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『朝日新聞』 2011年6月16日付 朝刊
新エネルギー推進の「切り札」
全量買い取り案 対立
新エネルギーの普及を狙って菅政権が今国会に提出した「全量固定価格買い取り制度」(FIT)=※=の関連法案がたなざらしになっている。東京電力福島第一原発の事故後、与野党を超えてエネルギー政策転換の機運が広がり、菅直人首相も力を入れ出したが、経済界や電力業界に近い議員らの反対が強く、成立のめどは立っていない。
「未来の選択肢」
超党派207人賛同
15日夕、国会内の会議室に与野党議員数十人と市民400人が集まった。エネルギー政策を議論する超党派の議員勉強会「エネシフジャパン」が、FIT関連法案の今国会成立を呼びかけた会合だ。新エネ普及を提唱するソフトバンクの孫正義社長も駆けつけた。
菅首相も途中参加し、「この法案は未来のエネルギーの選択肢を育てる一歩で何としても通したい。そうでないと政治家としての責任を果たせない」などと30分以上にわたり熱弁をふるった。法案成立に賛同する署名は超党派で207人分が集まった。
首相に続いて孫社長が「あと10年くらい(首相を)続けてほしい」と持ち上げると、首相は再びマイクを握り、「この顔を見たくなければ、早くこの法案を通した方がいい。その作戦でいきたい」。関連法成立を退陣の「花道」にするかのような口ぶりで会場を沸かせた。
同法案は鳩山内閣が掲げた「温室効果ガスの1990年比25%削減」を達成する重要な手段と位置づけられ、3月11日朝に閣議決定された。同日午後に東日本大震災が起き、原子力政策の見直しと東北の復興策という二つの観点から与野党に議論が広がった。
FITは地方の原発で大規模に発電して都市へ送電する体制から、自然エネルギーによる電力の「地産地消」へ、社会の仕組みを転換する可能性を秘めるとされる。風力発電については海に面してまとまった風が期待できる東北地方で事業化しやすい場所が多いとされ、菅政権の復興構想会議も「国会で早く審議するべきだ」と提言した。
首相は最近、エネルギー政策を転換して電力業界の独占的体質に風穴を開けたいと考えており、法案へのこだわりは強い。法案が付託された衆院経済産業委員会の理事らに直接電話し、「今国会で成立させてくれ」と働きかけるほどだ。
「高コスト」反発
経済界・野党
ただ、閣議決定から3カ月経っても、法案は同委で一度も審議されていない。自民党などの一部野党が審議入りに慎重だからだ。
背景には、経済界の根強い反発がある。日本経団連は今年1月に公表した意見書で「コスト高の再生可能エネルギーを国民負担の下に導入拡大する施策だ。国民生活や企業の競争力に悪影響を与える」と批判。7日に開かれた政権の新成長戦略実現会議の会合でも、経団連の米倉弘昌会長が文書で「電力価格の上昇をもたらすことのないよう制度導入は見直すべきだ」と表明した。
経済界で存在感を持つ電力会社側にとって、FIT導入は発電の地域独占を崩すことになりかねない。電力買い取りコストが電気料金に反映されれば企業のコストにも跳ね返ることもあり、強く抵抗している。
経済界や電力会社から長年政治資金などの支援を受けてきた自民党内では、このような事情を反映して反対論が根強い。
自民党の谷垣禎一総裁はFITについて「本当に実効的なものなのか、かなり検討の余地がある」と審議入りに慎重だ。昨年の参院選マニフェストでFITの導入を約束した公明党の山口那津男代表も14日の記者会見で「制度は理解するが、政府として電力料金負担、需要者の負担について透明化する努力が必要だ」と様子見の構えを崩していない。
◇
※全量固定価格買い取り制度(FIT)
価格競争力が弱い風力や太陽光などの自然エネルギーを一定期間、通常の電気料金より高い固定価格で電力会社が買い取ることで、大量普及と生産・物流コスト引き下げを促す制度。政府は2012年度の実施を目指す。FIT関連法案では09年度に始まった太陽光に加え、風力や地熱なども対象。環境省の試算ではFIT導入により、風力分野で約2400万`ワット分の発電を後押しすると見込む。
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