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長期的にはわからないが、先進国を中心に、ここ当分は脱原発の動きが続く
過去の延長で投資を拡大せず、既存原発の安全技術や廃炉技術、事故対応技術などで、こつこつ儲けることを考えるべきではないか
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110621/221044/?ST=print
日経ビジネス オンライントップ>アジア・国際>大竹剛のロンドン万華鏡
フクシマの教訓に学べば、原子力の未来は明るい
世界最大原子力企業、仏アレバ次期CEO独占インタビュー
2011年6月27日 月曜日
大竹 剛
東京電力の福島第1原子力発電所で、放射能汚染水の浄化処理が始まっている。その成否のカギを握っているのが、フランスのアレバだ。同社は、総合原子力企業として世界最大。ウランの採掘から濃縮、原子炉の設計・建設、さらには使用済み核燃料の再処理まで、すべて1社でこなす。手掛けないのは、原発の所有・運営と使用済み核燃料の最終処分くらいだ。
そのアレバのCEO(最高経営責任者)が交代する。フランスの原発ビジネスを牽引し、“アトミック・アンヌ”とも呼ばれた著名経営者、アンヌ・ロベルジョン氏が6月末で退任し、新たに同社で国際事業やマーケティングなどを担当していたリュック・ウルセルCOO(最高執行責任者)が昇格する。
事実上の更迭ともされるCEO交代の背景としては、同社が開発した新型原子炉EPR(欧州加圧水型)の建設コストが膨らみ、輸出が思うように進んでいないことや、世界最大の原子力発電会社であるフランス電力公社(EDF)との間に、原発推進における主導権争いがあったことなどが取りざたされている。次期CEOへの昇格が決まる前の5月末、ウルセル氏にインタビューした。(6月27日号発売の日経ビジネス・特集「原発大国フランス」も併せてご覧ください)
(聞き手は大竹剛=日経ビジネスロンドン支局)
―― 福島第1原発事故の直後から、日本への支援を積極的に打ち出している。どのような活動をしているのか。
アレバのCEO(最高経営責任者)に昇格するリュック・ウルセルCOO(最高執行責任者)。
ウルセル 福島第1原発の事故直後に日本への支援を打ち出したのは、日本の原子力産業とは長い関係があるからだ。電力会社や日本原燃など、非常に深い付き合いがある。支援を申し出るのは、自然なことだ。
最初は、マスクや(核分裂を抑制する)ホウ酸、放射能測定装置など非常用の装置や物資を送った。事故の2週間後には、放射能汚染水の処理に関する専門家を派遣した。事故後、アンヌ・ロベルジョンCEOは2回、日本を訪れている。
そして今、支援は第3段階に移行している。現在、始まろうとしている高レベル放射能汚染水の処理に専門家を派遣している。さらに、東京電力と共に、使用済み核燃料の処理や廃炉などを含め、復旧に向けた解決策を提案している。東京電力や政府と密接に協力しており、福島第1原発の事故関連には総勢100人以上が関わっている。
日本への支援、儲けのためではない
―― 汚染水処理に関して、アレバの受注規模を教えてほしい。
ベオリア(フランスの水処理大手)と協力して提案した装置の値段は、(試運転の費用を含み)約6000万ユーロ(約70億円)。4億ユーロ(約470億円)といった数字が日本で出回っていることは知っているが、それは誤解だ。装置の提供は、日本との連帯を示すのが目的で、儲けるためではない。
―― 汚染水処理や廃炉のほかに、東京電力にはどのようなことを提案しているか。
私たちは、高い放射能の下でも使うことができる特別な装置を持っている。例えば、こうした状況で使えるロボットなどがそうだ。核燃料サイクルの経験があり、しかもその経験は、高レベルの放射性物質を取り扱う自社の施設で培われてきた。
さらに、原子炉ビジネスから得られる経験もある。アレバには、(福島第1原発で使われている)沸騰水型軽水炉(BWR)の技術の専門家もいる。(編集部注:アレバが開発・製造してきた原子炉は加圧水型軽水炉=PWRと呼ばれる)私たちは、東京電力を支援するために、様々な専門技術を提案している。
特に、使用済み核燃料の取り扱いや、その再処理とリサイクルで専門的技術がある。この技術は六ヶ所再処理工場にも提供している。使用済み核燃料の取り扱いには慣れており、福島原発では様々な場面で支援できる。
―― これまでも、日本とは深い取引があった。東京電力など日本の電力会社とは、どのようなビジネスをしてきたのか。
まず、核燃料の製造のほか、天然ウランやウラン濃縮を提供している。そしてもう1つが、使用済み核燃料の再処理関連だ。六ヶ所村での協力関係はその1つ。そして3つ目が、三菱重工業との協力関係。三菱重工とは共同で「ATMEA」という原子炉を開発しているほか、燃料分野でも(製造・販売で)合弁会社を持つ。私たちのビジネスモデルのすべての点において、日本とは協力関係にあり、その中でも東京電力は私たちにとって非常に重要な顧客だ。
フクシマ級の事故にも耐える最新原子炉
―― 今、アレバは“第3世代プラス”と呼ばれる新型原子炉「EPR(欧州加圧水型)」に力を注いでいる。従来の原子炉より大幅に向上させたという安全性について教えてほしい。
EPRは、1990年代に、フランスとドイツのメーカー、電力会社、そして安全規制当局の協力関係によって設計された。EPRは、安全当局が最初の段階から設計に参加した唯一の原子炉だ。一般的には、まずメーカーが原子炉を先に開発し、それを安全当局に見せるという流れだが、EPRでは安全当局が原子炉開発の一端を担った。
そして、設計においては、当時、非常に強い決意で最も高い安全基準を選択した。その基本方針は、「もし、新しい原子炉を設計したいのなら、そして、もし、その原子炉を国民に受け入れてもらいたいのなら、最も高い安全基準に従わなければならない」というものだった。今、福島のような事故を見たとき、EPRだったら福島のような事故にも耐えられただろうと思うのは、そのためだ。
EPRには、6台の非常用発電機がある。それぞれが原発が必要とするすべての電力を生み出すことが可能で、それらは、航空機の衝突や洪水にも耐え得る2つの異なる建屋に分かれて設置されている。さらに、(水素爆発を防ぐために)水素を水に変える水素再結合装置が一定数、原子炉内に備えられている。こうした特徴はフィンランドの安全当局にも認められ、彼らはEPRの設計変更は必要がないと結論づけた。
現在、EPRはフィンランド、フランス、中国の3カ国で建設しており、英国や米国でも近々許可が下りる見込みだ。そうなれば、主要5カ国で許可された唯一の技術となり、設計の良さが強く認識されて、EPRはほかの国の安全当局にとっても受け入れやすいものとなるだろう。
―― 三菱重工と開発している「ATMEA」と「EPR」は、何が違うのか。
出力が違う(EPRは165万キロワット、ATMEAは110万キロワット)。ATMEAはEPRと同じ高い安全基準を反映している。ATMEAはフランスの安全当局に審査されており、私たちは日本がATMEAをベトナムなどに売り込んでくれることを期待している。日本とフランスの協力で生まれたATMEAは、世界市場で販促していく上で良いポジションにあると思う。
原子力推進、世界の流れは変わらない
―― EPRは安全性だけではなく、建設コストも高い。フィンランドでは建設の遅れなどでコストがかなり膨れ上がっている。値段が高すぎるという意見もあるが。
中国では、EPRのプロジェクトは予算通りに進んでおり、スケジュールも遅れていない。EPRは現在、世界中で数多くの入札に参加している。現時点で、安全すぎるから値段が高すぎるとは言えないだろう。
―― 先進8カ国(G8)首脳会議は原発の安全性向上で合意し、欧州連合(EU)は原発の安全性を検査する「ストレステスト」を実施している。こうした原発のさらなる安全性向上を求める動きは、EPRの販売に追い風となるか。
その通り。世論は原発を受け入れる際、新しい原子炉に対して高い安全基準を求めるだろう。EPRは、こうした新しい安全要件を十分に満たすと同時に、(価格も)競争力がある。私たちは、EPRの販売について楽観的だ。
数カ国、具体的にはドイツ、スイス、イタリアは脱原発を決めたが、多くの国、例えば英国やポーランド、チェコ、オランダ、インド、中国などは、福島第1原発事故から教訓を学びつつも、原発の計画を維持する決断を下している。脱原発を決めた国より、ずっと多くの国が原発推進を続けることを決めている。
同時多発災害に備えた危機管理を
―― アレバとして、福島第1原発事故からどのような教訓を学ぶか。
最初に、私のコメントは、日本や東京電力に対する批判ではないということを、はっきり申し上げておきたい。その上で、学べる教訓をいくつか上げてみたい。
まず、複数の出来事が同時発生するかもしれないことを、理解しておく必要がある。地震と津波が同時に襲うことを想像するのは難しかったかもしれないが、今後は、異なる出来事が同時発生する事態に、備えておかなければならない。
2つ目として、非常時対応のさらなる見直しが不可欠なことは、明らかだ。原発の安全性は、その原発の設計と、原発の運営者、そして、危機管理の良し悪しに依存する。危機管理においては、従業員は訓練されているか、十分な設備は手に入るか、危機の長期化に組織は対応できるかどうか、といった観点が重要になる。(福島第1原発事故後)フランス政府は、こうした危機管理をもっと訓練するように、と提案した。
「安全・防御・透明性」の強化が不可欠
―― 原発に対する風当たりは強いが、原子力ビジネスの将来は明るいと思うか。
私たちが一緒になって、謙虚に、福島第1原発事故から教訓を学ぶことができれば、楽観的な未来が待ち受けていると確信している。安全、セキュリティー、透明性という自分たちの価値観に忠実であれば、未来は明るい。
原子力を推進したいのなら、高い安全基準を促進し、しっかりしたセキュリティーを備えた施設を建設し、透明性の高い事業をすることが不可欠だ。国民が(原子力に)疑問を呈するのは、自然なことだ。私たちは、しっかりと国民に対して説明し、常に疑問に答えなければならない。こうした行動を続けることができるなら、私は原子力に対して楽観的でいられる。
原子力を推進する理由は、変わらない。私たちは、二酸化炭素を排出しない電力が必要だし、すべての経済、特に新興国経済は電力を必要としている。すべての経済は競争力のある電力が必要で、多くの国は天然資源に恵まれず、エネルギーの独立を守りたいと思っている。こうした事情は、日本やフランスなど多くの欧州諸国に共通して言えることだ。
福島第1原発事故は、原子力を推進するやり方を見直し、先に挙げた安全、セキュリティー、透明性という3つの主な価値観を絶対に守り抜かねばならないと決意させるきっかけとなっている。しかし、(原子力を取り巻く)基本的な環境は変わっていない。
このコラムについて
大竹剛のロンドン万華鏡
ギリシア危機を発端に、一時はユーロ崩壊まで囁かれた欧州ですが、ここにあるのは暗い話ばかりではありません。ミクロの視点で見れば、ベンチャーから大企業まで急成長中の事業は数多くあるし、マクロで見ても欧州統合という壮大な実験はまだ終わっていません。このコラムでは、ロンドンを拠点に欧州各地、時にはその周辺まで足を延ばして、万華鏡をのぞくように色々な角度から現地ならではの話に光を当てていきます。
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