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政府は、定期検査などで停止している原発について、当面必要な安全対策が実施できたとして、立地自治体に運転再開への同意を求めている。
津波に備えた緊急対策に続き、水素爆発など過酷事故への対策が完了し、再稼働に支障はないと説明している。
しかし、福島第1原発事故が収束せず、事故原因の検証も始まったばかりの段階で、既存の原発の安全宣言を出しても説得力を欠く。原発を抱える13道県の知事が、再稼働に難色を示すのは当然だ。
事故を踏まえ、原発の安全設計や耐震設計の審査指針は見直されることが決まった。
政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書には、経済産業省の傘下にあることが問題視されてきた原子力安全・保安院の独立も明記された。
従来の安全基準は無効になった状態だ。しかも、規制機関としてダメを出された保安院が、短期間で審査した緊急対策を再稼働の根拠とすること自体に無理がある。
原発の運転再開は、電力会社と安全協定を結ぶ道県や市町村の同意が前提だ。原発に雇用などを依存する市町村には再開を望む声も多い。再稼働の可否は、事実上、知事の判断にかかっている。
高橋はるみ知事は、福島の事故に地震そのものが与えた影響や、福島原発周辺が地震発生確率の極めて低い地域とされていたことなど、根本的な疑問を投げかけた。
運転開始から40年前後の原発が稼働する福井県は、より厳しい安全基準を求め、プルサーマル発電を行う玄海原発を抱える佐賀県は、その環境への影響を懸念している。
こうした各知事の疑問に答えず、海江田万里経産相は、再稼働を急ぐ理由として、夏の電力不足を挙げた。全国の商業用原発54基のうち35基が停止した状態では、電力供給に不安が生じると主張している。
だが、住民の安全と、国の電力供給事情は次元の違う問題だ。
政府が知事に、この二つをはかりにかけさせて決断を迫るのは、無責任なやり方と言わざるを得ない。
浜岡原発を停止させた際、政府が東海地震の震源域の真上にある浜岡の特殊性を強調し、その他の原発を一律に扱った点に問題がある。
政府は、個別の原発の立地条件、性能や老朽化の度合いなどに応じ、短期、中長期に分けたきめ細かい安全対策を示すべきだ。
安全性についての納得できる説明抜きで、電力不足をちらつかせて協力を求められても、地方は受け入れようがない。
(北海道新聞 社説 6月21日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/300439.html
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