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原子力村の「不都合な真実」 原発大手企業と霞が関 ズブズブの証拠を入手
安全なんか、知ったことか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/9843
2011年06月28日(火) 週刊現代 :現代ビジネス
原子炉メーカー、プラント企業、ゼネコン……。膨大な数の原発企業の社員が霞が関で働いていた。勤務先は原発推進部署から規制部署にまで及ぶ。原子力村の馴れ合いは、想像以上に深く広かった。
受け入れ部局 出身法人名 クリック拡大
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(註)吉井英勝・共産党議員が入手した資料をもとに作成(次ページ表も同様)。なお※1の社員は「関西電力→財団法人・電力中央研究所→内閣府」という形で採用。※2は'09年4月1日〜'11年4月18日までの間に採用した職員の実績。※3は'08年8月15日までの在籍者を調査している
■規制する側とされる側が同居
ある東京電力の元取締役は、数年前に政府の諮問機関で委員を務めたとき、会議のたびに姿を現す内閣官房の職員≠フ仕事ぶりに感心したという。説明にそつがない、資料もよくできている。注文をすれば、すぐに要求に応える。そこで「日本の官僚も捨てたもんじゃない」と思って声をかけると—。
「彼は『私は官僚ではなく、東電の社員です』と言ってきた。内閣官房に出向して働いていたんです。非常勤なので採用期間が切れて会社に戻るときは、官僚から『帰らないで』と泣きつかれたそうだ」(東電元取締役)
本誌は先週号で、霞が関に出向して「覆面公務員」として働く東電社員の実態をレポートし、大反響を呼んだ。
「官民癒着」が疑われるズブズブの関係。公にならないように法律の特例を利用して採用した上、受け入れ先は原子力行政の「中枢」と言われる原子力委員会や文部科学省の研究開発局など「原発関連部署」ばかり。原発の規制機関である原子力安全委員会(原全委)で働く東電社員もおり、規制される側と規制する側が机を並べる異常な姿が常態化していた。
ただ、原発企業と霞が関との関係はそれだけにとどまらない。今回、新たな内部リストを入手すると、東電以外にも原発大手企業社員が多数「公務員」として働いていることがわかった。
原子力委員会、原全委、文部科学省の原子力開発部門にはもちろん、原発の安全の「お目付け役」である経済産業省の原子力安全・保安院(保安院)にも採用されている。
メンツも錚々たるもの。電力会社である関西電力や日本原子力発電から東芝、三菱重工、日立製作所などの日本を代表する大手メーカーがズラリ。保安院には'01年の創設以降累計で80人超が雇われており、東芝、IHIなどの原子炉メーカーや原発プラントメーカーから、鹿島、大成建設といった原発関連の受注実績がある大手ゼネコンが並ぶ。
原子力安全院・保安院に採用された職員の出身法人別リスト
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原子力委員会の委員を9年間務めた経験のあるジャーナリストの木元教子氏が言う。
「官邸の前のかつては総理府だった建物の7階に原子力委員会の部屋があり、その隣り合わせにある事務局に常時50名ほどの職員が働いていた。事務局の中に入ると職員の顔が一望できるレイアウトになっていて、その中に民間企業からの出向者も席を持ち、仕事をしていました。
プロパーの官僚がおたおたしている中で、海外の原発事情に詳しい東芝や、パソコンに強い関電出身の人はテキパキと働いていた。放射性廃棄物の処分に関する法律を作るときには銀行の人も入っていた。原発事業に融資する際の勉強をするために出向してきたということでした」
木元氏によれば、こうした出向職員は、それぞれの委員が要望する資料を揃えたり、委員がレポートをまとめる際には表現のあり方や言葉遣いのアドバイスまでしていたという。また原子力委員会では週に一度の定例会議などがあるが、その場にも企業出身の事務局職員がいたようだ。
■ひたすら原発を推進
ただその「仕事ぶり」を聞くと、首を傾げたくなる。原子力委員会の専門委員を務める武田邦彦・中部大学教授が言う。
「私が『原子力関連予算が減る現状で、開発よりも安全の研究に予算を振り向けたほうがいい』と発言したら、事務局の一人が『武田先生には予算の話はお聞きしていません。専門分野についてのみ発言してください』と言ってきた。ほかにも事務局が原子力発電所はCO2を出さないという資料を出してきたとき、私がその根拠を尋ねると、『そんな議論はしたくない』と返してきた。彼らが民間出身者かどうかは覚えていないが、委員に事務局の職員がそこまで言うかと驚いた」
民間出身にせよプロパー職員にせよ事務局は、「原発推進派」の集まり、「原子力村」の巣窟だ。武田氏は過去に原全委の専門委員を務めた経験もあり、そこでも同じく「事務局主導の原発推進会議」が行われていたという。
「'06年に原発の耐震指針を改定した際、残余のリスク、たとえば今回福島第一原発を襲ったような想定外の津波などに対してどう対処するのかという議題があがった。このときも私が質問すると事務局が出てきてお茶を濁すような回答ばかりして、結局、残余のリスクへの対策は事業者に任せることになってしまった。
案件がいつもこうして事務局の描いたストーリーに沿ったものになるのを、当時の委員長に相談すると、『官僚にがっちり固められて、我々は何も動けない』と言っていた。要するに原全委は、民間出身職員とプロパー官僚が結託して支配していたのです」(武田氏)
国策として原発を推進したい官僚と共同戦線を張り、議論を国や事業者に都合のいい方向に誘導していく。そんな構図が透けて見えてくる。それこそが原子力村の手口なのだ。
■これで安全を守れるのか
一方、保安院で働く民間出身職員たちはまた違った仕事をしている。民間から再就職した彼らの多くが従事するのが原子力保安検査官、原子力防災専門官。全国の原発施設に隣接する事務所を拠点にし、原発所内を巡回、安全管理体制を監視する。東電の元原発職員が言う。
「検査官とは日常的に顔を合わせるので、おのずと距離は近くなる。かつては電力会社の社員と検査官の間で歓送迎会をやったり、野球大会で親睦を図ることもあった。しかも民間出身の検査官はガチガチの役人と違って、『無駄な指摘がない』と現場のウケが良い。経験的に検査のごまかし方まで知っている人もいた」
こうした色濃い人間関係が検査に何らかの形で反映することはないのか。退職したからといって、かつては発注元であった電力会社に対して厳しい審査ができるのか。今回の資料を入手した吉井英勝・共産党議員が指摘する。
「たとえば東芝の出身者が福島第一原発をはじめ、同社が受注した原発施設の安全体制を監視する検査官などに就いている。出身企業が直接関わっている原発を担当させる例はほかにも見られるが、ここに『癒着』が生まれる危険性がある」
しかも、3・11以降に東電の子会社の社員2人が保安院に再就職していることが見逃せない。東電は賠償資金を捻出するために子会社・関連会社を含めたリストラが必至だが、その社員を官庁が拾ってあげているのだ。ちなみに文科省の原発推進部署にも、3・11以降に三菱重工の社員が出向している。
福島第一原発事故の原因を徹底的に追及し、安全体制の不備がどこにあったのかを検証するべき今も、原発企業と霞が関は相変わらずズブズブの関係を続けている。こうした原子力村の「不都合な真実」を前にし、「原発は安全」などと言う彼らの言葉を信じる国民は、もういないはずだ。
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