染地図を作製した方をＮＨＫＴＶで見た。 菅内閣の元官房参与、小佐古敏荘氏（61）も泣き言ばかり言わず、自分で日本国民の為に行動すべきです。 インタビューに答えるだけが行動ではない。寝ぼけているのかな？？？？ 裏がありそうですね？？？？

11. 2011年7月03日 04:01:06: oz33FCcPgo 御用学者も推進側からのカネが途切れると、 すぐ寝返って本当のことを話しだす。 どうしようもない連中だが、ずっと御用でいるよりはましか。
12. 2011年7月03日 07:09:57: 4NzEut6wis 本当のことをいうのなら、それでよし。 放射線防護の権威が言っているのだぞ。 ＷＳＪであるのは、小沢の時もそうだったが、日本のマスコミがまともでないから。 朝日や読売やＮＨＫや民放が、この手の報道をすると思うか。 小沢のインタビューも、迫力あって、いいものだった。実行力をともなともなってほしい。アメリカと握れ！
13. 2011年7月03日 11:51:34: hMSb2SEyNI 先日のシンポジュウムに参加したが、 官邸や原発現場にアメリカが潜り込んでいて、官邸や東電を操っている。 汚染水を海水に流したのもアメリカの命令で、アメリカにコントロールされている情けない国だと指摘していた。 元々、原子炉自体が欠陥品で事故が起こることをアメリカの学者が予測していた。 それを隠すためにアメリカが監視しているのではないか。 自国が破滅することに危機感もなく、アメリカに加担しているおめでたいに日本人達。
14. 恵也 2011年7月03日 14:43:40: cdRlA.6W79UEw : tXYZOWAnfg >> もし基準値を超える放射能が検出された場合は出荷を停止すると付け加えた。 これはたくさん出てくるのは確実だ。 今の販売体制だと、俺が百姓なら農協などを通さずに販売ルートを見つけよう とするだろう。 今の賠償体制じゃ金無し地獄に落ちそうで、とてもじゃないが検査は遠慮したい。 それに１％くらいのサンプル調査で落第したら残りの９９％も廃棄処分だろう。 賠償金は来年の今くらいに半額くらいは賠償されても焼け石に水だ。 やれるのは神社仏閣で祈願して貰うくらいかな。 魚に関しては、チェルノブイリでは小魚はその年に最高になり大魚は翌年に最高 放射能ランクになりましたが、フクシマはまだ流出してるから・・・・ 本当に政府の対策は遅すぎる。 >>03　あの時に涙が本物であったなら、 これは本物。 ただし人間は感極まったら、簡単に出てくるもので信用はできん。 原発推進派から脱原発派に鞍替えする人が大勢出てこないと脱原発にはならんので 俺としてはどんな人でも、どんな行動でも大歓迎だ。 >>13　汚染水を海水に流したのもアメリカの命令 アメリカの了解というべき。 確かに政権やマスコミ、官僚にエージェントはたくさん居るけど命令は出せんよ。 東電のバカが官邸の合意を得てアメリカの了解の下に実行したの。
15. 2011年7月03日 20:15:32: DfqVbfqIZ2 小さな子供さんのいる家庭は、22年産の米を買いだめしなさい。米屋はどうせ秋になれば混ぜて売っちゃうし、23年産は分析結果出るまでは、危なくて食えないでしょう。
16. 2011年7月03日 22:42:38: ZRgriY4DPA 小佐古とやら、まずは安全神話をふりまいた極悪人であることを反省なさい。
17. 2011年7月04日 00:00:28: SMmbKFZ61I >>08 鋭い読みですね。勉強になります。
18. 2011年7月04日 00:49:37: 7ZYi0QQwXg 非常に真摯な学者の言葉が聞けて、うれしいです。参考にします。貴重な提言を生かさなかったスッカラカン政権のひどさに、あらためて腹が立ちます。自民党ならもっとスムーズに行っただろうに。原発通を自認するバカは自民党幹部にはいないから、素直に提言を受け止め、実行に移したでしょう。
19. 2011年7月04日 01:35:25: h6cbKB908I すくなくとも、今現在国民にとっては助かる言動をしてくれているなら 敵視すべきでない。 過去は過去、今は今の広い心を持つことも大事だ。
20. 2011年7月04日 02:59:56: JrPYjVYQO2 カリフォルニア米は安くて美味しくなりました。 最近は名前や袋も日本みたいで小売価格は６キロ／１８ドル位。

21. 2011年7月04日 08:05:08: i37fD8kRRc 独占的旨味率の低い(？)原発利権を解体し、脱原発後利権をにらんだダヴィデ岩男率いる米軍産複合利権が、仙石あたりを使って独占利権の再構築に取り掛かり、独占率の一層の向上を目指して動き始めたということでしょう…！？ 孫氏率いるソフトバンクも、そのための橋頭堡なのかもしれない。 一寸穿った見方かもしれないが．．．

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