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作業員69人はどこに? 所在不明、偽名登録疑い、核防護上の問題も
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110624/dst11062421260024-n1.htm
2011.6.24 22:05 産経新聞
東京電力福島第1原発で進められる事故収束作業に従事したはずの作業員69人の所在が分からなくなっている。臨時雇用が終わって連絡が取れない人がいるとみられるが、偽名登録が疑われるケースも目立つ。原発への立ち入りは厳重な管理が求められていることもあり、専門家からは「テロ対策上の不備をさらけ出した」との批判も上がる。(原子力取材班)
「当該企業に確認したら、そんな人物はいないとのことだった」
今月20日夕、作業員の被曝(ひばく)状況を説明していた東電の松本純一原子力・立地本部長代理からこんな言葉が漏れた。東電は厚生労働省からの指示を受け、事故直後から3月末までに同原発で働いていた作業員の被曝線量調査を進めていたが、その過程で、下請け企業の作業員69人と連絡が取れないでいることが判明した。
東電と厚労省によると、東電が下請け企業を通じて作業員の被曝線量を測定しようとしたところ、69人のほぼ半数については「該当者なし」と回答があり、氏名も連絡先も分からないという。
同原発では通常、放射線管理区域へ立ち入る人物をコンピューター管理していたが、停電などでシステムが使えなくなり、4月中旬までは、作業員に外部被曝線量を測る線量計を貸し出すにあたって、氏名と所属する会社名を手書きさせただけだった。「震災直後は復旧作業でかなり混乱していた」(東電)という。
社員証や免許証などによる本人確認もしていなかったといい、厚労省の担当者は「線量管理ができていない」と憤りを隠さない。
「手続き飛ばした」
所在が分からないとはいえ、「貸した線量計は返却され、線量も記録されている。(入構した)人間がいたことは間違いない」(厚労省)。所在不明の作業員の被曝線量はそれほど高くないとみられているものの、本人と連絡が取れないままだと、後に健康被害が出ても労災認定が受けられない可能性もある。
東電の下請け企業に勤務し、事故直後に作業に携わった男性(47)は「(入構で)いつもはやらなければいけない手続きを飛ばしていた。IDカードの発行もなく、紙製の仮カードさえ持っていれば入れた」と、当時の状況を振り返る。
作業時の被曝線量は労働安全衛生法に基づいて厳重に管理されるが、男性は「まずは仕事が先で、今回(東電が)どこまでやろうとしたのか分からない」と疑問を投げかけた。
核防護規定抵触も
東電のずさんな管理態勢が明るみに出たのは初めてではない。5月には、宮城県での仕事に応募したあいりん地区(大阪市西成区)の男性が、求人内容と異なり、同原発敷地内での作業に従事させられていた問題が発覚している。
「どんな事態であっても身分確認は重要だ。労働基準法違反などのレベルではない。テロを想定した武力攻撃事態法にも抵触しかねず、原子力施設の安全防護上、看過できない」
こう指摘するのは、京都大学の神田啓治名誉教授(核物質管理学)だ。
経済産業省原子力安全・保安院によると、電力各社は原子炉等規制法に基づき、各原発ごとに核物質防護規定を定めており、身元が明らかでない人物の原発立ち入りは同規定に抵触する恐れがあるという。
神田教授は「米国はテロに敏感になっており、原子力施設への出入りを厳しくしている。日本の原発全体、管理が緩いという疑念を持たれたらいつテロリストに狙われるか分からない」と懸念を示している。
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