http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/600.html
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てんさい(い)さんが転載してくれた「2011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発」(http://www.asyura2.com/11/genpatu13/msg/517.html)を読んでの感想である。
Space of ishtaristさん(以降分析者と略す)の多角的視点から分析された内容は高い評価に値する。
私にとって、3号機問題は、水素爆発関連で投稿したくらいで、あまり突っ込んだ分析をしていなかったのでとても刺激になった。
とてもよくまとめられた労作なので、その論に沿いながら再度事故初期の状況を顧みたい。
[その1]で、分析者が「3号機格納容器内爆発」の傍証としている放射性物質の降下(各地での大気中核種分析)について触れ、[その2]で眼目とも言える「3号機格納容器内爆発」そのものの妥当性を考える。
分析者は、「もっとも重要な放射能汚染は3月21日に起きていることは、あまり一般には知られていません」と切り出し、そこから論を進めている。
もっとも重要という表現が的確かどうかは別として、各所で行われた大気中核種分析を見ればわかるが、3月20日から21日にかけて“鮮度がいい”核分裂生成物とその派生物が15日に次いで大量に放出されたことは間違いない。
※ 幅広い核種分析を行って公表しているつくばの「高エネルギー加速器研究機構」・高崎の「CTBT放射性核種探知観測所」・東京世田谷の「東京都立産業技術研究所駒沢支所」のデータ公表サイトを末尾に掲載。文科省の「環境放射能水準調査結果(定時降下物)」は開始時期の問題から省略。
福島第一の事故では、事故翌日3月12日から21日にかけて、「過大な圧力で生じた格納容器からの漏れ」・「ベント」・「水素爆発(ある種のベントの結果)」・「原子炉損壊」「格納容器損壊」「圧力抑制室損壊」といったイベントを通じて、大量の放射性物質が核燃料から放出され大気中(及び外部)に流出した。
飯舘村など福島第一の北西方向30kmから40kmにかけての地域で問題になっている高濃度放射能汚染も、この時期に放出された放射性物質の降下・蓄積が原因である。
それらの地域における高濃度汚染問題が政府の口から出るようになったのは4月中旬からだが、それは、半減期が短いヨウ素131が急速に安定物質に変わりリアルで計測する線量が急速に落ちるのを待ったからに他ならない。
放射性物質は、3月21日後も絶えることなく大気中にも飛散しているが、漏出の中心は原子炉に注入された水とともに流れ出る“汚染水”へと移っていった。
分析者は、「もっとも重要な放射能汚染は3月21日に起きていることは、あまり一般には知られていません。その汚染源が3月20日-21日にかけての3号機格納容器内爆発であること、それは再臨界事故である可能性が高い」と、放射性物質の大量放出に至った原因も語っている。
20日から21日にかけての放射性物質の大量放出は既知だから、対象論考の眼目は「3号機格納容器内爆発」にあると言える。
[その1]ではその賛否を控え、まずは外縁的論拠から見ていくことにする。
■ 放射性物質フォールアウト分析の検証
【引用1】
「3/21に関東地方を襲ったフォールアウトは、大気圏核実験が全盛期だった過去50年間の総量に匹敵する莫大なものであった。
この放射性物質は、よく言われるように、3/15までに福島第一原発から放出された放射性物質が雨によって落ちてきたものでは決してなく、直前に放出されたものである。」
3月21日は事故後初めて関東エリアで本格的な降雨があった。
その雨によって、それまでの放出で大気中に漂っていた放射性物質がフォールアウトした側面も否定できない。
しかし、いくつかの施設で行われた核種分析でわかることだが、20日と21日に顕著に増大した放射性物質は、分析者の主張通り、まさにその両日に福島第一の核燃料物質から放出され飛散したものである。
それを確認するための核種分析データは、高崎(CTBT)のものがいちばんわかりやすい。
半減期が2.3時間のヨウ素132や69.6分のテルル129が、15日と同様きっちり検出されており、“再臨界かどうかはともかく”、15日までに飛び出たものではなく近い過去に核燃料から飛び出た放射性物質であることを物語っている。
ただ、分析者の大気中核種分析に関する見解には、明確な誤りが見られる。
それは、21日(20日を含む)と15日の核種構成に根本的な違いがあると認識し、15日の放出を軽く考え、21日の放出をとても重くみていることである。
【引用2】
「現在、様々な農作物や海産物などから放射性物質が検出され、内部被曝が懸念されておりますが、そのもっとも重要な被害は、主に関東地方に降りそそいだ3月21日の放射性物質降下(以下フォールアウトと呼びます)によってもたらされました。3月15日にも放射性物質が放出されたことはよく知られていますが、それは希ガスが主体であり、農作物や人体への被害は比較的軽微だと考えられるからです。それにたいし、21日のフォールアウトは、ヨウソ・セシウム・ストロンチウムなどが主だったと考えられています。」
【引用3】
「諸々の研究機関による核種分析により、15日と21日では、その主成分が異なることが判明しています。15日は、キセノン133など人体に軽微な影響しかない希ガスが主ですが、21日のフォールアウトでは、セシウムやヨウソ・テルルなどが主体であることが判明しています。15日に希ガスが多かったのは、原因が2号機のサプレッションチェンバーの破損であるため、放射性物質が一度水を通してから放出されたためであると考えられます。すなわち、事実上、ウェットベントをしたのと同じ効果があったのではないでしょうか。」
まず、「15日に希ガスが多かったのは、原因が2号機のサプレッションチェンバーの破損であるため、放射性物質が一度水を通してから放出されたためであると考えられます。すなわち、事実上、ウェットベントをしたのと同じ効果があったのではないでしょうか」と評価しているが、これまで2号機問題で何度か書いてきたように、すでに14日のお昼頃にはS/Cプールの水は枯渇しているから、ウエットベントは期待できない状態にあった。(水があれば、高圧蒸気の噴出力を緩和して損傷も防ぐことができた)
ウェットベントどころか、圧力抑制室を損壊させるほどの高圧力で原子炉内の蒸気が噴出されてまさにドライベントが行われ、既にメルトスルーしていたと言われている格納容器からも、圧力抑制室に開いた“穴”を通じて放射性物質が大量に漏れ出したのである。
これから示すデータは、そうであるという傍証でもある。
「高エネルギー加速器研究機構」(つくば)の3月15日の測定は、14:39から17:34という短い時間に採取した105m3の大気を対象に行っている。
一方で、3月20日に関わる測定は、3月20日10:00から3月22日9:54までのほぼ48時間にわたって採取した1724m3の大気を対象に行っている。
採取した量や時間は考慮されたかたちで測定値となっているから、採取した大気の量の違いが問題なのではない。
次に示す世田谷(東京都立産業技術研究所)のデータを見るとわかるが、2号機の圧力抑制室損壊に伴い15日早朝に放出された放射性物質の飛来は、午前中がほとんどで午後になると大きく減少しているから、東京より福島に近いつくばで午後2時半過ぎから採取した「高エネルギー加速器研究機構」の測定値が小さくなってしまうのは当然である。
このような理由で、異なる日付でのセシウム系とヨウ素系の降下量を比較するのにより妥当性が高いと思われる高崎と世田谷のデータを示す。
[高崎:CTBT観測所]
(15日)
セシウム134・136・137の合計【13.3ベクレル/m3】
ヨウ素131・132の合計【25.7ベクレル/m3】
(20日+21日)
セシウム134・136・137の合計【7.6ベクレル/m3】
ヨウ素131・132の合計【10ベクレル/m3】
[世田谷:東京都立産業技術研究所]
(15日10:00〜11:00;単位時間Max値)
セシウム134・137の合計【124ベクレル/m3】
ヨウ素131・132の合計【522ベクレル/m3】
(20日&21日:21日8:00〜10:00;単位時間Max値)
セシウム134・137の合計【13.4ベクレル/m3】
ヨウ素131・132の合計【19.4ベクレル/m3】
※ 世田谷:15日の測定値の時間的推移(詳細は公表データを参照:ここではセシウム134を示す)
09:00台:12ベクレル/m3
10:00台:64ベクレル/m3
11:00台:24ベクレル/m3
12:00台: 2.2ベクレル/m3
13:00台: 0.8ベクレル/m3
14:00台: 1.0ベクレル/m3
15:00台: 1.9ベクレル/m3
16:00台: 1.9ベクレル/m3
17:00台: 1.8ベクレル・m3
18:00台: 2.4ベクレル/m3
19:00台: 2.0ベクレル/m3
20:00台: 0.9ベクレル/m3
21:00台: 0.7ベクレル/m3
22:00台: 0.9ベクレル/m3
23:00台: 0.3ベクレル/m3
世田谷のほうは1桁違う差を見せているが、風向きの関係などもあり、その差が放出量の差に直結するとは言えない。
ともかく、高崎・世田谷の両方で、セシウム系のみでも検出放射性物質の総量でも、15日の方が20日(&21日)より圧倒的に多いことがわかる。
検出された放射性物質の全体に占めるセシウム系の割合は、20日・21日のほうが高いと言える。
※ なお、放射性物質の濃度測定は放出された放射線のカウントで行っているので、ベクレル数が大きいからといって、その物質の絶対的な量が多いとは限らない。半減期が短い物質は頻繁に崩壊して放射線を出すのでベクレル数が大きくなり、半減期が長い物質はその逆になる。
ここでふれた放射性物質の半減期は次の通りである。
セシウム134:2.1年
セシウム136:13.1日
セシウム137:30.1年
ヨウ素131:8日
ヨウ素132:2.3時間
セシウム136とヨウ素131は半減期が近いが、圧倒的にセシウム系の半減期が長いので、セシウム系のベクレル数は小さくなる。
250ベクレル/m3のヨウ素131と1ベクレル/m3のセシウム137の量を考えると、ベクレルでは250分の1しかないセシウム137のほうが、5倍以上も多いことになる。
もちろん、人体などへの影響をみるのは絶対量ではなくベクレルのほうがふさわしい。
【引用4】
「21日のフォールアウトは想像を絶するものだったことが、直後から判明しています。文部科学省は、毎日の全国各地のヨウソ131とセシウム137のフォールアウトを「環境放射能水準調査結果(定時降下物)」として発表しています」
残念ながら、文科省のこのデータは、3月18日9時からの採取が最初で、それ以前のデータは存在しない。
その意味で、「ひたちなか市では1平方メートルあたり20万ベクレル以上のヨウソ131が、25000ベクレル以上のセシウム137が地表に降り積もったと考えられます。新宿では同じく、ヨウソ131が約85000ベクレル、セシウム137が6400ベクレルです。そして、これら大部分が、20日から23日までの3日間に降りそそいでいるのです」という説明は、今回の原発事故に伴う汚染の深刻さを表す重要な指摘ではあるが、上述した大気中の核種分析及びその濃度のデータを考慮すると、15日いち日でその期間に匹敵するかそれを上回るほどの汚染があった可能性がある。
■ 東大早野龍五教授批判の検証
分析者は、放射性物質の大量放出が3月15日までに終わったとする認識を批判しているが、これまで見てきたことからもそれは正しい。
福島第一の事故に伴う放射性物質の大気中への大量放出はこれまでのところ3月21日で終わり、主要な放射能汚染は“汚染水”問題に移った。
分析者は、「放射性物質「3月15日に福島原発より大量放出。以降、大気への大量放出は起きていない」早野龍五教授が最近の測定とシミュレーションで結論」(http://getnews.jp/archives/108522)を批判対象の代表として取り上げている。
私自身は、検索で引っかかったことがあったので早野教授の存在は知ってはいたが、その見解に注目したことはなかった。
最初に取り上げている「放射性プルーム(放射性雲)」の問題だが、早野教授は3月16日が原子炉(核燃料物質)からの最後の直接放出という立場から、“長期浮遊”説を採り20日や21日の降下に結びつけたと推測する。
そして、その根拠をキセノン133の検出に求めている。
「日本分析センターにおける空間線量率」を利用しているようだが、キセノンのデータは現在見当たらないので、高崎(CTBO)のデータを提示して、早野説の誤りを指摘しておく。
[高崎観測所放射希ガス(キセノン:Xe133)放射能濃度]
※3月16日18:04まで測定範囲外、3月16日18:04から22:04まで停電で測定不能
3月16日22:10〜3月17日10:10【400ベクレル/m3】
3月17日10:10〜3月17日22:10【 50ベクレル/m3】
3月17日22:49〜3月18日10:49【 30ベクレル/m3】
3月18日10:49〜3月18日22:49【 4ベクレル/m3】
3月18日22:49〜3月19日10:49【 8.7ベクレル/m3】
3月19日10:49〜3月19日22:49【 1.5ベクレル/m3】
===========================================================
3月19日22:49〜3月20日10:49【 4.8ベクレル/m3】
3月19日21:00〜3月20日22:49【 9.9ベクレル/m3】
3月20日22:49〜3月21日10:49【 9.61ベクレル/m3】
3月21日10:00〜3月21日22:49【 62.4ベクレル/m3】
3月21日22:49〜3月22日10:49【 44.6ベクレル/m3】
3月22日10:49〜3月22日22:49【 30.9ベクレル/m3】
3月23日11:27〜3月23日23:27【 8.8ベクレル/m3】
3月23日23:27〜3月24日11:27【 3.1ベクレル/m3】
3月24日11:27〜3月24日23:27【 4.59ベクレル/m3】
3月24日23:27〜3月25日11:27【 2.8ベクレル/m3】
3月25日11:27〜3月25日23:47【 1.46ベクレル/m3】
3月15日の2号機圧力抑制室損壊の影響である16日の400ベクレル/m3ほどの値ではないが、21日にも62.4ベクレル/m3の値が検出されており、値の推移から3月20日から21日にかけて核燃料物質から新たな放射性物質の放出があったと推定できる。
※ Xe133は半減期5.2日でCs(セシウム)133に変わる。表に一緒に出ているXe131mは、I(ヨウ素)131のベータ崩壊で生まれる。
高崎を観測拠点とするCTBO事務局は3月29日以降希ガス(キセノン)の放射性濃度を数値の形では示していない。
この20日・21日以降、現在に至るまで、福島第一に由来する各地の環境放射線量は、緩やかに減少していると言えるもののほんとに緩やかで、“高止まり”のままである。
東京は3月15日の0.8μSv/hをピークとし、3月20日に0.0524μSv/hまで下がるが、3月22日に0.166μSv/hに上昇し、4月1日まで0.1μSv/h台、5月7日まで0.07μSv/h台と長期横ばいの線量推移であり、29日現在でも0.624μSv/hの高さを示している。
既に100日も過ぎている6月29日の線量は、いくつかの爆発もあったあとの3月20日よりも高いのである。
(事故直前の3月10日は0.0372μSv/h)
福島第一の現場では、“汚染水”にとどまらず、大気中にもじくじくと放射性物質が漏出しているが、高感度探知能力を持つ高崎では核種単位で1ベクレル/m3未満の測定はあるにはあるが、3月22日のI−131:2.1ベクレル/m3を最後にまとまった検出値はない。
このことから、わずかな降下物はあるが、各地の空中線量は、3月22日までに降下した放射性物質とりわけ半減期が長い物質(セシウム系など)が放出する放射線によるものであり、放射能汚染がどれほど長期的な問題であるかを明瞭に物語っている。
新たな降下物は少ないので、学校など重点箇所から急ぎ除染を進めていけば、放射線量を大きく減らすことができる。
[その2]で、これらの「汚染源は明らかに3号機であり、おそらく福島第一原発最大の事故」であり、3号機では、「格納容器内の爆発的事象によって圧力容器・格納容器とも大破したことが明らかである」という分析の妥当性について考える。
※ 核種分析資料公表サイト:
つくばの「高エネルギー加速器研究機構」
http://www.kek.jp/quake/radmonitor/index.html
(参照される方への意:3月15日分は測定を認め、報告書(6)に修正したものが掲載されている)
高崎の「CTBT放射性核種探知観測所」
http://www.cpdnp.jp/pdf/110624Takasaki_report_Jun19.pdf
東京世田谷の「東京都立産業技術研究所」
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/whats-new/measurement.html
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