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東日本大震災による福島原発事故以来、ここ阿修羅掲示板でも盛んに脱原発が議論され、そのデモ運動も行われています。おそらく脱原発を主張される多くの方々の念頭にあるのは危険性が露呈された既存のウラン軽水炉型原発の廃止、代替エネルギー案としては自然エネルギー等の普及であろうと思う。私もその議論や運動自体は悪いことではないと思っています。
しかし、脱原発を主張される方々の中には、原発は全て危険な物というイメージしかなく、既存のウラン核サイクルを利用する危険な軽水炉型以外にも、トリウム核サイクルを利用する安全性の高い溶融塩炉型がありその基礎技術や過去に実証炉が存在するが利権がらみで実用化が妨げられてきたという事実を知らない方もいるのではないかと思います。
これには既存原発利権団体からの恩恵を受け現在までこの技術を報道してこなかった既存メディア(特に地上波TV)の責任もあります。この事を知らない方々がビジョンも無くただ感情的に反原発を叫んでいる傾向にある点は、もう少し賢明で冷静な視点での議論が必要だと少し危惧します。
それは、既存のウラン軽水炉型原発を全廃出来たとしても、現在までの大量に残されたプルトニウム核廃棄物をどう処理していくのかという問題などが残るからです。
現在までの国の原子力行政は、あくまでウラン核サイクル利用にこだわり、青森県六ヶ所村の再処理工場でプルトニウムを抽出し、劣化ウランと混ぜたMOX核燃料として既存軽水炉での使用を始めていましたが、このMOX核燃料(プルサーマル)利用でもそれ以上の大量のプルトニウム核廃棄物を生み出し一向に核廃棄物を減らすことは出来ない事が明らかとなっており、このウラン核燃料サイクルはすでに破綻しています。その大量のプルトニウム核廃棄物の処理に苦慮し、大深度地下にガラス固体化したプルトニウム核廃棄物を埋める計画まで立てて、既存原発利権勢力とグルになった国の原子力行政は後世にまでその危険なツケを残そうとしています。
一方で、新たにトリウム核サイクルを利用する溶融塩炉(溶は熔とも書きます)は、このプルトニウム核廃棄物から抽出したプルトニウムを火種として、トリウムを薪として核分裂反応を起こし、そこから出た核廃棄物は全くプルトニウムを含まずそれ以外の放射性元素で構成され、その元のプルトニウム核廃棄物から千分の1程度に激減させた量の核廃棄物しか出さず、核廃棄物問題から見てもそれをほとんど解決できる画期的な炉形態です。溶融塩というのは塩化ナトリウムの事ではなく、化学的な”塩”の種類であるという意味で、実際はフッ化リチウム・フッ化ベリリウムの共融塩(FLiBe フリーベ)です。
もう一つの特筆点は原理的なものから見直された高い安全性です。
既存のウラン軽水炉では固体状のウランを燃料棒(ペレット)として加工したものの回りにジルコニウムの金属被覆管で覆いそれを圧力容器の中で水(軽水)に浸した状態で核分裂反応を起こす構造になっているので、福島原発事故で露呈したように全電源喪失で水供給ポンプが全て作動しなくなって水位が下がると核分裂反応(臨界状態)を制御棒挿入で即座に止めたとしても崩壊熱で空焚き状態となり燃料棒のウランや被覆管のジルコニウムが溶け出してメルトダウンを起こし、溶けたジルコニウムと水が反応して水素爆発も引き起こす事、電源が切れでもすればこのような暴走を引き起こしてしまう(フェールセーフが働かない)という原理的な限界を持っています。
しかし、トリウム溶融塩炉はトリウム核燃料と中性子火種のプルトニウムを溶融塩で、そもそも溶かした状態で核分裂反応を起こすのでメルトダウンが起こらず、水と接していないので水素爆発も起こりません。さらに、全電源喪失でトリウム燃料溶融塩の炉循環ポンプの停止など非常事態が起これば、温度上昇で先に溶ける構造にしている炉のドレインバルブからトリウム燃料溶融塩が緊急時放射性物質格納専用のドレインタンクに抜け落ち、崩壊熱を自然循環空冷ですぐさま冷やし450℃程度でガラス固体化し、放射能物質は閉じ込められ、拡散することはありません。この時もちろん核分裂反応(臨界)は止まっています。それはトリウム溶融塩炉も熱中性子炉の一種で、炉心内の黒鉛減速材で中性子が減速された状態で初めて核分裂反応(臨界)状態が維持されるため、トリウム燃料溶融塩が炉心外に出れば黒鉛減速材の関与が無くなるため中性子が減速されず核分裂反応(臨界)が止まります。
ここで、放射性物質が原発施設外に拡散するか否かについての重要な違いは、炉心を冷却循環する一次循環系の放射性物質汚染された液体が、既存の軽水炉のような水(軽水)であれば漏れ出た時に、水に溶けている放射性物質が水蒸気による気体化と共に飛散したり、放射性物質汚染水として流出してしまいます。まさに福島原発事故で現出している状況です。
しかし、トリウム溶融塩炉の場合はこの一次循環系の液体はトリウム燃料溶融塩で、漏れ出たときに固体化して放射性物質を閉じ込め、拡散や飛散を防止出来る所にあります。要は漏れ出たときに液体や気体化するか、または固体化するかで放射性物質の拡散を防止できるか出来ないかが決定的に変わる点が重要です。
トリウム溶融塩炉のその他のメリットとしては、核兵器の材料になるプルトニウム放射性廃棄物を生まないので核拡散防止や真の核の平和利用につながる(但し、強いガンマ線を出す放射性物質を含むごく少量の放射性廃棄物を出すので放射線遮蔽して厳重な管理が必要だが、かえってその強いガンマ線がこの放射性廃棄物のテロリスト等からの盗難防止になる)。大量の水を必要としないので津波リスクのある海岸に造る必要が無く、山地でも建設が可能。トリウムは電気自動車の高出力モーター製造などに必要なレアアース採掘の過程で出てくるので、現在まで世界中でその処分に困っているが、トリウム溶融塩炉でその有効利用が出来る。など一石四鳥五鳥にもなるメリットがあります。
現在日本でこのトリウム溶融塩炉研究と普及を提唱している第一人者に、既存原発利権勢力から冷たい仕打ちや冷や飯を食わされても人類のより良い安全な未来のために50年来真摯に情熱を持って研究されて来た古川和男氏と比較的若手の亀井敬史氏などがおり、実証段階まで基礎技術が確立しているため数年〜10年以内で実用化可能だと言われています。この技術について詳しく知りたい方は諸氏の研究団体サイトや著書や雑誌記事などを見て下さい。
古川和男氏の最新著書「原発安全革命」と、リンクでたどれる亀井敬史氏の「平和のエネルギー―トリウム原子力 ガンダムは“トリウム”の夢を見るか? 」http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E5%AE%89%E5%85%A8%E9%9D%A9%E5%91%BD-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E5%8F%A4%E5%B7%9D-%E5%92%8C%E7%94%B7/dp/4166608061
古川和男氏が理事長を務める、NPO「トリウム熔融塩国際フォーラム」http://msr21.fc2web.com/
亀井敬史氏は6月12日放送の読売テレビ系列「たかじんのそこまで言って委員会」の次世代エネルギー特集でパネラーとしてトリウム溶融塩炉を紹介しましたが、その番組からの後日談動画「亀井敬史 ガンダム×トリウム〜原子力のニュータイプ.flv」http://www.youtube.com/watch?v=FgkmM2Y7-Us 学会での亀井敬史氏のトリウム講演http://www.youtube.com/watch?v=b-SlUW6w5zk
雑誌記事としては、致知出版社 月刊「致知」2011年6月号 脱プルトニウムの原発革命 古川和男(トリウム熔融塩国際フォーラム理事長)のインタビュー記事 http://www.chichi.co.jp/monthly/201106_index.html
東洋経済新報社 週刊東洋経済2011年6月11日号の原子力特集で「より小型、より安全にトリウム原子炉の可能性」という亀井敬史氏の寄稿記事が載っています。http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/toyo/detail/BI/39124995746cc2fe398d77ca5f2943ef/
最後に、単に一括りに脱原発反原発と言って訴える事が、トリウム溶融塩炉のような原理的に安全で核拡散防止にもなり放射性廃棄物問題も解決する可能性のある原発の芽も潰してしまうという事をよく認識していただきたいのです。トリウム溶融塩炉も原発の一種です。トリウム溶融塩炉は応援する気持ちがあるなら、既存のウラン核サイクルやその危険な軽水炉に対する脱原発反原発であるというように明確に主張し分けて訴えて頂きたいのです。
その事を私は皆さんに強く訴えたいと思います。
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