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風知草:水に流せ、ではすまぬ=山田孝男
http://mainichi.jp/select/seiji/fuchisou/
毎日新聞 2011年6月27日 東京朝刊
菅直人首相が「脱原発」で衆院解散・総選挙に挑むという怪説がある。話題自体が永田町ボケの極みだと思う。
もとより、原発の是非を国民に聞いて悪いということはない。だが、今は原発震災鎮圧と環境汚染防止に全力を傾けなければならない非常時だ。中長期の政策を悠然と論じ、解散をめぐる駆け引きや選挙対策にうつつをぬかすヒマはない。
天下太平の政局妄想にとりつかれるのは、事故が曲がりなりにも収束に向かっていると思うからだ。放射性物質の影響は軽微と見るからだ。だが、収束に向かってなどいない。この環境汚染が、人間とそのDNAをどのくらい傷つけるか、まだわからない。無害と信ずるに足る確証はどこにもない。
福島原発でメルトダウン(炉心溶融)が進み、溶け出した核燃料が地下水に迫っている。汚染された地下水の海洋流出を食い止める地中の防護壁が必要だ。専門家が急を告げ、政府もその気になったが、東京電力が「待ってくれ」と言う。
この問題は先週20日の当コラムで書いた。すると、その日の原子力安全・保安院の定例記者会見で質問が出て、西山英彦審議官がこう答えた。
「根本的な対策を実行してまいりますが、急ぐ必要はないと認識しております」
株主総会乗り切りのために東電が準備した応答要領に沿っている。なぜか。原発事故をめぐる東電と政府の責任の線引きがあいまいだからだ。
空前の原発震災の後始末を民間企業である東電に押しつけているという負い目が、政府側にある。「株価対策も考えて」と東電に泣かれれば配慮せざるを得ない弱みがある。
歴史的大事件に直面しているというのに、なぜ、及び腰ともたれ合いの態勢しかとれないのか。問題が大き過ぎ、その広がりと深刻さをとらえきれないからだと筆者は思う。
東電は4月、福島原発の施設の亀裂から、6日間に4700テラベクレルの放射性物質を含む520トンの汚染水が海へ漏れ出したと発表した。これは、これまで史上最悪の海洋放射能汚染とみなされてきた70年代の、イギリスのセラフィールド核燃料施設による放射性廃液放出の年間総量に匹敵するという。
しかも、福島で表面化した流出は氷山の一角だ。それ以外に炉心冷却に使った汚染水があふれ、さらに汚染地下水が押し寄せている。空前の海洋汚染が始まろうとしている。
考えてみれば、当然ともいえる。福島原発は経済大国・日本の心臓だった。トラブルを起こした原子炉の総出力は300万キロワットに近く、チェルノブイリ原発の3倍に達する。
チェルノブイリは核分裂中の爆発で急性放射線障害による死者が多数出た。旧ソ連末期の退廃を背景にした事故と侮る気分が日本社会にあった。が、人間を徐々にむしばむ毒の潜在量は福島が上ではないか。
海に流せば毒は薄まると安直に考える向きが多い。それですむなら苦労はない。専門家は、放射性物質を含む史上空前の汚染水排出が、水俣病やアスベスト禍のように、数十年後の大事に発展する可能性を指摘している。
地下防護壁の建設先送りは株主総会シーズンの幕あいのエピソードではない。表向き「企業の社会的責任」を高唱する東電の本質を問う大事だ。着工へ首相の指導力が求められていることは言うまでもない。(毎週月曜日掲載)
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