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2011/6/24 10:00
http://netallica.yahoo.co.jp/collect/mark/195374
●3年後の「ブラブラ病」、7〜8年後の「白血病、がん」に注意すべき
福島原発事故の収束のメドが立たない中、7月にも、福島県民を対象にした健康調査が始まる。追跡期間は30年間という世界でも例を見ない大調査だ。特に重要なのは「内部被曝(ひばく)」の影響。事故当初に政府が強調した「直ちに影響はない」は本当なのか。原発周辺の県民の避難範囲30キロは正しい判断なのか――。「内部被曝」の危険性を国内で最初に指摘し、元広島陸軍病院の軍医少尉として、被爆者の治療に当たった肥田舜太郎氏(94)に聞いた。
「原爆の直撃は受けていないのに、肉親を捜そうと、3日後や1週間後に市内に入った人たちがその後、被爆者と同じ症状で亡くなる……。初めは状況が分からなかったが、そういう患者をたくさん診て『内部被曝』を確信しました。しかし、米国は一切認めない。箝口(かんこう)令が敷かれ、情報は厳しく管理されました」
「内部被曝」の問題が表面化したのは、54年の米国のビキニ環礁水爆実験で、第五福竜丸が被曝した一件からだ。
「本当は第五福竜丸以外にも、周辺で被曝した漁船は700〜800隻ありました。しかし、医師らが調査に駆けつけると、米国は既に船主にカネをつかませて黙らせていました。最悪だったのは、当時の東大の研究グループ。米国に『機密情報だから公開するな』と口止めされ、収集した研究データを米国に送っていたのです。グループの中心人物はその後、日本の被曝研究の責任者になりました。これでは、日本で『内部被曝』はもちろん、放射線障害の研究が進むはずがありません」
●米国が非難範囲を半径80キロに設定した理由
「福島原発の事故で、政府が『直ちに影響はない』との説明を繰り返したのは『無知』だからです。政治家、官僚ともに戦後生まれ。『内部被曝』を否定する米国との安保条約にも配慮したため、日本では放射線障害について勉強する場がありませんでした。このため、米国と日本では事故の対応が異なるケースがあります。例えば、米国は今回、避難範囲を原発から半径80キロに設定しました。これはかつて、米・統計学者が50年間に及ぶ膨大なデータを整理した結果、『原子炉から160キロ以内で乳がん患者が増えている』との報告書を根拠にしたからとみています。私も半径50キロ以内の住民は全て避難させるべきだと思っていますが、日本政府は半径30キロのまま。『無知』な上、これまで『心配ない』と繰り返してきたから、今さら変えられないのでしょう。原発の『安全神話』が足かせになっているのです」
事故からすでに100日以上経ったが、状況は何一つ改善していない。
「原発は大事故を起こさなくても、毎日、湯気や排水で放射性物質を出し続けています。政府はICRP(国際放射線防護委員会)などの基準内だから安全というが、基準ができたのは四半世紀も前で、当時と比べてどんどん緩くなりました。厳し過ぎると原発が造れない、電気代が上がる、儲からない、というのが理由です。基準の厳格派は次々に買収されました。ちょうど、電力会社がメディアに広告費を出し、安全を強調してもらう現在の構図と同じです」
●少量の被曝でも影響がでる怖さ
「福島では住民の健康調査が始まるようです。対象の住民は行政機関に登録させ、手帳を持たせ、しっかりとした健康管理、追跡調査を行うべきです。本当はもっと早く始めるべきでした。倒壊家屋などのデータはすぐに数値として収集、発表されるのに、住民の健康に関するデータ収集をしない理由が全く分かりません。将来の『内部被曝』の影響は分かりませんが、広島の場合、およそ3年後に体が疲れやすくなる原因不明の『ブラブラ病』患者が出始めました。白血病の患者も3年ほど経ってから確認され、7〜8年後にがん患者が目立ち始めました。『内部被曝』は少量の放射性物質でも影響が出る。ここが恐ろしいところです。人間だけではありません。放射性物質は動植物すべてに影響を与えるのです。福島原発の事故は、大気中だけでなく、海にも大量の放射性物質が放出されました。今後、一体どんなことが起こるのか。世界が固唾(かたず)をのんで見ています」
(日刊ゲンダイ2011年6月21日掲載)
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