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元ベルギー領コンゴの闇の奥の闇を暴いた、藤永茂博士のブログを紹介
2011/03/16
事実とは何か
裸の事実というものは存在しないという立場をとる人は沢山います。哲学者を始めとして一般の知識人にはその傾向が強いようです。自然界の現象については裸の事実は存在すると私は考えます。福島原発で何が起ったか、何が起っているか、については物理的に裸の事実が存在すると私は考えています。世に言う「事実」についての陳述のすべては、究極的に解釈の問題だという主張を私は受け容れません。しかし、私の言う裸の事実が何のバイアスもかからずに報道されることは極めて稀であることは、それこそ、事実です。
1984年1月に出版した『おいぼれ犬と新しい芸』(岩波書店)という本の第4章「ロスアラモス研究所で」の中で、私は、1976年、アメリカのニューメキシコ州のアルバカーキー市にあるサンディア米空軍基地の中の国立原子力博物館を訪れた時の嫌な思い出話を書きました。その一部(pp66~67)を以下に書き写します。:
# 帰りのタクシーの到着を待つ間に、私は博物館のロビーで訪問者名簿に署名し、その横にあった『放射線−これが事実だ』という18ページのパンフレットを取り上げて読み始めた。発行元はアメリカ原子核協会となっている。その最初のページをみただけで、このパンフレットが、原子力産業の活動に由来する放射線が、量的に全く微小で安全なものであることを一般大衆に納得させる目的で作られたことは明らかだった。一貫して説得調の文章の中には科学的には科学的に正確なデータがいくらも含まれているだろう。パンフレットの結びの文章も、それなりに「事実」にもとづいているだろう。しかし、科学者のはしくれとしての私には、何とも読みづらい文章であった。
「・・・・・ペンシルバニアでは1870年から1950年の間に3万人の炭坑夫が命を失った。80年間、毎日かかさず一人ずつ死亡した割合になっている。このような恐るべき死亡者数にくらべると、原子力産業の安全性の実績は、断然すばらしいものである。放射性元素は次第にその放射能、したがって毒性を失ってゆく。他の非放射性物質(たとえばヒ素)には永久に有毒のままのものがある。1976年7月、イタリアのセベソ一帯に工場事故のため放出されたダイオキシンの毒性は、いまだに減少のきざしがみえないことが、最近、ミラノのマリオネグリ研究所の所長によって報告されている。」
つまり、このパンフレットの著者は、放射性物質の毒性はことさらに強調される傾向があるが、実際には他の毒性物質にくらべて、はるかに安全なのだ、という印象を読者に与えたいのだ。私は思う。事実そうかもしれぬ。しかし、何も、科学者が、すすんでこうした文章を書くことはない。書いてはならぬ。#
今回の福島原発事故について,国外でもあらゆる報道や意見の表明が行なわれていますが、政治的な、また、産業経済的な配慮から生じる事実の隠蔽や歪曲や誇張は至るところで嗅ぎ付けられます。この状況の中で、原子力産業に関する基本的な事実を見据えるのは大変困難な作業ですが、時々刻々のアレコレの叫び声にあまり気を取られることなく、この全人類的な問題に就いてしっかりと考えたいものです。
政治的あるいは経済的な力で事実がねじ曲げられてしまうことの極端な例は現在進行中のリビアの内戦です。リビアがどんな国か、カダフィとは何者か、世界に横行している殆どすべてのマスコミ記事は裸の事実を告げていません。その一方で、 No-Fly-Zone (飛行禁止空域)という欺瞞そのものの用語がしきりに飛び交っています。リビアの空をNo-Fly-Zoneに指定することが実際には何を意味するか、何故この言葉が用いられるのかを、私たちはいつも明確に意識しながら、マスコミに接しなければなりません。「世界に横行している殆どすべてのマスコミ記事は裸の事実を告げていない」と、私のような市井の一市民に何故はっきりと言えるのかを次回にお話しします。
藤永 茂 (2011年3月16日)
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