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昨日の続きです。今回は「電源3法交付金なしには原発を建設できず、最終的には料金に上乗せされて電気代を高くしている」ということについて述べることにしましょう。
ここで言う電源3法というのは、電源開発促進税法、特別会計に関する法律(旧電源開発促進対策特別会計法)、発電用施設周辺地域整備法のことです。これらの法律に基づいて、発電施設の建設や整備のために交付金が支給されてきました。
それは、発電する施設と電気を利用する場所とが離れていて、施設のある地元にはメリットがないからです。交付金によって受け入れるメリットを人為的に作り、発電所の建設などを促進しようとしたのが、この交付金でした。
これらが制定されたのは1974年で、田中角栄首相、中曽根康弘通産相の時でした。電源開発をお金で解決しようとしたのはいかにも角栄らしいやり方でしたし、その意を汲んで実行したのが中曽根さんだったというのも、いかにもというところでしょうか。
それまで、日本の電源開発は火力発電所に比重を置くものでした。しかし、1973年に第1次石油ショックが発生して、火力発電の原料である石油が高騰します。
原油の輸入に依存する火力発電所は大きな困難に直面し、日本経済の混乱も拡大しました。その結果、石油を原料とする火力発電以外の電源を開発する必要性が生まれ、リスクを分散して火力発電への依存度を低めるために、原子力、水力、地熱による発電を促進しようとして制定されたのが電源3法でした。
法制定の趣旨は火力発電への依存度を低めるというのが目的で、地熱発電の開発促進なども目指されていたのです。しかし、次第にこれらの自然エネルギーの開発は後景に退き、原子力による発電が前面に出てくるようになりました。
この交付金の元になっているのは、電源開発促進税というものです。それは、1KWについて37.5銭になり、東京電力管内で毎月約108円が電気料に上乗せされて徴収されています。
つまり、原発の開発促進のための交付金は電気事業連合会などを通じて電気料金に上乗せされ、利用者の負担とされているわけです。このようにして徴収された税金は、特別会計に関する法律によってエネルギー対策特別会計に組み入れられ、発電用施設周辺地域整備法によって原発を受け入れた自治体に公布されます。
この交付金の用途は、2002年までは一部の公共用施設に制限されていました。それでは使いにくいということで、2003年以降は地場産業の振興や福祉サービスの提供事業、人材育成などにも使えるように拡充されています。
たとえば、2004年度の場合、電源3法交付金は約824億円で、福島県には約130億円、柏崎刈羽原発のある新潟県には約121億円、敦賀・美浜・大飯・高浜原発を抱える福井県には約113億円が公布されたそうです。六ヶ所村核燃料再処理施設や放射性廃棄物管理施設のある青森県にも約89億円が渡されています。
2010年度の場合、標準的な原発(130万kw)1つに対して運転開始前10年間に約450億円、開始後35年間に約1240億円の交付金が支出されています。これらは全て電気を使う利用者の料金でまかなわれたものです。
そしてこれらのお金は、「福井・敦賀市のきらめき温泉リラポート」に24億3000万円、「青森・六ヶ所村の文化交流プラザ」に31億9000万円などの形で支出されます。こうして、電源3法交付金という「麻薬」によって地元の自治体は「中毒患者」となり、原発なしでは生きられなくなっていくのです。
電気事業連合会(電事連)が出している発電コストの比較では、1KW当たり原子力5・3円、火力6・2円、水力11・9円となっていて、原子力が一番安いとされています。しかし、立命館大国際関係学部の大島堅一教授が有価証券報告書を元に、これまで原発に払ってきた総コストを発電実績で割り、それに電源開発促進税等の税金を入れて計算した結果、発電単価は原子力が10.68円、火力9.9円、水力7.26円となって一番高いのが原子力発電でした。
立地や開発の費用、使用済み燃料の再処理費用だけでも11兆円もかかっているといいます。これらの資金は電源3法交付金によってまかなわれており、電事連の発電コストには計算に入れらていませんでした。
これでは、安くなるのも当然でしょう。しかも、深刻な原発事故が発生した今となっては、事故の収束や汚染水処理のための費用、放射能による被害への賠償金などは数十兆円とされていますが、最終的には一体、どれだけの金額になるかは誰にも分かりません。
電源3法交付金の使い方を変えるべきでしょう。エネルギー対策特別会計の支出対象を原発から地熱などの自然エネルギーへと転換するべきです。
脱原発のためのエネルギーシフトを促進するための資金として、電源3法交付金の性格を転換しなければなりません。そうすれば、それは原発依存を生み出す「麻薬」ではなく、「肥料」になることができます。自然エネルギーの芽を大きく育てるための「肥料」に……。
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